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70 -地龍-

 部屋を出ると、宣言通りゼツランが部屋の外で待っていた。

そして部屋で起きた事を伝えると、改めて皇帝の下へ向かう事を伝えられた。

私にとっては知識の1つにすぎないが、帝国にとっては大切な情報だろうからな。


「陛下、先ほどの冒険者が興味深い事を言っておりましたので、改めて足を運んでいただきました」


「ゼツランか。分かった、入れ」


 先ほどと変わらない、若い皇帝の声が部屋から聞こえる。


「お忙しいでしょうに、何度も申し訳ありません」


「いや、構わん。貴様をここに呼んだのは余だからな、余裕を持って時間を取っている」


 それはとてもありがたい。

それならば気兼ねなくあの部屋で起きた全てを話せるからな。




 私は、私達が貰ったプレゼントの詳細を除いて洗いざらい喋ってやった。

話を聞き終えた皇帝は、今までより心なしか柔らかい表情をしているように見えた。


「......余が、先帝に及びうるという事か。考えたこともなかった」


 今の言葉に引っ掛かりを覚えた私は、何故そこまで先帝に対して卑屈なのかを問う。

するとそれは、帝国の歴史に関わっていた。


「初代皇帝がまつろわぬ者から受け取ったのが大剣とされている。故に剣を受け取った者は他の者より優秀と考えられているのだ」


 なるほど。

ということは、初代皇帝も先帝と同じように戦闘に特化した才能を持っていたというわけか。


「余に1つでも先代より優るものがあるというのなら、帝国をより良い国にする事もできるかも知れぬ......ルミ殿、感謝する」


 皇帝は私の名を呼び、更に頭を下げた。

このような事は本来あり得ない事だ。


「あ、頭をお上げください。誰かに見られては私の命に関わります」


 私の言葉に、ゼツランが頷く。

皇帝が頭を下げるという事の意味を、自身で理解していないはずがない。

それだけ感謝しているという事を示したかったのだろう。

気持ちだけ受け取っておくので早く頭を上げてほしい。


「そうだな。して、話はそれだけか?」


 大丈夫だとは言っていたが、やはり皇帝も多忙なのだろう。

そろそろお暇しようと思っていたその時。


「皇帝陛下、居られますか。緊急事態にございます」


 部屋の扉がノックされ、壮年の男性の声が聞こえる。

急ぎの用事である事は想像に難く無いので、聞いても問題ない事態なら私も同席する事となった。


「失礼いたします......陛下、この者は?」


「帝国の冒険者だ。国家機密でも無いなら構わんから要件を言え」


 私は面倒事に関わりたくないので離席しておきたかったし、恐らくこの男性も本当は私無しで話したいだろうが皇帝が言ったことなので否定もしづらいだろう。

残念ながら面倒事に関わることになった。


「帝都に異常な形状をした魔物、そしてそれを従えていると思われる者が現れました。現在軍が押しとどめていますが、炎魔公やその他の実力者の到着までかなり時間があります」


「......異常な形状の魔物。ルミ殿、偶然にも丁度良い案件だな」


「こんな偶然には会いたくありませんでしたが......私が帝国に戻る前でなくて安心しています」


 十中八九『凶星(マレフィクス)』による攻撃だろう。

私としては、情報を得る願っても無いチャンスだ。


「陛下もやはり例の集団と関連があると思われますか。それで、いかがいたしましょう?」


「奇しくもここに例の集団を探している冒険者がいる。仮に制圧できずとも、時間稼ぎは出来るだろう」


 全く失礼な物言いだが、実際あの化け物共にどれだけ私の力が通用するかわかったものではない。

新しく手に入った力も試せていないし、正直不安だ。


「いただいた褒賞の分、報いようと思います。場所は何処ですか?」


「南に20分も馬車を走らせれば着く。手配しよう」


 唐突に報告しに来た男性に話しかけたが、全く動じずに適切な対応をしてくれる。

さすが皇帝に近い存在なだけあって、この男性も優秀なのだろう。


「いえ、走った方が早いのでそれで向かいます。アヤメ、任せた」


「了解っす~。ゼツランさん、出口まで案内してもらってもいいっすか~?」


 アヤメは私が命じた瞬間、私を担ぎ上げた。

正直、急ぐならこれが1番だ。

ゼツランもアヤメの問いに頷く。


「では、またお会いできる日を楽しみにしています」


「ああ、追って連絡する」


 こうして、初めての謁見はつつがなく終了した。


△▼△▼△▼△▼△


「弱い、脆い、遅い。帝国軍というのはこうも弱き存在だったか」


 目覚めたばかりの地龍は、帝国軍をいとも簡単に吹き飛ばす。

本来飛び道具が少ない地龍だが、我々の改造により強大な力を得ている。

並の人間では、目の前に立つことすら叶わないだろう。


「このまま城まで進むのも悪くないが、今私がやるべきことではないな」


 地龍がそこかしこを破壊するのを見ながら、つぶやく。

ここまで圧倒的だと、我々の崇高な目的に箔が付かない気もするが仕方ない。

この力に抵抗できる者など、存在しないのだから。


「さあ、行け地龍よ!」


「ゥォオオオオオオオ!!!!!」


 地龍は魔力を口内に集中させ、一気に放出する。

いわゆる、龍の息吹だ。

この濃密な魔力に触れた者は、一切合切が崩壊していくのだ。


「すまないが、それ以上私の住む国で被害は出させないぞ」


 どこからか、そんな声が聞こえた。

声の主を探していると、地龍の吐いた息吹が向きを変えて地龍の左目を穿った。


「ギャアアアアアア!!??」


「誰だ!」


 辺りを見回すと、ブレスの曲がった位置に3人。

何者かが邪魔をしに来たのだ。




「帝国所属の冒険者だ。速やかに死ね」

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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