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異世界最強の転移者と15人の美少女剣姫  作者: 西村将太郎
第1章 天都へ
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1-3 黒狼村の秘密

ご愛読、ありがとうございます。

今回は前回の続きです。村長の秘密をカクタスが暴きます。

 ヒイと従者契約をしてしまったトーヤ、さてどうなるのか


 〇転移十日目 ヒイ宅前

 夜の間に俺の寝床に潜り込んだヒイ。俺はうかつにもこの孤児を愛おしく思ってしまった。

 そうしたらナビさんがいきなり従者契約が結ばれましたなんて言ってくる。

 このままヒイを見捨てる訳に行かなくなった俺はとりあえず飛龍将軍の家に連れていくと決めた。



 俺はカクタスに言って、朝一番からヒイの引っ越しの準備をすることになった。

 ヒイは従者になったからか、飛龍将軍の家に行くことを了承しており、魔獣退治も今日で終わりなので、急いで準備しないと。


「さあ、家を片付けるぞ」

「無理だよ。お父さんの荷物がいっぱいあるし」

 家の中に入ると奥の部屋にシュバルツさんの荷物が積んである。


「お父さんの荷物も持っていくの?」

「うん、でないとかわいそうでしょ」

 その時、俺は一つのアイデアを思いついた。


 まずはヒイの父親の荷物を亜空間収納庫に入れた。

「あ、お父さんの荷物・・・」

「心配するな。収納庫に入れただけだ。今度はお前の荷物を集めろ」

 ヒイはコテンと首をかしげている。そのしぐさが可愛い。


 俺は荷物を一度出して、もう一度引っ込めて見せた。

「これで分かったろ。何時でも取り出せるから。今度はヒイの荷物を入れるぞ」

 意味が分かったのか、急いで自分の荷物を集めるヒイ。

 ヒイの荷物も収納に入れる。


「よし、外に出るぞ」

 俺はヒイと外に出る。

「センセー、今度は何をするの」

 ヒイは、俺の行動が突飛すぎて少し混乱しているようだ。


「今度は家を収納するから、見てろよ」

 俺はヒイの家を丸ごと収納する。収納スペースはオーストラリア大陸くらいあるんだから、まだ収納能力の1%も使ってない。

「家が無くなっちゃった」


「亜空間収納に入ってるからいつでも出せるよ」

 俺はヒイに説明する。


「なんでお父さんの荷物や僕の荷物、家を分けて収納したの。いっぺんに収納したら楽だったのに」

 ヒイは収納に一度に入れなかったことを不思議がっていた。

 そこに気が付くとはなかなか頭がいい。


「それはだな。今度、取出し易いようにフォルダを分けたんだよ」

「解んない」

「えーと、出すときにお父さんの荷物にラベルを付けておけば、その中からお父さんの品物を探しやすいだろ」


 分かって貰えただろうか。コンピュータ用語を解説するのって、難しいよね。

 ヒイは無理やり納得したようだ。


「家はどうするの?」

「うん、俺はこの世界を見て回りたい。お前が従者になっただろ。野営するとき家があれば便利だなと思ったんだよ」

「ふーん・・・」

 まだ良く解ってないようだ。


 荷物の整理が終わったので、村長の家に戻るとカクタス達も用意が終わったのか、集合していた。

「荷物はどうした」

 カクタスに聞かれたので収納に入れたと言っておいた。

「じゃあ、見回りに行こう」


「お父さんの刀と僕の弓矢を出して」

 ヒイが俺の服を引っ張る。

「お前ついてくる気か」

「うん」


「ついてくるなら俺の言うことを聞けよ。昨日だってお前が逃げてくれないから、刀を犠牲に熊の突進を止めたんだからな」

「解ったよ」

 そう言ってヒイはニシャっと笑う。あれ、なんで俺付いてくるのを許してるんだ。


 どうもこの子といると調子が狂う。

 収納庫から朱鞘の刀とヒイの弓矢を出す。


「ほら、刀は貸して貰うからな」

「刀はセンセーにあげる」

「いいのか?」

「うん」


 俺は弓と矢をヒイに渡し、刀を腰に差した。

「あれ、弓が弱い・・・ほら」

 ヒイが軽く弓を引くとバキという音とともに弓が折れた。

「ええーっ!!」

「そんな馬鹿な!」


 二人で驚いていると頭の中で声がする。

『ヒルダは身体強化により3倍の力を出せます。もちろん、骨や筋肉も強化していますので安全です』

 そういや身体強化を共有するとか言ってたな。


「ヒイ、お前は俺の従者になったことで、力が3倍になってるんだ。心配しなくていい」

「そうなのかあ。でも武器が無くなっちゃった。・・・そうだ、お父さんの弓矢を出して」

 俺は収納庫からシュバルツさんの弓矢を出してやる。


 俺も確認するが結構強い弓だ。普通の人はまず引けないだろう。

 さすが英雄と言われるだけのことはある。

 ヒイもさすがに引けないんじゃないかな。


「かなり強いよ。無理じゃないか?」

「そんなことないもん」

 ヒイは弓を引いてみる。


 眉間にしわが寄る。


 頑張れもう少しだ!


 引けた!


「引けたことは引けたけど、狙うのが難しそう」

 ということは引いた状態を保持するのが難しいってことか。

 前にユーチューブで見たコンパウンドボウなら同じぐらいのが使える。

 刀の代わりに買ってやろう。


『ナビさん、ヒイの力に合うコンパウンドボウを買ってあげて』

『すみません。ちょうど良いものは組み立て式となっております。すぐには間に合いません』

 組み立てには1時間はかかるだろうとのことだ。とりあえず買って収納庫に入れといた。


「仕方がない。今日はそれにしときなさい」

「はーい」


 もちろんカクタスにはメッチャ嫌がられたが、何とかヒイを連れて見回りに行くことになった。

 昨日倒した魔獣が熊を除き9匹なので。目撃された数から考えて後十匹は居ると思われるが、熊から逃げたことも考えられる。今日の見回りで居なければ安心できるだろうと結論するに至った。


 昨日と同じ場所を歩いていく。

 半分くらい歩いた時

『約70m前方に生物の匂いがします』

 70m先の匂いだとそんなもん感じないぞ。ナビさんどういうことだ?。


 後ろでヒイが弓に矢をつがえる。

 ずっと先で何かが動いた気がする。

 ビイイン!!

 矢が放たれた。


「当たった」

 ヒイが走り出す。

「待ちなさい。一人で動いちゃだめだ!」


 当たったのか、俺には見えない。

 そう考えた瞬間だった。俺の眼に腹部を矢に貫かれた野兎の姿が飛び込んできた。


『ヒルダの視界を再現しました』

 ヒイには見えているのか!!これが!


 ヒイを捕らえて手を繋いで野兎に近付く。

「首を狙ったのにお腹に当たっちゃった。やっぱりお父さんの弓は使いにくいよ」


「当たったというのか。ヒルダ、お前すごいな」

 ようやく野兎の姿を捕らえたカクタスがヒルダを褒める。

 現代の競技用の弓矢ではない。そんなに精度は良くないはずだ。


『従者契約の効果もありますが、ヒルダ自身の弓矢の能力と探索能力は飛びぬけています』

 ナビさんも大絶賛である。

 なかなか従者契約も役に立つようだ。これから従者を増やせれば相当な勢力になれるかも。


 結局この見回りの成果は魔獣化していない野兎1羽だけだった。

 戻った俺達は昨日の魔石と熊の死体を受け取った。


 昼食を取り、帰る準備をしているとカクタスが離れて行った。

 二人の兵士はそれを承知しているようだった。

 ちょっと緊張した空気が流れている。

 カクタスは何かをしに行ったのだろうか。


 ヒイがとことことカクタスの後を追っていく。子供の動きに兵は気を留めない。

『ご主人様、ヒイが聞いたことを中継します』

 なんだって、ヒイが聞いたことを俺が聞けるというのか。

『はい従者通信の一機能です』


 カクタスと村長しかいないようだ。二人から見えないところにヒイがいる。

『村長、ちょっといいか』

 カクタスが村長を呼んだみたいだ。

『なんでしょうか』

 村長の声に緊張が感じられる。


『シュバルツさんの件についてだ』

 カクタスは若いのに毅然とした態度だ。これが貴族というものか。

 続けて話す。


『父上はシュバルツさんの死について疑問を持っておられる。もう一度事件について説明せよ』


『はい、あの日、魔獣の群れが村に入ったと連絡が来て、シュバルツはヒルダを私の元に預けて、駆け出していきました。私達が応援するため人を集め、現場に行った時にはすでにシュバルツは死んでおり、魔獣もいませんでした』


『シュバルツさんが出てから、応援が駆け付けるまでの時間はどれくらいだ』


『5分もかかっていなかったかと思います』


『俺達が調べたところ15分ぐらいかかっている』


『いえ、それはどういう意味ですか?』


『お前はシュバルツさんも「魔物に囲まれては勝てない」と見ていたようなことを言っていたな。なぜ知っている』

 そういやそんなことを言ってたな。


『そ、それはシュバルツほどの者が死ぬのですから、それなりの状況に追い込まれたのかもと』

 シュバルツさんは村長に見捨てられたのか。


『シュバルツさんは駆け出して行く時、「何人でもいい、すぐに応援を出してくれ」と言っていたと証言がある。お前は見捨てたのではないのか』

 村長の返事がない。カクタスもしゃべらない。


『申し訳ありません。嘘をついていました。ワシはシュバルツが駆け出したとき、槍を持ち、すぐに応援を集めろと指示を出して、シュバルツの後を追いました。すぐにシュバルツが見えるところまで来ましたが、シュバルツはすでに魔獣に囲まれていました。

 そこにワシが行けば助けられたのかもしれません。ですがワシは怖かった。足が竦みました。

 そして、戻って応援をまとめてからシュバルツの元に行ったのです』


『間に合わなかったという訳か・・・』

 うーん、一般人である村長さんが、まともな判断が出来なかったのは、仕方がないと言えば仕方がない。

 カクタスはどう判断するのだろう。


『戦闘に対しては軍人ではないお前に責を負わせる気はない。しかし嘘の報告をして己の責任を逃れようとしたことは許しがたい。いずれ飛龍将軍より沙汰があろう』


 うん、これってヒイが聞いてるんだよね。彼女は大丈夫なの。精神的にも。

『はい、身体強化で彼女の精神は大きな乱れはありません』


 ヒイが戻って来て、俺に抱き着いた。

 俺の服に顔を擦り付けている。泣いているのかもな。

 俺は優しく頭を撫でてやる。俺にはそれくらいしかできないから。


 俺達は村の人達に挨拶をして帰ることとなった。

 この村に来て俺は多くの体験をした。


 初めて魔獣退治をした。命の危険もあったけどな。

 魔石をゲットしてゴーレムバイクが作れるぞ。


 初めての人間の従者を得られたこと。

 従者にするまでヒイのことは少しうっとおしかった。

 それが今はメロメロだ。


 最後に貴族以外の人の暮らしを知った。

 想像以上に貧しいし、貴族に頭が上がらない。あのやさしいカクタスでさえあの調子だ。


 俺はこの体験を通して、この世界に真摯に向き合うようになってきた。

 天帝様に会うまでにもっとこの世界を知り、何が出来るのかを考えなければならない。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

次回はゴーレムバイクや鬼の姉弟、不思議な少年まで行けるかな?

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