60 -権能と夢魔法-
長い前置き回も、今回で終わりです。
ノワールはスキルの能力についての情報。
そしてアヤメは進化の情報。
私の魂には、どんな情報があるのだろう。
《認識》が使いこなせていない以上、何もわからない可能性もあるがな。
「マズそうだったら容赦なく気絶させてくれていいからな」
「了解っす」
「そんなことにならない事を祈っていますわ......」
珍しくツッコミに回ったノワールを横目に、私は集中力を高めていく。
絶対に出力を上げてはならない......慎重に、慎重に......。
「《認......」
「......はっくしゅん!」
「識》」
あ。
アヤメのくしゃみと共に、出力が狂う。
勢いあまって、ほぼ出力を抑えずに発動してしまった。
視界が歪み、私は意識を手放した。
「アヤメ様、何やってるんですの~!?」
「ごめんなさいっす~!」
△▼△▼△▼△▼△
目を開ける。
恐ろしい全能感だ。
私の魂について、全てを理解したかのような錯覚を覚える。
頭がはじけ飛ぶかと思ったが、意外と無事なようだな。
「あ、ルミさん起きたっすね。大丈夫っすか?」
ベッドに座っていたのは、白髪の美少女......あぁ、アヤメだったな。
まだ進化した姿に慣れない。
清楚な人間のような容姿で、ベッドに胡坐をかいて座っているのだから違和感があって当然だ。
「不思議とどこにも不調はない。頭痛は残るかと思っていたが」
「それは多分、ルミさんのお母さんが回復魔法を掛けてたからっすね~。流石光属性が得意なだけあって、ノワールも上手だって褒めてたっすよ」
母上の手を煩わせたか。
後で謝罪と礼を言いに行こう。
しかし、ノワールが褒めるほどとは、やはり母上は只者ではないな。
アリー師匠から私より長く教わっているのだから当然かもしれないが。
「ところで、結果はどうだったっすか?視えなかったっすか?」
「いや、むしろ視えすぎて困ったくらいだ。ただ私の事を先に見れば良かったと後悔している」
結果として、私の使う魔法全ての『効率・出力・プラスアルファ』を制御しやすくなった。
何せ私の使うスキル、そして魔力の質を事細かに視たわけだからな。
つまり《認識》の出力の制御がかなり楽になったのだ。
こんな大変な思いをする羽目になったのは、自分を最後に残したせいであることは間違いない。
「へえ......じゃあ魂の弄り方も分かるようになったわけっすか?」
「まあ前よりは格段に弄りやすくなったな。まだ完全じゃないが、《睡天》とかなら魂を消費せずに使う事も出来ると思う」
取り込んだ魂を消費してしまう事が使わない理由だった《睡天》。
あの魔法も、魂のどの部分に命令を刻むと魂が自壊しないか、を理解すれば何回かは使いまわせる。
身体の負担が大きいことは変わらないが、それは回復魔法でどうにでもなるものだ。
「アヤメ達を縛る、あの魔法はどうなんすか?」
「《贋》か。多分お前らを縛ることも可能だろうな」
ノワールはともかく、純粋な魔力量だけで私の命令を弾いていたアヤメは余裕で縛れるだろう。
恐らくノワールも、《贋者》の使用を一部制限すればその魂の形に合った縛り方が出来るはずだ。
「......まあ、お前達にはいらないだろ」
「そっすね」
そっけなくも聞こえるが、アヤメは心の底からそう思っているのだろう。
だからこそ出た即答だ。
今更2人を縛るような事をする必要が無い事くらい、私にだって分かる。
「それより、《絶一門》がかなり良い感じになりそうだ」
「あの属性で括って魔法を無効化するやつっすか?どうなるんすか?」
聞いて驚け、切り取る魂の量がかなり減ったので《絶一門》を使用してもその属性の魔法を使えるようになったのだ。
つまり、相手は指定した属性の魔法が使えないが、こちらは学術魔法で言えば中級ぐらいは使えるはずだ。
「じゃあノワールと戦った時に愚痴ってた、相手の闇属性を無効化できるって事っすね?」
「そういう事だな。戦いの幅は上がるし、地味だがかなり有用なはずだ」
△▼△▼△▼△▼△
ここまでは、私の今までの能力の強化だ。
そして、ここからは私が成長できる余地の部分を考えていく。
「便利な夢魔法が、かなり増やせそうだ。例えば魔法を魔石みたいに固体に変えて、起動するだけで魔法を使える......とかな」
錬金術でも似たようなことは出来るが、作成難易度と手軽さが段違いだ。
私が考えている魔法が上手くいくのなら、少し念じるだけで魔法を石ころサイズに封じ込めることが出来る。
「おお、ついにアヤメもかっこよく炎を発射できるっすか!?」
「上手くいけば、な。楽しみにしておけ」
小躍りを始めた残念美少女を小突き、身支度を始める。
母上にも挨拶をしなくちゃいけないし、ノワールも連れてこなくてはいけない。
「もう帰るんすか?帝国に」
「魔力はもう万全だ。身体ももう数日あれば完全に回復するだろうし、無駄な時間を使っている暇はない」
そう、『凶星』の問題は過ぎ去ったわけではない。
新たな夢魔法の開発、権能の習熟、そして帝国への帰還。
全てを同時にこなさなくてはならないだろう。
「お前も、まだ身体に完全に慣れたわけじゃないだろう。恐らく帝国に戻ったらかなり面倒な事になる。帰りながら慣らしておけよ」
「了解っす......寂しくなるっすね~」
こいつがそんな事を言うなんて、と思ったがおかしな話でもなかった。
私が寝ている5年間、アヤメとノワールはユースデクス家で生活してきたのだから。
「帝国に所属させたのは良いが、まだ母上や父上が完全に保護されたわけじゃない。私達が守らなくちゃいけないだろう?」
「確かにそうっすね!よーし!文句言う帝国の奴も、王国にいる敵も全部叩き切るっす!」
全く物騒な話だ。
「よし、帰るぞ。モズーに」
長かった帰郷は終わりだ。
私は冒険者。
エクソーバーの『静夜の狂姫』だ。
私は頬を軽く叩き、部屋の扉を開いた。
毎日投稿挑戦中です。
読んでいただき、ありがとうございます。
ブックマーク、いいね、評価、感想、レビューなどなんでも励みになりますので気が向いたときにお願いします。




