表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/88

78 -救う魔法-

最近本当に忙しいです。

投稿が遅れている言い訳にはなりませんが。

「ただいま紹介に与りました、『静夜の狂姫(サイレント・プリンセス)』ルミです。オレン様の言う、人殺しの最前線を走る冒険者です」


 私の言葉に、オレンはばつの悪そうな顔をする。

実はあの発言は、それはもう大変に失礼な発言だったからな。

魔法使いであることに誇りを持っている人間であればあの発言だけで交友が断たれてもおかしくはない。

しかし幸い、私の魔法への思いは皿の隅に忘れられたパセリよりもちっぽけなものだ。

魔法など、最高級の睡眠を得る為の道具でしかないからな。


「まずはお誕生日、おめでとうございます。そして、失礼を承知で申し上げますがオレン様は勉強が足りていません」


 文官を目指す者として、自分が受け入れられないモノを学ばないのは浅はかと言うほかない。

それに他人を使う側になるのだから、知らない事は少ない方が良いに越したことはないのだ。

改めてオレンを見ると、自分の主張が全否定されたような気になっているのか不快感を示している。


「魔法というのは、使いようで人を幸せにすることが出来ます。恵みの雨を降らせ、転んだ子供の膝を癒すことを考えた事はありませんか?」


 若いが故、視野が狭まっているのだろう。

魔法イコール人を傷つけるものだと思ってしまっているが故に、魔法の良い面に気が付かない。

頭が良いというのに、勿体ない思考だ。


「......まあ、実際に見なくては想像も難しいでしょうから。この度はこのような魔道具を作ってまいりました。名は『夢創(ドリームメーカー)試作1号機』です」


 手のひら大の球体で、パチンコ玉を大きくしたような見た目をしている。

大それた名前を付けてはみたが、上手く動くのか少し不安だ。

自分と屋敷の給仕で試してはみたが、魔力をある程度持っている自分以外の人間がこれを使った前例がない。

上手く動いてくれると良いが。


「オレン様、こちらへ。これに魔力を込めてください」


 オレンは不安そうにグレトン男爵を見たが、満足げに座っている男爵を見て無駄だと悟ったようだ。

改めて壇上に上がった彼は夢創(ドリームメーカー)に魔力を込め、魔道具の起動を待つ。


 ______ガチャガチャ、ガチャ。


 魔道具の内部が音を立て始め、辺りに霧のようなモノが立ち込める。

これは私が作った闇魔法《白昼夢(ソニン)》を基としており、周囲の人間の認識を変える効果を持たせている。

そして効果を簡略化した《認識(リヤ・エレ)》が発動し、魔道具を持っている人間が望む魔法を読み取る。

その簡略化《認識(リヤ・エレ)》は夢魔法の側面も持ち合わせており、使用者は夢の中にいるような感覚になっているはずだ。


「オレン様、貴方の前には無限の未来が広がっています。それを食わず嫌いするのは勿体ないと思いますよ」


 彼の前に、妙齢の女性が現れる。

オレンがそれに驚いたのも束の間、その女性に霧のような魔物が迫る。

姿は曖昧で、何が彼女を襲おうとしているのかまでは分からない。

しかし、それは間違いなく彼女を狙っている。


「母様!」


 オレンは叫び、女性の盾となる為に前に出る。

本来であれば彼もろとも魔物に飲み込まれる所だった。


「来るなァーー!!」


 オレンは更に声を上げ、両手を広げて女性の身を守ろうとする。

するとその瞬間、彼が光りだす。

......これは、光属性に属する魔法か。

自分を中心としてドーム状のバリアを展開し、魔物はそれに激突する。

光属性にしてはあまりにも物理的な干渉を防いでいるな。

つまり、特殊な無形魔法だ。


 魔物は彼の魔法を突破することが出来ず、そのまま立ち去って行った。

元より、彼は魔法が使いたくない訳ではない。

他人を傷つけたくないだけなのだ。

この才能は、帝国の為を考えるなら間違いなく開花させるべきだ。


「母様と呼ばれていましたが......彼女はもう?」


 私は不謹慎と分かっていながらも、男爵に問う。

すると珍しく神妙な面持ちで口を開く。


「オレンを産んだ母親は出産の際に息を引き取った。あの女性は私の護衛の一人で、オレンも良く懐いていた。表立っては言っていなかったが、彼女の事を母と呼ぶこともあったようだ。故に......魔物と相打ちになって死んだときは誰よりも悲しみに暮れていた。彼女の実の娘である、ミナよりも」


「なるほど、だから傷つける事をあれだけ怖がっているのですね。オレン様は聡明ですから、自分が傷つける人間にもかつての自分のような存在がいる事を理解しているのでしょう」


 私が小さな声で事情を聞いている間に、オレンは自分が守った母と抱き合っていた。

非常に心苦しいが、少し水を差させていただこう。


「オレン様。貴方が今この女性を守れたのは、大嫌いな魔法があったからです。そして、この魔道具は使用者が使えない魔法は映し出しません」


 私の言葉の意味を理解できない程、馬鹿な少年ではないはずだ。

彼の目を見ると、力強い眼差しで私に視線を返した。


「もう二度と、失わなくても良いように......そんな力が、才能が私にあると言うんですね。冒険者さん」


「それはオレン様次第です。魔法と言うのは、望んだ事を実現する......夢のようなモノですから」


 改めて、初めて彼の顔を見た時と見比べる。

随分希望に満ちた顔になっているな。

これからが大変だというのに、幸せな奴だ。


 まあ、しかし。

今日くらいは、それでもいいだろう。

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマーク、いいね、評価、感想、レビューなどなんでも励みになりますので気が向いたときにお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ