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48 -お願い-

「お願い、ですか?」


 母上は、帝国に降伏するために最低限必要な条件を提示した。


「ええ、お願いよ。貴女の言葉が嘘とは言わないけれど、まだ私達は相手の強大さを実感できてないわ。だから......帝国軍に絶対に勝てないという、貴女達の実力を見せてちょうだい」


 なるほど。

私達の実力次第では、ユースデクス軍でどうにかなるかもしれないと踏んでいるわけだ。

確かに、エクソーバーに成り立ての私の実績など情報にないだろうし悪くない条件だ。


「その方法はどうしましょう?」


「簡単よ。貴女達1人1人と私達で、模擬戦をしましょう」


 そう言う彼女の顔は、至って真剣といった雰囲気だ。

私達に敵うはずが無いことは分かっているはずだ。

つまり、彼女が求めているのは完膚なきまでの蹂躙、圧勝だ。


「......お2人は良いのですか?」


「ん?ああ。エリアが言うなら間違い無いだろうからね」


 父上は母上の判断を露ほども疑っていないらしい。

父上はあまり考えるのが得意なタイプじゃ無いのはわかっているので、仕方ないといえば仕方ないのだろうが。


「正直そんな事をしたって帝国に降伏するかどうかの判断はつかないと思う。でも、僕はここに同席させてもらっている身だ。選択権は無いよ」


 ならば、余計な事を話さなくて良いのだ。

黙って頷いていればいい。


 家族は守りにきたが、血が繋がっているだけの男にごちゃごちゃ言われるのは不快だ......というか、世話になってない相手を守らずとも私の睡眠環境は穢されない。

2人を守るなら、自ずとついてくるおまけだからついでに守ってやると言っているだけだというのに。


「立派な淑女がそんな怖い顔しちゃダメよ、ルミ。それで、お願いを聞いてくれるのかしら?」


 思っていた事が顔に出ていたのか、母上に嗜められる。

冒険者になってから感情を隠す技術は必要なくなったもので、いつの間にか失ってしまった。


「分かりました。その代わり、私は魔法を、アヤメは剣以外の全てを、ノワールは近接戦闘を使いません。でなければ実力を見せるまでもなく終わりますので」


 私の言葉に、兄上から少し癇に障ったような雰囲気を感じる。

本当なのだから、仕方ない。


「分かったわ。じゃあラインスがアヤメさん、私がノワールさん、ライがルミと戦うって事でもいい?」


 お互いの得意をぶつける先2つの模擬戦と、余ったユースデクス家の子供達での模擬戦か。


「分かりました。そうと決まれば準備しましょう、時間は刻一刻と迫っていますから」


△▼△▼△▼△▼△


 まずはアヤメ対父上。

父上はかつて優秀な騎士だったと聞く。

少しは打ち合えるといいのだが......。


「ルールは......私達は基本寸止め、その攻撃で致命的な一撃が入ると判断されれば勝ちで良いでしょう。父上達は全力でお願いします。私達が死ぬ事は万に一つも有り得ませんので」


「随分言ってくれるな......って、ルミの従魔と対峙する前まではそう言っていたと思うよ。でも......あながち間違いでも無いみたいだ。本気で行くよ」


 父上は剣に炎を纏わせる。

そういえば、父上は火属性魔法に適性があったな。

剣士とはいえ、全く魔力がないわけでは無い。

最大限持った才能を無駄にしないのは、とても良い事だ。


「アヤメ、力加減に気をつけなさい」


「分かってるっすよ〜」


 両者、準備はできたようだ。


「いきますよ......始め!」


 先に動いたのは父上だ。両手で持った上等そうな剣で、アヤメの首元へ向けて突きを繰り出す。

初撃から急所を狙うとは、しっかり全力でやってくれているようで安心だ。

しかしアヤメには遅すぎる。炎を纏っている分少し大袈裟に避け、父上の足を払うように蹴りをお見舞いする。

父上はそれをバックステップで避け、剣を構え直す。


「っと。最初の攻撃が足払いとは、本当に手加減されてるね」


「ルミさんのお父さんっすからね、加減を間違えたらアヤメが殺されるっす」


 2人の会話は聞こえないが、どうやら険悪なムードではなさそうだ。

父上が横薙ぎに剣を振るい、アヤメはしゃがんでそれを避け短剣ほどの長さの剣を足に向けて振るった。


「やっと剣を出してくれたね。まだ短いようだけど」


「本当は素手でいいっすけど、ボコボコにしなきゃいけないっすからね。少しは使うっすよ」


「言うね。行くよ」


 父上は思い切り地面を踏み締め、剣を構える。

次に動いた時、父上の動きは今までの3割増ほどスピードアップしていた。

魔力の流れを感じる......スキルか。

始めから使っていないという事は、時間制限があるのは間違いなさそうだ。


 とはいえ、アヤメと父上はスキルの解除を待ってなくちゃいけない程実力が拮抗していない。

一足飛びに距離を詰め、剣を出していない方の左手で父上の胸元に掌底を喰らわせる。


「うぐっ......まだ!」


 大量の息を強制的に吐き出され、とても苦しいはずだが父上は咄嗟に蹴りを繰り出す。

アヤメの攻撃で少々距離が空いていたのもあって、当たりはしなかったが回復を待つまでの牽制にはなった。


「こりゃ、いつまでやってもしょうがないっすね。ルミさんのお父さん、全力の一撃をアヤメに撃つっす。絶対に避けないっすから、それで終わりにするっす」


 あまり実力差がある相手との戦いが好きでは無いアヤメは、面倒になったのか悪くない提案をする。

全力の一撃とは、当てるまでの作戦が1番難しいのだ。

それを省かせてくれると言うのだから、父上にとっては願ったり叶ったりだ。


「とことん私の怪我に配慮してくれるんだね......分かった。いくよ」


 父上は剣を掲げ、持てる魔力を全て注ぎ込む。

そして両手で思い切り振りかぶり、アヤメへ振り下ろした。


「どりゃあああああ!!」


 吼える父上を見るのは初めてだ。

やはりなんだかんだ言って、愛国心があるのだろう。

これで勝てるならまだ帝国に立ち向かえるかもしれないといった希望を感じる。

......しかし。


______キィィィィン!!!


 耳をつんざくような金属音に、遅れて父上の剣が上空から降ってくるのが見えた。

アヤメは、父上と真逆の方向......つまり真下から父上の剣を受け、短いままの右腕の剣一本で吹き飛ばしたのだ。


「......は、はは。手が震えてるな。私の負けだ」

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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