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61 -変わらぬ面々-

 私は一旦、モズーの冒険者組合に顔を出す事にした。

この酒の臭い、重たい扉......は、5年前に比べて成長したからかそこまで重たくはないな。

見知った顔はほとんどいないが、ナドゥさんやダグレスはいるだろうか。


「おい、邪魔だ餓鬼!」


「あら、失礼しました」


 私を押しのけ、受付へ向かった男性二人組。

別に喧嘩する理由もないので押されるがままになり、彼等の対応が終わるのを待つ。

......つもりだったのだが、何やら揉めているようだ。


「どういう事だよ!言われた通りモンスターはぶっ殺してきただろうが!」


「どういう事と言われましても、指定された場所のモンスターではない事が素材から分かっています。依頼の達成とは言えません」


 素材を詳しく調べれば、どこに生息していたモンスターかは確かに分かる。

しかし、依頼達成の報告に対してわざわざ調べてから対応しているということは、彼は元々素行が悪いため警戒されているという事だろう。

見ていると、あまり強く言えないタイプの受付嬢なようで、男の方はどんどんヒートアップしている。

面倒くさい。

睡眠(スリープ)》を2人にかけ、眠った2人を無視して受付に向かう。


「あ、え、え!?お二人は?」


「眠っていただいただけですよ、睡眠不足だったようですので。それより、ナドゥさんかギルドマスターを呼んでいただけますか?」


 私がこの2人を眠らせた事は理解したようだが、あたふたしつつ何か分厚い本をめくっている。

そして何かを読んだ後、私に申し訳なさそうに言った。


「助けていただけたようで、大変恐縮なんですけれど受付する人の指定は高ランク冒険者にしか認められていません。ギルドマスターについても同じです」


 遵法精神が備わった、珍しいタイプの受付嬢だ。

冒険者という無法者たちが、こういった受付嬢に突っかかるのはある意味当然ともいえるだろう。

強ければ、ルールをある程度無視しても許されるのが冒険者だからな。


「では尚の事、どちらかを呼んできてください。久々に帰ってきたエクソーバーが呼んでいますよ、と」


 私が冒険者証を彼女に見せると、受け取った冒険者証をまじまじと見た後、驚いて私の冒険者証を床に落とす。


「あ、あわぁ!ごごご、ごめんなさい!弁償は、えっと......できないですけど......」


「ただの冒険者証ですから。気にしないでください。ってギルドマスター、見ていないで早く対応してください」


 受付嬢が半泣きになりながら私に冒険者証を返そうとしている所を見て、ニヤニヤしている中年の男性が私の目に映った。

それに気づいた受付嬢は、トテトテとダグレスの後ろに隠れる。


「そんなこと言われてもな。どんな相手にも対応できて一人前の受付ってものだろう。それを俺が助けてたらいつまでも成長しない」


「相変わらず口が良く回りますね。ナドゥさんはいないんですか?」


 私が居るとなれば、間違いなく飛び込んでくるであろう彼女がいないのだ。

飛び込んでほしいわけでは当然ないが、挨拶くらいはしておきたい。


「野暮用でな。明日には戻るはずだから楽しみにしておけ」


 野暮用、ね。

とりあえず、用事を済ませる事とするか。


「そんなことより、この5年で何があったか詳しく教えてください。図らずもかなり強くなりましたので」


「そうか。じゃあまずは皇帝への謁見だ」


 ......ん?

謁見?皇帝?何を言っているんだ。

いや、考えれば当然か。

私は一応、単独で王国の子爵領を攻略したことになっている。

実力主義、力がある者が上に行く国であるローザル帝国で無視されるされる存在なわけがない。


「......いつですか。服なんかも持ってないですし、準備したいのですが」


「可能ならすぐに。礼儀など冒険者に求めないから早く来い、とのことだ」


 くそ、冒険者に寛容だ。

仕方ない、面倒事はさっさと片付けるか。


「明日にでも向かうと言っておいてください。最大限身支度を整えます」


「そのままでも良いと言ってた気がするが......王国にいて貴族の矜持が戻ったか?」


 相変わらず馬鹿な事を言う。

しかし、最低限舐められない格好をする必要がある。

私が舐められると、ユースデクス家が舐められる危険性がある。


「面白くない冗談ですね」


「すまんすまん。で、もう身体は大丈夫なんだな?」


「ええ、絶好調ですよ。今すぐにでも眠りたいですから」


 それは間違いなく絶好調だな、とあきれた様子で笑ったダグレスだった。




 今後について、ダグレスと話している時の事だ。

僅かに、地面が揺れている気がする。

なにか、走っているような......。


「あぁ、全く。ルミ、備えろ」


「は?何を______わっ」


 何を言っているのか、とダグレスに問いかけようとした瞬間。

私の反応できない速度で、顔に何かが覆い被さった。

ふわふわと柔らかい、初めてではない感覚。


「ルミちゃ~~~~ん!!!!大きくなったのね!!」


「放してください、ナドゥさん」


 そこにいたのは、野暮用とやらでここを離れているはずだったナドゥさんだった。

ダグレスも微妙な顔をしているところを見るに、予定には無かったのだろう。


「用事はどうした?」


「巻きで終わらせましたよ!ルミちゃんが帰ってきたと聞いたので!」


 恐ろしい執念だ。


「お久しぶりです。ナドゥさん」


「寂しかったわよ~。随分強くなったのねぇ」


 ナドゥさん、分かるのだろうか。

只者ではないのかもしれないな。


「すみませんが、ギルドマスターのせいで用事が出来ましたのでそろそろ行きます」


「......マスター?」


 私がダグレスのせいで行かなくてはならない事を告げると、ナドゥさんはギロリとダグレスを見た。


「謀ったな?」


「......ふふ、では」


 ナドゥさんに詰められている彼を無視し、私は組合をあとにした。


△▼△▼△▼△▼△


「見たか?あの雰囲気」


「はい。アシガンさんとはまた違った雰囲気の強さを感じましたね」


 間違いないな。

アイツ、この5年間でエクソーバーに相応しい力をつけたみたいだ。


「これから忙しくなるぞ。アイツは自分の特権を振りかざす事に躊躇しない」


「そうですね。注意しておきます」


 あいつが本気になったら、注意も何も意味がない気がするがな。

しかし、炎魔公と戦って生き延びるとはまだ信じられん。

皇帝にどんなことをやらかしてくれるか、楽しみだ。

毎日投稿挑戦中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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