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37 -黒い令嬢......?-

「充実した旅だったようでなによりです」


「はい......ナァナ様、魔力が乱れています」


 ウリアの帰りにファーリア侯爵家に寄り、用事を済ませに来たついでに錬金術をナァナ様に教えていく。

やはり彼女、実践的なことに触れてこなかったのもあって実践より座学が得意なようだな。

極論、魔力を注ぐ部分だけ他の者に任せれば良いので錬金術なら問題はないが、彼女の目標である魔法を使うのには鬼門になるだろう。

ただかなりの努力家ではあるので、いずれ克服してくれると願っている。


「難しいですね......そういえば、せっかくウリアに行ったんですからノワールさんに何か買ってきてあげましたよね?」


「えぇ。一応何に興味を持つか分からないので、無難な物になりましたが」


 布を名産にする地なのだから、布に関係あるものという事で白いスカーフを買ってみた。

服を買っても良かったのだが、あのゴシックな服が脱げるのかわからなかったのであの服に合わせても違和感のない装飾品の方が良いと思ったのだ。

アヤメは食べ物のほうが喜ぶだろうなどと戯言を抜かしていたので、口に私の糸を纏めて突っ込んでやった。


「あら、素敵なスカーフですね......今の彼女とは少しイメージが違う気もしますけれど」


「どういう意味でしょう?」


「彼女に会えば分かると思いますよ。行ってあげて下さい」


 あまりにも不穏な事を言うナァナ様に、私は挨拶もそこそこに彼女のいるであろう離れに向かった。


△▼△▼△▼△▼△


「失礼します、ノワールを迎えに参りました」


 離れで使っているとは思えない、大きな屋敷の前で呼びかける。

こちらには護衛が居たりするわけではないので、誰かが来るまで待つしかない......と思ったのだが。


______ぁあるじ様ぁ~~~~!!


 ......聞き間違いだろうか。

屋敷の中から、聞き覚えのある声で聞き覚えの無い台詞が聞こえてきた。

ひとまず落ち着いて状況を整理しようとしていたのだが、屋敷の扉がバタンと開いたことを認識した瞬間に私は吹き飛んだ。


「寂しかったですわ、あるじ様!」


「......《贋者(マガイモノ)》の副作用か?ノワール」


 私を押し倒し、薄い胸に顔を埋めているのは間違いなくノワールだ。

私の記憶が間違っていなければ、彼女を預けたのは数週間程度で、その目的は情操教育兼彼女の目標を見つける事だったはずだ。

間違っても、ベタベタくっついてくるエセ令嬢にする為ではなかった。


「わたくし、やりたい事が見つかったのですわ!」


 元の予定を忘れていた訳ではないようで良かった。

しかし、胸に顔を埋めながら大きな声を出さないでほしい。

彼女の力加減次第では、口から今日の昼ご飯をぶちまけるだけではすまないのだ。

......仕方ない、許可なく出すつもりはなかったが。


「アヤメ、ノワールを引き剥がせ」


 私は身体の隙間から魔石を放り投げ、アヤメに指示を出す。


「おー、すごい状態っすね。これ本当にノワールっすか?」


「いや!離してくださいまし!あるじ様の香りが逃げていってしまいますわ!」


「......私が聞きたい。ノワール、命令だ。ここに来てからあった事、思った事を事細かに説明しろ。それが終わるまで私にくっつくのは無しだ」


 私が本心から面倒に思っている事を察したのか、アヤメがしっかりと抑えてくれていたからかは分からないがノワールが抵抗するのを辞めた。


「あるじ様の言う通り、わたくしはファーリア侯爵の下で人間の事を学びましたわ。本を一日中読んだり、召使を経験してみたり、ナァナ様と一緒に座学を受けてみたりしました。その中で、わたくしは2つの事に気付きましたわ」


 本を読むのは私のお願いした通りだったが、まさか召使やナァナ様との座学まで経験させてもらっていたとは。

ファーリア侯爵は私との約束を十二分に果たしてくれているようだな。


「それは、愛というものの美しさと、帝国貴族の気高さ!わたくし、心を打たれてしまいましたわ!」


「帝国貴族の中でも上位に位置するファーリア侯爵の下で過ごしていたんだ、2つ目は分かる。しかし、1つ目はどういうことだ?まさか侯爵がお前に愛をささやいたわけでもないだろうに」


 ノワールのエセ令嬢のような口調は、形から入ることで貴族のような心持ちでいたいという表れだろう。

正直そちらに関しては問題は無い。問題は愛とやらの理由(ワケ)だ。


「当然ですわ!わたくしが愛の素晴らしさに気付いたのは素晴らしい物語にであったからですわ!」


「......ふぅ。つまりなんだ。恋愛モノの物語を読んで、それに感化されたと。それで何故私なんだ?」


 ノワールの性別はメスのはずだ。

贋者(マガイモノ)》で魂をいじくらない限りは、これからもずっと。

それが急に私を求め始めるのは、読んだ物語の曲がり具合に眉を顰めざるを得ない。


「あるじ様は、わたくしに初めて優しくしてくれた人間だからですわ!それに性別なんて関係ありません!」


 打算2割、ギルドマスターへの苛立ち8割の私の行動を、優しくされたと表現する彼女に私はもうお手上げだ。

今や情も沸いているが、こいつを孵化させたときの感情は間違いなくマイナスな感情だった。


「......私は愛にも性にも興味がない。期待するだけ無駄だから、私以外の何かで好きに発散しろ。というか、私はまだ未成年だ」


 魔物に言っても仕方ないとは思うが、私は睡眠以外の三大欲求にてんで興味がない。

アヤメの影響で少しは食に興味を持つようになったが、それでも常人の数パーセントにも満たない興味だ。

とにかく、そうやって彼女のラブコールを否定したはずだった。


「まあ!なんてロマンチストなんですの!?」


 ......こいつは何を言っているんだ?

私は明確に彼女の好意を拒絶したはずなんだが。

何をどう曲解すればロマンチストなどという私から最も遠い形容が思い浮かぶんだ。


「”私はそれなりの者に靡く女じゃない、だから私が成人するまでに素敵な女性になれ”ってことですわよね?」


「はあ!?お前、何を聞いていたんだ!私は情欲やら愛情に困ってないから他を探せ、と言ったんだ!」


 思わず声を荒げてしまい、周りに人が居ないことを確認して安堵する。

未成年の少女が情欲云々と貴族の屋敷で語っている状況は、あまりにも体裁が悪いからだ。


「待っていてください、あるじ様。わたくし、絶対にあるじ様を振り向かせて見せますわ!」


「もう好きにしろ。行くぞ......あ」


 私が話を切り上げ、さっさとファーリア侯爵に礼を言って帰ろうとしたその瞬間。

考えうる限り最悪のタイミングで、ノワールの為に買っていたスカーフが雑嚢から落ちた。


「あるじ様、そのスカーフは......?」


「ルミさんがノワールの為に買ったっすよ。1人だけ留守番させて可哀想だからって」


「馬鹿、それを言うと......!」






 ______ぁあるじ様ぁぁぁーーーー!!!


私は改めて、ファーリア侯爵領の大地を枕にすることとなった。

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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