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【連載版】悪役令嬢だと気づいた私は悪に染まりきる  作者: シュミ


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19/22

誘い

シャーロットからの夕食の誘いを受け、私は彼女と共に食堂へと足を運ぶ。


「いきなり夕食の誘いだなんて、どうしたのよ?」


「今日はクラスのご学友からのお誘いがありませんでしたので、ようやくアセロナ嬢をお誘いできた次第ですわ。アセロナ嬢はクラスでご学友は出来ましたか?」


「あなたも知っているでしょうけど、誰かさんに変な噂を流されたせいでクラスメイトから避けられているわ」


シャーロットは怒りの感情を隠すこともなく私に見せつけて。


「しょうもない事をする方もいるものですね。アセロナ嬢は噂のような方ではありませんのに。信じる方も信じる方ですわ」


こうして言われると彼女が噂を広めている張本人なのか疑問に思ってしまう。

だけど広まる速度を考えると『アセロナ反対派』が関わっていないとは考えにくい。

噂の源であろう兄様の影響が不確かなのもだけど。ゲーム本編にない展開である以上、結論はすぐには出せそうにないわね。


食堂についた私たちは夕食を受け取り、座る席を探す。


「ここにしましょうか」


そう言ってシャーロットはテーブルに夕食を置いて席に座る。私は彼女の対面に座る。

ふと横を見ると、少し離れてはいるがエルナの姿がくっきりと見えた。1人で夕食を取っている。何だか嫌な予感がするわね。


「食べましょうか」


「⋯⋯⋯そうね」


私たちは他愛もない話をしながら夕食を進めていく。そして半分くらい食べた頃だろうか。


「ここ座ってもいいよな?」


聞き覚えのある声が、ちょうどエルナの座る席の方から聞こえてきた。


私は横目で彼女の席を見る。

そこにはエルナの対面に座るミーネルたちの姿があった。


これは偶然なのかしら⋯⋯⋯それとも⋯⋯⋯。


分からないわね。全てを疑ってしまう。

向かいに座るシャーロットはミーネルたちのただならぬ雰囲気に緊張しているように見える。


真意が読み取れない⋯⋯⋯⋯。不気味ね。


ミーネルが来たことにより、エルナは萎縮し、恐怖心に苛まれる。


「朝はアセロナの野郎に邪魔されちまって、ちょっとイラついてんだ。だから鬱憤ばらしにちょっと付き合えよ」


「⋯⋯⋯⋯⋯」


エルナは俯き何も口にしない。


「黙ってねぇでさっさと食え。あんま待たせてっと何すっかわかんねぇぜ」


ここまでキツイ展開は本編にはなかった。ということは私が朝の嫌がらせを妨害したことによって起こった可能性が高い。


なら―――。


私は席を立つ。


「アセロナ嬢、どうしましたか⋯⋯⋯?」


「ちょっと行ってくるわ」


私はエルナの元へと歩みを進める。


「3対1で何をするつもりかしら。私も混ぜてもらえる?」


「ア、アセロナ嬢⋯⋯⋯!?」


エルナは驚き、瞳をまん丸にさせる。

一方でミーネルたちは予想していたかのごとく表情を変えない。

どうやら私は彼女たちの策略に嵌められたらしい。どういう意図があるのか分からないけど。


「また来たのかよアセロナ嬢。そんなにこの平民風情が気になるのか?」


「当然でしょ。だってエルナさんは私の友人だもの」


「へぇ〜⋯⋯⋯。公爵家のご令嬢さんは平民にも優しいんだな。親には暴力振るうくせによぉ」


その言葉にエルナは怒りの表情を浮かべて。


「⋯⋯⋯ア、アセロナ嬢はそんなことする人じゃありません!!」


「あぁ? 何? まんまと懐柔されてんのかよ」


エルナはミーネルを睨みつける。


「何だよその目? 友達傷つけられて怒ってのか? 平民風情があたしに歯向かおうとしてんじゃねぇぞ!」


そう言いミーネルはエルナの胸ぐらに手を伸ばす。


「いい加減にしなさい」


私はその手を止め、ミーネルが痛みを感じるであろう力で握る。

不意に彼女の顔が歪む。


「へっ、なるほどそうか⋯⋯⋯。公爵家さんは次期聖女との関係をご所望ってか。汚ぇやつだぜまったくよぉ」


「あなたが何をしたいのか分からないけど、私はただエルナさんと普通の友人になりたいだけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」


ミーネルは見定めるように私とエルナの目を凝視する。私たちの真っ直ぐな瞳にうんざりしたような笑みを浮かべ、私に掴まれている手を無理やり引き抜いた。


「⋯⋯⋯嫌われ者同士仲良しごっこでもやってろよ」


とミーネルは小声でそう口にした後。


「興が冷めちまったぜ⋯⋯⋯。お前ら行くぞ」


そう言って私たちの元を去ろうとする。


「―――待ちなさい」


そんな彼女たちを私は止める。


「こうやってあなた達と小突き合いをするのも飽きたわ。長く続けられても面倒だしね。だからミーネル、今日私の部屋に来て2人きりで話をしないかしら? それで決着をつけましょ。付き添いの2人は部屋が狭くなって邪魔だから連れてこなくて結構よ」


「⋯⋯⋯そんなのお断りだぜ。あたしはあんたじゃなくてエルナの方に用があんだしな」


「あら、本当にそうかしら。じゃあなんで初授業の時、私に魔法を打ってきたの?」


「あれはたまたまだって言ったよな」


「あれがわざとじゃないなら、魔法の行使以前の問題よ。しょうもない嘘はつかなくていいわ。私はあなたの真意を聞いてるの。本当はユリクス王子の婚約者である私が邪魔なんでしょ。だから変な噂まで流して牽制してきた。違うかしら?」


「考え過ぎだぜ」


「そう⋯⋯⋯」


私はミーネルの耳元に近づき、彼女にしか聞こえない声で言う。


「思ったよりも飼い主に従順なのね、あなた」


それを聞いたミーネルは目を見開き激しく動揺する。


「はっ⋯⋯⋯? 何で⋯⋯⋯。てめぇまさか―――!」


「私と話す気になったかしら? それともこのまましっぽ巻いて逃げる? ならあなたは群れてでしか弱い者いじめすら出来ない、か弱い子犬さんになってしまうけれど。まっ、首輪を嵌められているんだし仕方ないわよね」


私は彼女の反抗的で短気な一面を煽るような発言する。


するとミーネルは顔を真っ赤にして。


「てめぇぇぇ⋯⋯⋯!」


私は更に彼女を煽るようにバカにしたような笑みを浮かべる


「⋯⋯⋯良いぜ、行ってやるよ!」


怒りに身を任せ、ミーネルはそう言った。


「ちょっとミーネル! あなた何勝手なことを!」

「そうよ。そんな事したら」


一味は彼女の暴走を止めようと動き出す。


「うるせぇ!」


ミーネルはそう言い殺気立った視線を彼女たちに向けて黙らせる。


「そう。じゃあ紅茶でも入れて待っているわ」


「ああ、後悔しても知んねぇぜ」


ミーネルは苛立ちを隠せない様子でそう言い私たちの元から去る。


「アセロナ嬢、すみません私のせいでこんな事に⋯⋯⋯」


「気にすることないわよ。私としても彼女と話をする機会は欲しかったもの。ちょうどいいわ」


「⋯⋯⋯無作法なことをする方もいるものですね」


無関係と言った顔をしながら私たちの元へとシャーロットが来た。


「申し訳ありませんでしたアセロナ嬢。何もせず傍観したままでいていまって⋯⋯⋯⋯。事情も知らないわたくしが横槍するのもどうかと思いましたので」


「⋯⋯⋯賢明な判断ね」


「ですが今回のはわたくしとしても許し難い事態ですわ。ですからアセロナ嬢、わたくしにも事情を教えて頂けませんでしょうか? そうすればわたくしにも何かお手伝いができるはずです」


シャーロットのその言葉には嘘が読み取れなかった。演じているのか、はたまた本心なのか。

でも私の答えは決まっている―――きっと彼女も分かった上で言ったのだろう。


「気持ちはありがたいけど、ミーネルには2人きりと言ってしまったからね。話を持ち掛けた私がそれを破るわけにはいかないわ」


「⋯⋯⋯そう、ですか⋯⋯⋯」


シャーロットは残念そうな表情を浮かべながらも納得する。


「くれぐれも無理はしないようお願いしますね。隣室ですから何かあったらすぐに駆けつけてください」


「ありがとう。心強いわ」


「あの⋯⋯⋯」


するとエルナが申し訳なさそうな表情を浮かべて口を開いては閉じと、何か言葉を探している様子で私の方を見てきた。


そんなエルナに対して最初に声をかけたのはシャーロットだった。


「初めましてエルナさん。わたくしはシャーロット・ハーネルと申します。おそらくエルナさんもわたくしと同じ気持ちなのではないですか? アセロナ嬢のお手伝いをしたいと」


エルナは首を縦に振る。


「はい⋯⋯⋯。アセロナ嬢は私が弱いばっかりに巻き込んでしまったので⋯⋯⋯。私が何もしないっていうのは何だか申し訳なくて⋯⋯⋯」


その言葉にシャーロットは同情するように頷く。


私はエルナを真っ直ぐに見つめる。


「エルナさん、私はあなたに巻き込まれてなんていないわよ。私も最初から彼女たちのターゲットの1人だったもの。むしろ巻き込まれたのはあなたの方だわ。だから気にする必要なんてないの。元はと言えば、こうなることも予測せず無神経にあなたに話しかけたユリクス様が悪いんだから。エルナさんが責任を感じる必要ないわ」


私はユリクス王子に心の底からの恨みを向けるようにそう言う。


「は、はい⋯⋯⋯」


その恨みの深さに慄いたエルナは緊張した様子でそう言う。心做しか彼女が抱いていた責任感てきなものは消えたように思えた。


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