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異世界最強の転移者と15人の美少女剣姫  作者: 西村将太郎
第1章 天都へ
9/27

1-6 奉納相撲

ご愛読、ありがとうございます。

ゴンタの奉納相撲です。

 鬼人の村を訪れたクーヤは、カクタスの同僚ゴンタに会う。ゴンタに剣の修行を頼まれたが、成行きで奉納相撲の修行も引き受けてしまう。


 〇転移12日目 セッキ村

「センセー、変!」

 昼食が終わって俺達は相撲の練習を始めるだが、ふんどし一丁になって尻を公衆の面前に出すのを恥ずかしがった俺は、ボクサータイプのトランクスの上にふんどしをした。

 それをヒイに笑われたのである。一応ふんどしは越中ではなく六尺である。


 相撲のルールは日本とほぼ同じ、ただ仕切りは立ったままやる。低い位置からぶつかると角が刺さるから言われてる。


 俺はひたすら試合数を重ねさせることにする。何しろ3日後の事なので、基礎に重点を置くとか言ってられないのだ。

 もちろん、俺の従者にして関取をインストールすれば簡単に勝てるだろうけど、現時点では俺の異能は秘密にしたい。


 鬼人の相撲はかち上げ、張り手やツッパリを嫌う四つ相撲だ。まずは下手を先に取ると有利なことを教える。

 俺が下手を取って、ゴンタを転がす。それからカクタスと試合わせて復習させる。

 それを夕方までやった。二人とも明日は非番と言うので明日もこれをやるつもりだ。

 俺の外泊は一緒にカクタスがいれば黙認される。


 ******


 〇ゴンタ視点

 藁にもすがる気持ちでクーヤに訓練をお願いした俺だが、本当に強くなっているのか。

 クーヤには組んですぐに転がされるし、カクタス相手でもそんなに強くなったとは実感できなかった。

 今の俺の実力を試したいと思っているとちょうどいい奴が現れた。


「ギンジさん、ちょっと俺と立ち会ってくれないか」

 ギンジさんは19歳で去年のセッキ村の代表の一人で、俺より少し強かった。

「なんだ、相撲か。いいぞ、暇を持て余していたところだ」

 俺より少し大きな体をゆすって土俵に向かった。


 おかしい、9回やって9回勝った。

 なんと言うか負ける気がしない。

 相手のやりたいことも解るし、それを防ぐ手段も解る。


「良し、もう一回だ!」

 ギンジさんが叫ぶ。


 立ち合いで相手のやりたいことが解る。

 今回は俺にさんざんやられた前から下手を取ろうとしている。

 下手は取らしたが体を捻って、上手を与えない。


 踏み込んで上手を取りに来る。

 上手を取ったら引き付けて上手投げを打つつもりだ。

 上手に集中する隙に下手を切ってやろうか、でも上手投げに下手はいらんか。


 上手を取って来た。

 上手投げだちょっと逆らって、投げられる。


「ようやく勘が戻ったみたいだな。は、は、は」

 ギンジさんは最後に勝てて上機嫌だ。


「しかし、一年間何もしていない俺に投げられるとは、もっと練習した方が良いぞ」

「はい、ありがとうございました」

 ギンジさんは機嫌よく去って行った。


 最後に花を持たせて良かったようだ。

 しかし今日クーヤと練習してなかったら、ギンジさんに勝てなかったのではないか。

 半日だぞ。立った半日練習しただけで、前に勝てなかった相手に余裕で勝てるなんて・・・。

 あいつは一体どうなっているんだ。


 あれ、向こうから来るのはクーヤが連れてた女の子か。

「どうした。クーヤ殿達と一緒じゃないのか?」

「うん、カクタス様とおしゃべりしててつまらないから・・・」

 そうか、退屈になって俺達が相撲してたのを見に来たのか。


「相撲終わっちゃったの?」

「ああ、今終わったところだ」

 もろにつまらなそうな顔をする。


「あー、お兄ちゃんとちょっとやって見るか?」

 この子の暇つぶしに付き合えば、クーヤ殿も喜んでくれるだろう。

「僕、相撲できないよ。ふんどし姿にもなりたくない」


「あー、大丈夫だ。朝クーヤ殿と戦ってただろう。あんな感じでな」

 この子をふんどし姿にしたら二人に殺されるよ。

「お兄さん、服を着てくれないと嫌だ」

 まあ、それはそうだな。裸で少女と組み合う訳にはいかんな。


 俺は慌てて、小袖と袴を身に着ける。

「これでいいか?」

「うん、いいよ」

 捕まえたら終わりだろう。俺はそう思っていた。


 日が傾いてあたりは暗くなり始めていたが、明かりが要るほどではない。

「さあ、こい!!」

 俺の目の前から少女が消えた。

 次の瞬間には俺の右手は後ろに捻り上げられていた。イテテ。


「投げるなあ!!放せええ!!」

 大声が聞こえると俺の腕は自由になった。

 右手をぶんぶんと振る、手首に違和感がある。

 ふと見ると少女がいたずらが見つかったような顔をしてる。


「ゴンタ、大丈夫か?ケガはないか?」

 クーヤ殿が心配そうな顔で俺の手を取る。

「ああ、大丈夫だ。どうしたんだ?」


「この子の技は、関節を極めて投げる技だ。投げられまいとすると関節が折れる」

 背中に悪寒が走った。あのまま続けていれば俺の右手が折れていたということか。

「センセー、ごめんなさあい」

 少女がクーヤ殿に謝っている。


「まったく、俺以外にその技は使っちゃダメだった言っただろ。それに謝る相手が違う」

「おにいちゃん!ごめんなさい!」

 少女は髪の毛がひっくり返る勢いでお辞儀する。

「いや、俺が誘ったんだ。すまなかった。試合を止めてるとは知らなかった。申し訳ない」

 俺は少女とクーヤ殿に謝った。


「俺と同じ道を行くと決めたこの子には、誰に狙われるかもしれないので護身術を習わせたんだ」

 少女が泣きながらクーヤ殿の体に抱き着いた。

「ヒイ、解ったんなら良いよ。これからは気を付けて」

 少女はふとこちらを見た。涙はこぼれていなかった。

 泣きまねか?この子は大物になりそうだな。


 ******


 〇大広間 

 夕食は大広間で宴会だ。

 俺達は湯で体を拭った後、浴衣に着替えて大広間にやって来た。

 ぬるめの燗で濁り酒を飲む。酒と食事は日本が恋しい。

 キンキンに冷えたビールを飲みたい。


 しかも、俺の横にはヒイがベットリで、お姉さんが来てくれない。

 せっかく異世界に来たのに、チャンスもあるのに、お姉さんと仲良くなりたいよお。

 とヒイに分らぬよう忍び泣くのであった。


 その日はそのまま寝て、次の日は朝から剣の稽古を2時間ぐらい、カクタスには復習になるが、明日から飛龍将軍宅で稽古するのに基準をカクタスに合わせたいのだ。

 その後は昨日の続きで相撲の稽古、昼過ぎまでやって終わる。


 俺達が帰る準備をしているとゴンタがやって来た。

「クーヤ殿、本当にありがとう。これを受け取ってくれ」

 俺の指導を労ってくれたゴンタは皮袋を差し出した。

「これは、魔石!」

 中を見るのは失礼かとも思ったが、その感触につい中身を覗いてしまった。


「クーヤ殿は魔石を収集していると聞いた。村にある魔石を集めたがこれだけだった」

 袋の中には十個の魔石が入っていた。

「ありがとう。助かるよ」

 ゴンタと握手をした。本当に助かる。これでワンボックスとボートを用意できる。


 なんで車と船が必要かって、それは天帝の要望が無理難題だった時に逃げるためだ。

 いくら俺でも天帝の善性を頭ごなしに信じてる訳じゃない。

 それに冒険に出ることなれば仲間も集めたいし、人数の乗れる速く移動するものが必要だろう。

 何にしても準備しておくことは大事だ。


 ******


 〇鬼人族の神社 転移14日目

 鬼人族が崇拝するのは戦いの神だ。鬼人族5ヵ村のほぼ中央の丘に祭られている。

 神像もないのでどんな姿か分からないが、鬼人族には尊ばれているのか一帯はきれいにされている・

 今日もそうなのだが、春と秋に奉納相撲をやる。

 春は鬼人の健康と繁栄を祈り、秋は実りの礼をする。


 相撲に参加する選手は他の村の女性に求婚するのが普通だ。この婚姻には各村の血を濃くしないように仕組まれている。

 まあ、一回でも勝てばだいたい求婚は通るらしい。なにせ強さ命の鬼人族だからな。


 ただ、ゴンタの狙うシズカは優勝の上、自分の兄、つまり前回の優勝者に勝つことを希望している。

 それで俺に特訓を依頼したのだが、そのシズカの兄とやらを俺は知らないので、俺も勝つ保証はできなかったのだ。


 俺がここに来たのは、ゴンタの応援をするためだが、この国の風俗を知りたいと言うのもある。

 ちなみにヒイも当然のように付いて来ている。


 山すそに鳥居があり、それを潜ると20段ほどの石の階段がある。

 階段を登ると広い境内があり、その中央に屋根付きの土俵がある。

 左の建物は社務所かな。そして正面奥に神社がある。

 屋根は全部、茅葺だ。


 右奥に何やら看板のようなものがあり、人だかりができていた。

「組み合わせ表みたいだな」

「ゴンタさん何番目?」

 土俵の周りは場所取りされてるし、組み合わせ表も近くに行けない。

 人ごみの嫌いな俺にとっては地獄のような場所だ。


 帰ったら怒られるよな。

 そのうち神主が神社の正面の戸を開けて、祝詞を唱えだした。

 看板の前の人達が減ったので俺達は組み合わせを見に行った。


「えっとゴンタはどこだ」

 おや、ヒイが看板を見ずに俺を見ている。

「ヒイ、お前、字が読めないのか?」


「うーんと、・・・読めない」

「後で勉強しような。ちなみに試合は5番目だ。その後は人数が半端でややこしい」

「・・・わかったあ」

 ヒイがシュンとしているのは珍しいので、写真を撮っておきたいくらいだ。


 相撲は立ち見だったが良く見えたので良しとしよう。

 ゴンタは1回戦、2回戦と無難に勝ち進み、3回戦は人数の関係で不戦勝、準決勝も勝って、いよいよ決勝戦。


 決勝戦は2mの大男が相手だ。

 ゴンタは立ち合い、相手の下手を切ろうとしたが失敗、上手も手が長いので簡単に取られてしまった。

 相手のすごい引き付けを我慢するゴンタ。


 ヒイが力が入って両手を握ってる。そんなに心配しなくてもゴンタは相手の隙を待ってる。

 相手が疲れて引き付けを緩めた瞬間、相手を上手投げで投げて勝った。

 ゴンタが俺を見つけてニコッと笑った。俺も笑い返した。

 ヒイは両手を挙げてゴンタの名を叫んでいる。まあ、周りも結構うるさいので目立っては居ないがな。


 ゴンタは土俵を下りて観客の中に入って行った。

 あれがシズカさんかな。髪の長い清楚系の美人さんだ。

 横に座っていた男が立った。身長はゴンタより少し高い。隣の気の荒そうな肉感的な女がゴンタに食って掛かってる。


 多分立った男がシズカさんの兄さんなのか、あの女は誰だろう。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

次回はゴンタの求婚の行方とこれからクーヤの仇敵となる組織が出てきます。

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