いらっしゃいませ、お姫様
いよいよ開店準備が整い、持ち場につくように指示を受けた。海斗は今日はホールで先輩達の会話、立ち居振る舞い、お酒の注ぎ方などを見ながら学べという指示を受けていた。
直輝ももうお客さんを迎え入れる準備をしに、裏方に回っていた。
「カラン、カラン」
ホストクラブとは思えないような、庶民的な音が聞こえて、お店が開いた。
海斗はどんな客が来るのかめちゃくちゃ気になり、受付(カウンターの近く)をウロウロしていた。
まず始めに来たのが、美由紀とその後輩の正子だ。2人は近くのキャバ嬢でキラキラしたアクセサリーを身につけ、高級バッグを持ち来店した。
「おかえりなさいませ、美由紀姫」
「今日もお綺麗ですね、正子姫」
と2人から指名を受けた同期の一真と先輩の大吾が言った。
それを聞いた時、仕事と言えどもめちゃくちゃ恥ずかしいと感じてしまった。今まで相手からはかっこいいだの、本当に素敵だと言われてきたのに人に伝えることがこれほどまでに歯痒く、赤面するような事がわかって、言ってくれた人に今更ながら感謝したくなった。
そこから、先輩2人に着いていきメニュー表を跪きながら美由紀に渡した。
「あれ、新入りさん?超かっこいいね〜!名前なんて言うの?」
と聞かれ、慌てふためきながら、
「ぺ、ペガと申します…」と答えた。
「え〜、名前までイケてるわね^ ^
覚えておくわ。じゃあ、まずはこの赤ワインをくれるかしら?」
とオーダーを受け、裏に戻った。
その様子を見ていた直輝からすぐに、
「お前、以外と女性と話した事少ないだろ❓」
と聞かれ図星過ぎて言葉が出なかった。自分のことを過大評価しすぎていた。
後から聞いたが、美由紀はキャバ嬢で名前が知れているトップ層なので、どんな男性でも対応出来るコミニケーション能力と魅力があるようだ。だから、この店でも彼女のことを好きになってしまうホストもちらほらいるらしい。
そんな素晴らしいスペック持ちのお客さんに救われると言う不甲斐なさ。自分は伸びしろだらけだなとつくづく思った。