68 -古き腕の齎す創造-
部屋に入る。
千剣城ではあまり見ないタイプの、豪華絢爛な装飾がなされた部屋だ。
まるで、この部屋だけ趣味が違う者がデザインしたかのようだ。
伽羅のような香りがむわっと広がる。
「臭い......と言っても許されるだろ」
「帝国貴族らしからぬ豪遊ですわ」
「食欲をそそる匂いでは無いっすね〜」
2人の意見にも全面的に賛成だ。
さっさと済ませて部屋を出たいところだ。
どうしたものか......普通に話しかけても良いが、それでは会話が出来ないかもしれない。
会話したことがあれば、建城の歴史を又聞きかのように話さないだろう。
「《認識》......きゃっ」
「そんな声出すなんて珍しいっすね。女の子みたいっす」
ふざけた事を抜かす魔物をしばき回したい所だが、今はそれどころでは無い。
《認識》を使ったことで、この部屋のそこら中に窓のようなものがついていることに気付く。
窓の先は暗いとも、明るいとも言えないあの場所だ。
そして、沢山ある窓の1つから、例の威圧感を感じる。
......来る。
私は身構える。
______ガラガラ!
「誰だ!『@‘%**?+』の力を感じたぞ!......人間?」
窓が開いた先にいたのは、赤みがかった半透明で、数えきれない数の腕だった。
手だけのものもあれば、肘からのものもある。
しかし、肘より上が付いているものは1つもない。
間違いない。
まつろわぬ者だ。
「お初にお目にかかります。貴方の噂を聞いてお話しに来ました、ルミと申します」
「そんなこたァどうだっていい。『@‘%**?+』はどうした?あの方が死んだ訳ゃねえが」
コイツはあの目玉と比べて会話が難しいタイプなようだ。
これと共同で城を造ったであろう初代皇帝に敬意を表するとしよう。
「申し訳無いのですが、私たち人間はその言葉を認識できません。ですが、私から感じている力となると......《認識》」
私が《認識》を使うと、腕が一斉にわちゃわちゃと蠢きだす。
心底気持ちが悪いが、一旦我慢だ。
「それだ!『@‘%**?+』の権能だろ?あの方とどういう関係だ?」
「面白い人生を見せてほしいと言われて、この権能を頂いただけの人間です」
あの目玉のように心を読まれてもたまらないので、素直に答える。
嘘をついて敵対するのも馬鹿馬鹿しいしな。
「な、る、ほ、どォ〜〜〜!?ってこたぁ、あの方のお気に入りってこった!っかァ〜!よく来てくれたなァ!俺は『:{・$=@@』だ。お前らの言葉で言うなら......なんだったか......あァ、古き腕の齎す創造ってんだ」
どうやら、あの目玉と敵対しているわけでは無いようだ。
少なくとも、敵意のようなものは感じない。
古き腕の齎す創造という名前から予想するに、何かを創ることがこの腕の権能だろう。
「あの、ここに来れば力を貰えると聞いたのですが......」
「おぉ?そうだ!気に入った奴にゃ、わっしの権能で創った武器や防具を与えてんだ!」
なるほど。
気に入った奴イコール力を持った者ということであれば、皇帝の話とも辻褄が合うな。
「現皇帝には何を?」
「あァ?......最後に来た赤髪か!アイツはかなり才能があったからな、お気に入りの籠手をやった!」
籠手か。
確かどこかで読んだ文献で、前皇帝は強力な剣を持っていたと聞いたな。
それについて聞いてみる。
「前の皇帝......アイツか!アイツも悪くなかったからな、剣をやったのを覚えてる」
......ん?何か違和感がある。
「籠手を与えた皇帝と、その前の皇帝。どちらが才能があると思ったんですか?」
私が何か問うたびに、手がさまざまな印のようなものを組んで感情表現をしてくるのが妙に鬱陶しい。
あれのパターンを解析すれば、こいつとコミュニケーションが取りやすくなるだろうか。
......いや、無いな。
くだらない思考を止め、腕の言葉を待つ。
「んァ?あー......才能の種類が違ェからなァ」
「種類?どういう事でしょう?」
「前の皇帝ァ、ぶっ殺すのは上手かったが守るのが下手だった。だからアレに必要だったのは剣だ。今の皇帝は、手前が戦うタイプじゃねェ。だからわっしの象徴である腕の防具を与えた。一番わっしの権能が働くからな」
つまり、それぞれの才能に合った物を与えているという訳か。
そして、才能はあったが戦闘向きではなかった現皇帝は、一番汎用性に富んだ籠手を貰ったと。
「なるほど。私が何を貰えるのか楽しみになってきました」
何せ、《認識》で自分の才能を解析している最中だ。
あの目玉ほどの精度は無いにせよ、答え合わせくらいにはなるだろう。
「何言ってんだ、『@‘%**?+』が文字通り目を掛けてる人間に物なんかわたせるかぃ!」
なんだと?
つまり、あの目玉のせいで私は何ももらえないという事か?
非常に残念だが、仕方ない。
《認識》を貰ったことを感謝するべきか。
「分かりました。ではせめて私の従魔達に何か......」
「あ?ァに言ってんだお前ァ!んな粗末なモンやれねェっつってんだ!」
......おお、偉大なる目玉よ。
貴女のおかげで私は良い物がもらえるようです。
本当にありがとう。
今度菓子折りでも......いや、私の人生を楽しんでくれ。
きっと貴女はそっちの方が嬉しいだろう。
「では、何を?」
「お前の言うように、従魔の2人には物をやるがな。お前には特別だ」
そう言って、全ての手をこちらに開いて見せる。
「権能をやる」
思った以上に大盤振る舞いだ。
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