73 -静謐 -
「魔法使いにも関わらず私の顕現させた魔物の処理を円月輪で行い、魔法戦では敢えて己が未熟な素振りを見せ隙を作る。魔法使いとして誇りはないのか?」
「他人の魂をいじくり回してる外道に言われる筋合いはない。誇りを語りたいなら、その外法をやめてからにしろ」
私はとある魂を取り出し、《認識》を使う。
私が炎魔公の権能で焼かれた時、残していた魂の1つ。
「その魂は......貴様!」
気付いたようだが少し遅かったようだな。
私に降り注ぐ攻撃魔法は、アヤメが全て反射する。
私はその魂が持っていた能力を発動する。
「《魔力妨害》......一度が限界か。もう少し保って欲しかったが」
辺りの魔力の動きに、不規則なベクトルの力を加える。
私や私の魔力の影響下にいる2人を除いた全ての魔力は、不規則な魔力の流れに制御を失う。
体内にある自分の魔力であればある程度制御も効くだろうが、宝瓶宮が扱っているのはまつろわぬ者の力だ。
元々人間に扱える力ではないのに、精彩を欠いた状態で扱えるはずがない。
「猪口才な。白羊宮の実験成果か」
そう、私が用いたのは白羊宮が連れていた改造煉鳥の魂のスキルだ。
白羊宮が唱えた......《施し》だったか?
あれで付与されたであろう、辺りの魔力を見境なく乱すスキルを、自分達への効力を無効にしたうえで放ったのだ。
まだ不完全な技術ゆえに1度使っただけで魂ごと崩壊させてしまったが、いつか消耗無く使えるようにしたい技術だ。
「『“<#%=##~*』様、御力を此処に......」
宝瓶宮はまた、例の詠唱を始めた。
まさかあの状態でまつろわぬ者の力を使うとでもいうのか?
流石にそれをされては、勝算を大きく落とす事になりかねん。
アヤメの盾も、例のまつろわぬ者の力は反射することは出来ない。
出来ることがあるとすれば、もう1度《絶一門》を発動することだが、あの男がみすみす無効化させてくれるかも怪しい。
「ノワール、アヤメ。これを」
私は2人に結晶のような物を渡す。
あの男の隙を突くなら、これが1番試し甲斐があるだろう。
「御力が......霧散していく」
宝瓶宮は例の力を発動するのに失敗しているようだ。
流石に1発で成功することは無かったようで安心した。
「いけ。最大限サポートする」
所詮私の力はサポート寄りだ。
魔物と違って膂力も人並み(エクソーバー比較)だし、腕がちぎれるだけで動けなくなる。
速度もあいつらには遠く及ばない。
だが、その分魔法のセンスは負けないと自負している。
適材適所というやつだな。
「夢魔法・冥護の章《除》......さて」
2人に魔法耐性を付与し、私に出来る事をやる。
あの男に、今までの夢魔法での攻撃は通じない。
ならば私がやるべきことは進化だ。
進化は魔物の専売特許ではないことを教えてやろう。
「翼を捨てた愚かな鳥よ
阿る芥に興味はあらず
隠り世の声に耳を向けぬ
愚かな鳥に安寧を
夢魔法・理外の章《静謐》」
《安寧》を《静謐》に。
まつろわぬ者の力を使った防御には、まだ対応できていなかったからな。
どれだけ通じるかは分からないが、少しくらいは効くと信じよう。
《静謐》が発動する直前、2人が結晶を投げ......魔法を物理的に固めた試作品であるそれは光り輝く。
私の《静謐》を防ごうとしていた宝瓶宮は、それに気を取られる。
こちらの魔法から一瞬、目が離れた。
その一瞬で十分だった。
私の《静謐》は間違いなく発動した。
「......なるほど、お前の強さが分かった......」
宝瓶宮の目は少しずつ閉じていく。
「終わりだ」
私がとどめの魔法を撃とうとすると、彼は懐から紙を取り出した。
私達は全員、それを防ごうと宝瓶宮の腕を狙った。
しかし間に合わなかった。
「次こそ殺してやる。覚悟しておけ『“<#%=##~*』様の仇敵よ」
紙が光り輝き、彼の姿はもうなかった。
逃がしてしまったという事実と、私の力はアイツに通用するという事実に複雑な気分になりながらも私は目を閉じた。
「......疲れた」
戦闘シーンは毎日投稿が無理だという事に気が付きました。
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