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2 -貴族-

 目が醒めると、自分の身体が思うように動かない感覚を覚える。どうやら私は赤ん坊として転生する事に成功しているようだ。


「〜〜〜〜〜〜〜〜?」


「ーーーーーーー」


 私には理解できない言語で話す男女。状況を見るに金髪の若々しい女性が母で、濃い紺色の髪のガタイの良い男性が父だろう。

 そういえば、意識が戻ったらステータスと念じろと言っていたな。試しに念じてみる。


名前 : ルミ・ユースデクス


種族 : 人間


称号 : なし


スキル : 《魔糸使いLv1》《超睡眠Lv1》《魔導Lv1》


 この世界での私はルミというのか。先ほどから両親がそう発音しているようにも聞こえるな。

 そして、大切なのがスキルだ。恐らくこれが神からの3つの特典だろう。詳しい説明などは......念じてみるか。


《魔糸使いLv1》魔力で糸を生成し、操作する。


 なんとも単純な効果だ。しかし、これを使えば何処にでもハンモックを作れる......と信じよう。


《超睡眠Lv1》睡眠中の体力、魔力の回復が早くなる。


 これは睡眠による利益か。糸を生成するのにも魔力というのを使うらしいし、あって損はないであろう良スキルだ。


《魔導Lv1》 魔法の威力、魔力量が上昇する。


 これも地味だが使い勝手は良さそうなスキルだ。怪しかったとはいえ神、使えないスキルを渡す事はしないのか。

とはいえ、《超睡眠Lv1》も《魔導Lv1》も数値やらが書いていないな。これは検証が必要だろう。

Lvというのも気になる。恐らくレベルの事だろうが、使っているだけで上がっていくと考えて良いのだろうか。


 ......考えていたら眠くなってきた。赤ん坊の身体は眠くなるのが普段より早いな。寝るか。私は目を閉じた。



△▼△▼△▼△▼△



 ひとまず私がしなくてはならないことは、自由な立場を得ることと、それを支える力と情報を手に入れることだ。立場は追々考えていくとして、力と情報はすぐにでも必要だ。


 使ってみるか、スキル。

念じれば出るのだろうか。糸、糸......ッ!?

私の意識はそこで途切れた。




 また目が醒める。しばらく時間が経っているようで、両親らしき男女はいなくなっている。両手には丸まった糸の塊が握られている。

これから考えられるのは、糸を出した事で魔力とやらを急激に消費し、限界を迎えて気絶したという事だ。念じ方が良くなかったのだろうか。

指から少しずつ、糸が出る様子をイメージして......。

すると、ぴゅうと糸が生成されて飛び出た。これは面白いな。まず、現在の私がどれだけ糸を出せるのか調べるか。


 1、2、3......。


 あぁ、これが魔力が切れかけの感覚......ッ!またもや気絶してしまうようだ。17、秒だ______



 また目が醒める。魔力を使った時の虚脱感と強制的に気絶させられる現象には抗いようもないことが分かった。次は、魔力が切れる直前で止めてみる事にする。


 1、2、3......18?


 おかしい。先程は17秒で意識を失っていたはずが、18秒が魔力の切れる直前の秒数だ。

糸を出す速度や量で魔力の消費が変わるのは分かるが、先程出した糸と比べると、若干今出した糸の方が長い。丁度1秒分くらいだ。

これは、魔力を使う事が総魔力量の上昇に関わっていると考えて良いな。

糸に触れた状態で念じると、糸を消すことが出来るようだ。幾分かの魔力も戻ってくるようだな。試してみたところ、3~4秒ほど糸を出せたので、2割の魔力が返ってくるのだろう。

この性質も利用して、効率よく研究を進めたいところだ。




 転生から数年が経った。現在の私のスキルはこうなっている。


名前 : ルミ・ユースデクス


種族 : 人間


称号 : なし


スキル : 《魔糸使いLv4》《超睡眠Lv2》《魔導Lv1》


《魔糸使いLv4》魔力で糸を生成し、操作する。

現在使える糸の種類:通常・粘着・細・極細


《超睡眠Lv2》睡眠中の体力、魔力の回復が早くなる。

現在優先されているステータス:魔力


 魔糸使いは、様々な種類の糸が使えるようになった。また、丈夫にもなった気がする。

辺りに人がいないときは常に糸をいじっていたから、レベルがだいぶ上がった。

 超睡眠は、どちらのステータスを優先して回復できるかを選べるようになった。

最近は、赤ん坊だった時に比べて寝ている時間が短いからか、起きても魔力が完全回復していなかったりもするのが面倒だったのでありがたく使わせていただいている。

ん?寝ることが最高の至福と考える私が何故短時間しか寝ていないか、か?


「ルミ、おはよう」


「おはよう、眠そうだな」


「おはようございます。父上、母上、兄上」


 当然といえば当然だが、私にも家族がいる。しかも、この世界は現代で言う中世っぽい上、貴族制を採用しており、私の家族もその貴族らしい。

ユースデクス子爵家というらしいが、貴族なので小さなうちから教育を受けなくてはいなくてはいけない。

その教育を受けつつ、自分の力の研究などを進めているので時間が足りないのだ。誰にも邪魔されない睡眠にはまだほど遠いが、諦めるつもりはない。


「昨日も遅くまでなんかしてたんだろ?気持ち悪い妹だ」


 これが私の兄であり、ユースデクス子爵家次男のロイドだ。まだ10歳の子供だが、私の事を目の敵にしている唯一といっていい男だ。

一度魔法の練習をしているところを見られ、父上からも叱られた。それからは誰もいないことを一層確認するようになったが、警戒されているようだ。


「ロイド、そういう言葉遣いはやめなさい。ルミも、もうすぐ魔法の教師をつけてあげるから、それまでは勝手なことをしてはいけないよ」


「はい、わかっていますわ父上。その日に学んだことを復習していて、寝るのが遅くなっただけなので心配しないでください」


「そうよラインス。ルミは聡い子だから、一度言われたら理解するわ」


「エリア......まあ、二人を信じているよ。万一火魔法とかを使ってしまったら洒落にならない可能性があるから心配しただけだ」


 ちなみに、ラインスが父上の名でエリアが母上の名だ。


 また、魔法の練習は続けているので二人の心配は間違っていない。

その練習の成果もあって、最近は魔法を安定して発動できるようになってきた。

魔法の教師からこの世界の標準の魔法を知るまで人に見せるつもりは毛頭ないが。


「明日が洗礼式でしょう?今日は早く寝るのよ」


「はは、朝から早く寝ろと言われる子供も珍しいな」


 席について朝食を食べながら明日について考える。洗礼式というのは5歳になる貴族の子供が受けるもので、魔法の適性を知ることが出来るらしい。

それを知ってから魔法の教師をつけ、得意な属性の魔法を伸ばしていくのが一般的らしい。


「ルミ、昨日の復習の成果を聞かせて頂戴。魔法の属性について話してみて」


 母上は私を信用してくれているようだが、代わりに定期的にこういった問題を出してくる。

内心少しドキッとするが、それも復習の一つとして利用させてもらっている。


「はい。属性には大きく分けて二つあり、基本属性と派生属性があります。基本属性は火・水・風・地・光・闇の6つからなる、六大属性とも呼ばれる属性です。洗礼式ではこの基本属性の適性を知ることが出来ますが、適性がないからと言ってその属性の魔法が使えないわけではなく、あくまで成長のしやすさなどを判断するものです。派生属性は基本属性から派生した属性、あるいはどこにも属さない属性の事で、例を挙げると水属性の派生属性に氷属性があったり、地属性の派生属性に草属性があったりします。また、草属性は風属性の派生属性でもあり、風属性と地属性どちらの適性も必要とされます。どこにも属さない属性には、無属性などがあります」


「......完璧ね。それだけ分かっているなら心配ないわ」


「流石だな、ルミ。将来は文官か魔術師になれるかもしれない」


「フン」


 兄上は気に食わないようだが、私の知識に欠けは無い。必要だと思った事はなかなか忘れないのが、私の転生前からの長所だ。

ちなみに、父上は火の適性があり、母上は水、風、光の適性がある。

3属性適性というのはかなり優秀らしく、昔の母は有名人だったのだ、と父上から聞いた。

ちなみに、ロイドは父上をしっかり遺伝したらしく、火属性が適性だ。


「さあ、ロイドは父さんと訓練だ。食べ終わったらいつも通り準備をして庭に来なさい」


「わかりました」


「ルミは今日もお勉強よ。今日の内容は何だったかしら?」


「器楽と算術だったと記憶しています」


 あまり演奏は得意では無いが、貴族の常識らしいから仕方がない。さっさと終わらせて、明日の洗礼式に備えることにしよう。

読んでいただき、ありがとうございます。

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