44 -訓練-
遅くなりました。
失礼いたしました。
「ぜえ......ぜえ......。もう、無理だ......」
バタン。
「ぐえっ」
私は体力の限界を迎え、とっくに倒れている従魔達の上に倒れ込んだ。
あの魔力、とんでもない力を持っている。
「そうだな、ひとまずは、休憩してろ。暫くしたら、また再開だ」
「ご、ご飯はナシっすか......?」
「待ってろ。後で持ってきてやる」
そう言って、アシガンは町の方に消えていった。
色々と攻略法を考えたいところだが、今はただ眠りたい......。
私は目を閉じた。
△▼△▼△▼△▼△
暫くして目を覚ますと、私たちはアシガンの対抗策を自ずと考えだした。
「まずあの魔力だ。ただ不快な魔力かと思ったら、触れている間魔力を崩壊させるとかいうとんでも効果を持っていた」
「あるじ様とわたくしは少しだけ防げますけれど、問題はアヤメ様ですわ。前衛として唯一アシガン様に対抗出来る筈のアヤメ様が、魔力をどんどん削られて剣の維持すら出来なくなっていましたわ」
「対抗って言っても、意識の全てを攻撃に向けてようやく五分ってとこっすけどね。少しでも魔力を出し惜しむと簡単に押し込まれるっす」
つまり、現状アシガンは魔力を垂れ流しながら逃げ回っているだけで私達を制圧できるというわけだ。
不条理極まりないが、これがエクソーバーという事だろう。
そしてさらに、当然だがアシガンは攻撃してくる。
近接戦ならアヤメがどうにかするが、魔力を崩壊させながら放ってくる魔法にはかなり余分な魔力を割かないと防ぎきれないのだ。
「ルミさん、何かないっすか?魔力を即座に回復する方法。1回でも全快出来れば倒し切れる気がするんすけど」
「馬鹿言え。魔力回復のポーションだって私達を十分に回復させるには何本も飲まなきゃ......ん?ちょっと待て。お前なら行けるかもしれないぞ」
そういえば忘れていた、アヤメの1番の強み。
実戦で試すとするか。
「もう、いいのか?もう少し、休んでいたって、良いんだぜ」
「いえ、ベッドが恋しいのでさっさと終わらせて帰りますよ」
「く、く、く。そうかい、そうかい。じゃあ、行くぞ」
アシガンは構え、普段から垂れ流している魔力の量を増やし、その質を凶悪なモノにした。
これで、このヘドロのような魔力に触れている間はその部分に含まれている魔力は崩壊していく。
私は《除》で、ノワールは一般的な魔力の膜で一時的にアシガンの魔力を凌ぐ。
「《嵐》」
アシガンの範囲攻撃に、私達はまたも魔力を大幅に使用して対抗する。
彼は魔力の質が異常な事を除けば、私達でもなんとか対応できる能力をしている。
そのおかげで、《嵐》をここまで余裕をもって打ち消すことが出来ているのだ。
「《十戒・神速》......モドキっす!」
「おお、やるな」
アヤメの攻撃は、初めてアシガンの反応を超えて左腕部分の服を切り裂いた。
すると、まるでところどころが呪われていた時のヴェンのように黒く変色した肌が顔を覗かせた。
「!!」
「あー、だから普段は、隠してるんだが......《嵐》」
「ぐっ!」
アシガンは、私に出来た隙を逃さずに攻撃を仕掛けてくる。
《除》が削られる事は無かったが、単純に《嵐》からのダメージを多少喰らってしまう。
「こんなことで、隙を見せるな。アイツらの悪意は、こんなもんじゃないぞ」
恐らくこれは、こんな異常な魔力に当てられ続けた故に身体が崩壊してきているのだ。
動かすだけで激痛が走るだろうに、気にした様子もなく私達を相手取っている。
ここまで覚悟を持って戦う人間に、同情も加減もいらないだろう。
私はアヤメに全力の支援を残す。
「そうですね、失礼しました......《骸砕》」
私は《嵐》を受けつつも、自分の防御を捨ててアヤメに《骸砕》を付与した。
「あの剣士の、強化......?だが、もう全力で剣を使えるほど、魔力が残っていない筈......!?」
「アヤメは魔物っす!人間とは身体の作りが違うっすよ~!!」
実際、アシガンの見立ては正しかった。
アヤメの魔力は尽きかけていたし、当然全力で剣を振るうほどの魔力は残っていなかった。
しかし、彼女は魔石を食える。
魔石というのは、大量の魔力を内包し、それを食べた魔物を大幅に強化する。
今まで数々の魔石を食ったアヤメには、強化は無いにしろ質の良い魔力ポーション程度の効果は期待できる。
魔石を思い切り噛み砕き、強化の乗った剣をアシガンの首元に目にもとまらぬ速さで突き刺す。
「終わりっすね?」
「......く、は。やるな。俺の、負けだ」
こうして、私達は隙をついたとはいえ、エクソーバーに勝つことが出来た。
週3(くらい)投稿継続中です。
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