天使が天国へいく方法。
天使は羽がないと飛べない
好きな人には幸せになって欲しい。
そう思うのは当たり前なことだと私は思う。
いつでも笑顔を絶やさない様な幸せな環境で、苦しい事も辛いことも全て彼女には何一つ無ければいいのに
お願いします、神様
前髪を捕まれ、真っ青な顔をして涙を流しながら絶望を浮かべる彼女を、助けてあげてはくれませんか。
そう思ったのは、最初のお話。
彼女と私が出会ったのは入学式の日。
校門の前ですれ違った綺麗な白髪のセミロングの美しく、儚い少女。
すれ違った瞬間、天使かと思うほど美しくて、そしてすぐにでも消えてしまいそうな細い身体に白い肌に惹かれ
「…天使?」
そう呟くと彼女はこちらをゆっくり振り返り驚いたような顔をして、ふふっと微笑んだ
「私、ですか?あははっ、天使なんかじゃないですよ。でも、天使は好きです。この髪は神様が私に下さった美しい白い髪です。もしかしたら天使かもしれないかもって、なれたらいいなって思ってます」
そう言った後、すぐに歩いて行ってしまった彼女の後ろ姿を見て、胸が熱くなるのを感じた。
きっと一目惚れだった
可愛らしい声にミステリアスな1面
どうにかして仲良くなれたらいいなと思った。彼女とまた話したい。と
風に吹かれ、少しめくれたスカートから覗いた細い太ももに、大きな痣があることになんて気付かずに。
入学式も通常通り終わり私は教室の隅の席で1人彼女を眺めていた。
彼女と偶然同じクラスだと知った時は心の中でガッツポーズを決めた。
右斜め前の白髪の少女
自己紹介で知った彼女の名
「初めまして。白羽夕季と言います。よろしくお願いします」
しらは、ゆき
美しい見た目にピッタリだと思った。
自己紹介をする彼女をみて少し微笑んだ時に、周りの席の生徒からの視線を感じた。視線の先は彼女だった。
睨みつけるような、そして不穏な笑みを浮かべていた。
休み時間、私はこの学校には友達なんて居なくて。
だからこそ彼女に声をかけようと校庭に咲く桜を眺めながら席を立った。
綺麗だなぁ、なんて呑気なことを考えて
その瞬間ガダンッ!!と大きな音が教室に響き、私は音の方へ勢いよく振り返ると彼女が床に倒れていた。
彼女は真っ青な顔をして息を荒らげていた。
倒れてる?具合が悪い?過呼吸?助けに行かなきゃ
倒れている彼女に駆け寄ろうとした時、怒鳴り声が耳を劈く
何事かと目線を彼女より上に向ければクラスメイトの少女が彼女の目の前に立ちはだかり腕を組みながら仁王立ちしているでは無いか。
「なんでお前がいるんだよ!!!着いてきたの?気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪いッ"!!!!」
「ちょっと…!落ち着いて」
そう私が近づこうとした瞬間
「来ないで!!!!!!」
と彼女は叫び、私を拒絶した
どうして?その気持ちで頭が痛い
彼女は今もまだ呼吸を荒らげていた
苦しいのだろう、涙が目からこぼれ落ちる
少女は気持ち悪い、ウザイ、死ねと彼女を罵倒したあと
「お前、自分の立場わかってるじゃん。」
そう言って微笑んだ。
「これからもよろしくね?白羽夕季ちゃん」
少女はそういいながらしゃがみこみ、彼女の顔を覗き込んだ。
その日から、数ヶ月が立った
私と彼女は会話を交わすこともない
彼女は、毎日少女や少女の取り巻きから罵声を浴びせられていた。
止めようとも思った
だが、1度彼女に拒絶されていた私には何も出来なかった。
その上、次は自分が虐められるのではないかと恐怖が浮かび、彼女に、近づくことすら出来なかった。
でも、一目惚れをしたのは事実。
そんな彼女が辛い思いをしているのは心が痛かった。
だからこそ目を背けてしまった。
いつものように、今日も殴られているであろう彼女の苦しそうな声
そんな声に耳を塞ごうとした時ドガッ…と鈍い音が聞こえた
恐る恐る振り返ると少女が彼女の前髪を掴み頭を壁に押し付けていた。
「お前が私の彼氏を奪ったのが行けないんでしょう!?」
そう言い怒鳴り散らす少女
「違う…ッ、あれはあの人が勝手に…!」
「お前の事が好きになったから別れろって彼は私に言ったのよ!?お前が色仕掛けでもしたんだろ!このビッチ!!!淫乱女!!!」
「ちがッ…!!!!!!」
彼女が否定しようと言葉をつまらせていた時、少女は甲高い声で笑った
「…そうだよね。お前は"同性愛者"だもんね?」
その少女の言葉で教室が静まり返る
彼女は顔を真っ青にさせ涙を流し、下を向いた
「なんだっけ、好きな女の子がいて、その子が「天使みたいな髪!綺麗」って言ってくれたからその白い髪ずーーーっとしてるんだっけ?くだらないよね。だって、あの子は」
少女がそこまで言うと彼女は今までないぐらいに泣き叫び始めた。
やめて、お願いやめてくださいと
でもそんな言葉を無視して少女は続けた
「あの子は、死んじゃったんだもんねぇ?お前が車に轢かれそうなとこ、守ったんだっけ?」
息が止まる音がした
彼女には好きな人がいた。
その人は亡くなっている
そしてその死因は彼女を事故から守ったから
彼女はああ、と嗚咽を漏らしながらただ泣き叫んでいた。
もう目には光などなくて、真っ黒な瞳から涙がボロボロと落ち続けていた
少女は彼女を離し、そのまま窓の方へ向かい、窓を開けた
そしてこう言った
「あ、白羽。あの子がいるよ」
彼女は泣き叫ぶのをやめ、窓の方を見た
「ほら、空に」
その時、冷静になった私は分かった
この女、窓から落とそうとしてる…?と
止めなきゃ、ここは5階だ落ちたら死んでしまう
でも、でも
足が動かない
どうすれば、止めないと
お願いだもう彼女が苦しむのは嫌だ。
「え…?麗亜…?なの…?」
彼女はゆっくり立ち上がり、ゆっくり、ゆっくり窓へ歩き始めた。
窓に近づいた瞬間。
あんなにフラフラだったのが嘘のように窓から手を伸ばし、
「麗亜、麗亜!!!!!!」
と叫んだ
まるで目の前に麗亜、という子か居るかのように
目は真っ黒なまま、泣き腫らした顔で満面の笑みを浮かべていた。彼女の目には幻覚のあの子が映っていた
後ろから少女が彼女を突き落とそうとした瞬間
「ダメッ!!!!!!!」
声と体が勝手に動いていた
彼女が窓を乗り上げ落ちていく
私が窓に駆け寄った瞬間
まるで銃声かのような音が聞こえた
彼女が、落ちた音だ
外では悲鳴が上がり
窓から覗き込めば彼女が血まみれで倒れていた
でもその姿を見た私は
彼女を本物の美しい天使だと、思った
これが、彼女の幸せ
彼女は嘘でもあの子が見えたのだから
私は、天使を見て歪な微笑みを浮かべていた
一目惚れより
彼女の幸せを望んだ
でもきっと私も狂っている
血まみれの彼女を見ても恐怖も絶望も感じなかった
それより、美しく綺麗で
歪なほど儚かった




