1 -起床-
なんだ......?私の部屋、ではないな。
明らかに異常な空間で、私は目を覚ます。辺りに色と呼べるものは無く、白一色の空間だ。
ふと足元を見ると、一枚の紙が落ちている事に気付く。
『貴方は地震に起因する物体の落下で頭部を損傷し、死亡しました。此処は次の世界に生まれ変わるまでの待機所になります』
なるほど、私は死んだのか。
そう納得していると、持っていた紙が一瞬光り、内容が変化する。
『驚かないのですね、やはり面白い』
驚いても仕方ないからな......待て、貴方は神か?敬語が必要か?
『いえ、私は神ですが敬語は必要ありません。貴方の思考から言いたいことを読み取っているだけですから』
それは助かる。私は他人を敬うのが苦手だからな。ところで、何故私は此処で待たされているんだ?死ぬと皆こうなのか?
『私の個人的な興味によるものです。貴方は、娯楽の多い日本という国で、どの娯楽よりも睡眠に異常な執着を見せた。そんな貴方が、日本とは全く違った世界に行けばどうなるのか。それを知りたいのです』
異常な執着、と言われるのは心外だが。他人から見れば異常だったかもしれないな、生きるのに必要な事をしている時以外は寝ているのは。
『しっかり異常ですよ。1日辺りの平均睡眠時間が12時間、それをおかしいと思わない精神、誰に止められても気にしない胆力。何処をとっても異常です』
私にとっては至極当然な事なんだ、睡眠が全てにおいて優先されるのは......まあいい、それで?私は何をすれば良いんだ?
『特にして欲しいことはありません。ですが、貴方が記憶を持ったまま生まれ変わるのは所謂異世界、貴方の常識は通用しません。ですので、3つの特典をお付けします』
特典。それは喜んでいいんだろうか?何より、それをして神に何の得がある?記憶を消して普通に輪廻転生するのが一番面倒がないと思うが。
『これは私の純粋な興味です。貴方のその異常な執着をもっと見ていたいのです。ですから、私の我儘に付き合って頂く代わりに異世界を生き抜きやすくする魔法を3つ授けさせて頂きます』
なるほど。それで、魔法というのはなんでも貰えるのか?世界を破壊し尽くしてから寝るとかも可能なのか?
『勿論こちらで希望の内容に応じた魔法を選択し、貴方に授けるつもりなのでそのような危険性はありません。3つの希望を受理した時点で転生が始まりますので、意識が戻ったら《ステータス》と念じてください』
了解した。希望するのは、寝床を確保する能力、睡眠することにより利益が発生する能力、私の睡眠を妨げる者を処理する能力だ。
私がそう願うと、意識が希薄になっていき、直に何も感じなくなった。
『楽しませてくださいね』
神の声が聞こえたような気もした。
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正直、思った以上の異常者ですね。自分が死んだ事、そして異世界へ転生する事を聞いて取り乱さなかった人間は他に見たことがありません。
しかも、死んでもなお自らの欲望に忠実に睡眠だけを求めた。新しい生き方とか、そういったことを一切考えていないという事です。それはつまり、自分の今までの行為を全く間違っていないと確信しているという事で......。
「うふふ、本当に楽しみね」
私の世界を、楽しんで下さいね。
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