3-20 展示飛行
ご愛読、ありがとうございます。
今回はいよいよ展示飛行の開始です。
ライヤを迎えに来たサル座の構成員を捕まえたクーヤ。天帝とライヤのためにサル座を襲撃するか、危険を避けてそのままにするか悩むクーヤだった。
〇帝城 天帝執務室 転移110日目
その日の午後、俺はどうするか決められずにいたが、明日の展示飛行の件で天帝様に呼び出された。
席に着くとさっそく。
「帝城に侵入して飛行機を破壊しようとした奴が居たそうじゃな」
「はあ、それについてはあの西域の横領事件と関連していまして・・・」
俺はライヤとサル座の事を伝えた。
「ふむ、それでおまえはどうするのじゃ?」
「それを相談しようと思いまして・・・」
「うん、お前が相談じゃと、何か怖いな」
「一つは横領したとされる人物の娘を預かっておりますが、この娘の一族を学校の教官として雇いたく思います」
「ふむドワーフじゃったな。ドワーフはモノづくりに長けていると聞く、それはかまわんが」
「秋には教官としての教育を施し、炉の建設や設備作りにも関わらせたいと思います」
「ふむ、9月ぐらいにはお前の家や教官たちの宿舎もできるじゃろう。それより明日の展示飛行じゃが・・・」
俺と天帝様は展示飛行の時間・コースを詰めた。
「それと近衛と警らから護衛を出す。100人ぐらい居れば良いじゃろう」
「そんなにですか」
びっくりした。天帝様はこのイベントに賭けているのだろう。
貴族派との一発逆転を。
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〇帝城 宿泊所
俺はライヤをドワーフの村に送って、ついでに警らに挨拶して戻って来た。
「センセー、お帰り」
「ご主人様、おかえりなさいませ」
「ただいま」
俺は抱き着いてきた二人の頭を乱暴に撫でる。
他の従者はヒイとミヤに遠慮があるのか、出迎えは消極的だ。
二人は先輩だからな。
「ライヤの村はどうでしたか?」
「ああ、いい感触だった。職人気質が多かったから、いい先生になれると思う」
ライヤは職人たちには、アイドル的存在だった。
ライヤに校長をさせようかな。
俺はそのまま亜空間のゲートを開き、いつもの亜空間に入る。
そこにはサル座の三人を閉じ込めてある。
俺はサル座を解放することにした。産業革命を実施するうえであまり恨みを買いたくない。
亜空間の中は洗濯ものも取り込んであるし、簡易トイレも置いてある。
飛行機の残った材料がかなり置いてあるけどな。
まあ、居住性は悪くはないだろう。
「どうだ、居心地は、君達を開放するのは展示飛行が終わってからになる。敵に情報を与えたくないからね」
「解放!?ここはどこですか?」
うん、中年女性が若い女性に変わってる?
「えーと、君は誰だい?」
「あー、ごめんなさい」
ふところから肌色の物を出すと顔につけた。
「ひぇっ!」
あっという間にさっきの中年女性だ。
「継ぎ目を直さないとすぐ剥がれますが、こういうことです」
また元ぼ顔に戻った。
「いやあ、すごいねえ。初めて見たよ。いやまったく驚いた」
テレビのアニメで怪盗の孫がやってたけど、本物見るのは初めてだ。
彼女の顔がみるみる赤くなる。
「ど、どうしたの?」
「いえ、褒められたことがなかったので、恥ずかしかったのです」
頬に手を当て恥ずかしがる姿はさっきまでと違い、幼さを感じた。
「それより私達を解放するって本当ですか?」
「ああ、もちろん。無駄な人殺しはしない。君達には話せることは話してもらったしね」
「クーヤ様!」
なんか感極まったように胸の前で両手を組んで俺を見つめてくる。
「あなたは山賊を全滅させたり、反逆者を倒したりしたと聞いています。なぜ、私達に優しくしてくれるのですか?」
「ああ、あの頃はあまり余裕もなかったし、旅の途中だから捕まえても預けられる人もいなかったからな。できれば人は殺したくない」
「それでイヌ座の人達も治療してくれたんですね」
「ああ、知ってたの」
俺は彼女がなぜこんなことを聞くのか不思議だった。
「クーヤ様、私の名はキメイと申します。サル座の頭領の娘です。私は殺しはしたくないのです。できましたら私達を雇ってくれませんか?」
「おいおい、サル座にはたくさんの人が居るんだろ。いくら俺でもそんな人数を雇えないよ」
「いえ、都度、諜報の仕事を貰って、その報酬を受け取る形で構いません。私達は各々普通の仕事を持っています」
「しかし、干支座とは敵対関係にあるしな」
「干支座は産業革命が成れば、立ちいかないと聞いています。私は何時までも昔の役割にこだわる頭領や兄を裏切るつもりです」
「そうか、そこまで言うなら構わないよ。秋になれば普通の仕事も出来るから必要なら言って」
「本当ですか。ありがとうございます。ちなみにどんな仕事ですか」
嬉しそうにもじもじするキメイ。
「鉄の加工、魔道具作り、洋服作り、魔法研究、食事作り、掃除なんかの雑用なんかかな。多種多様で女性も働いてもらうつもりだ」
「そうですね。干支座と離れると仕事が減りそうなので、お願いするかもしれません」
「来年の春からの仕事も多いから、また話し合おう」
「あ、」
「どうかしたかい?」
「私の事、そんなに信用して良いのですか?」
「ああ、大丈夫。信用できるようにするから」
「???」
クーヤはキメイを従者通信と脳内地図の限定従者にするつもりだ。
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〇学校建設予定地 転移111日目
いよいよ展示飛行の日を迎えた。
晴天で風も緩やかで飛行日和と言って良い。
近衛と警らが警戒しているので、さすがに悪さを仕掛けてくる奴はいないだろう。
「よう、久しぶりだな」
誰かと思えばカクタスだった。
こちらに来てからもかなり腕を上げている。
「かなり腕を上げたみたいだな」
「いやいや、オタクのお嬢さんたちにも勝てません」
まあ、うちの従者たちはインストールを使ってるから、インスタントか、レトルトみたいなもんだ。
仕事中だからか、少し話して離れて行った。
今度はマシロがライヤとドワーフの老人を連れて来た。
「警らに止められていたから連れて来たわ」
「マシロさん、ありがとうございました」
マシロは手を挙げて答えるとみんなのいる方に去って行った。
「クーヤさん、おめでとうございます」
「まだ飛んでないよ。でもありがとう。今日はハンマーを持ってないんだね」
そう言ったら、真っ赤になって俯いてしまった。いや申し訳ない。
「姫様がご面倒をお掛けしたのに、我々の仕事まで用意していただけるとは、本当にありがとうございます」
老人はドワーフの村で長老的な存在で族長を失った村でライヤを助けている。
ライヤを送って行った時、今回の騒ぎを知って、ライヤに説教をしていた。
俺は村を訪れた時、村の真面目で素朴な雰囲気に感動し、仕事の話を振ってよかったと思った。
そうこうしてるとアカネが近付いてきた。
「そろそろ時間だ。用意をしてくれ」
俺はライヤたちと別れ、ハヤブサ号に乗り込んだ。
「ヒイも乗る」
ヒイが俺の後ろの席に滑り込んだ。
「こら、ひい、邪魔したらダメでしょ」
マシロに怒られるが、ヒイは動じない。
「ヒイが乗ってる方が、見物人に受けそうだから許してあげて」
「もう、クーヤさんはヒイに甘いんだから」
はい、自覚しております。ごめんなさい。
「じゃあ、行くぞ。車輪止め(チョーク)外せ!」
右をジュレイが、左をドーテが外す。
「エンジン始動!」
言っても魔力を注ぎ込むだけだ。
機体の点検はアオイとミヤがやっている。
最初から発進位置に置いてあるので移動はしない。
「フラップ最大」
「発進!」
魔力を込めるとプロペラの回転が一気に上がる。
従者達ではまだ離陸時の魔力は出せないので、当分は俺が操縦することになる。
機体は徐々に加速していき、翼が十分な揚力を発生する。
俺が操縦かんを引くと機体が浮き始める。
このまま100mほどの高度まで上昇する。
展示飛行は機体を見せるのが目的なので、あまり高くは飛べない。
低速飛行で失速しないようにフラップは中位置にする。
失速と言うのは翼を流れる気流が剥離して起こる。
気流が剥離すると揚力を失い、最悪錐揉み状態に入って墜落してしまう。
元代の戦闘機などは推力が大きいから、失速状態からでも簡単に建て直せたりする。
まずは天都の外郭を飛ぶ。低い丘を越えると、天都の外郭が目の前一杯に広がる。
「すごい、家がマッチ箱みたい」
後ろでヒイがはしゃいでる。
前回は飛行機があることを市民に秘密にするため、山の方ばかり飛んでたからね。
外郭の上に来ると市民が外に出て見上げている。
「手を振ってもいい?」
「ああ、良いよ。振っておあげ」
ヒイが手を振ると、地上の人も振り返してくれる。
外郭に沿って時計回りに旋回を始める。
徐々に内側に入って行くと内郭に達する。
基本外郭は庶民、内郭は貴族が住む。
貴族は子供しか手を振ってくれないみたいだ。
ヒイも手を振るのが疲れて来たみたいだ。
もう30分くらい振ってるからね。
もう帝城が大きく見える。
流石に大きい。
帝城の上は飛ぶなと言われてる。
天帝様を足げにするなと言うことだろう。
帝城の周りを何回か回って展示飛行は終了しよう。
帝城のどこかの窓から天帝様が眺めているのだろう。
市民の反響は大きかった。
多分明るい未来を見せられたのではないかと思う。
まあ、あとの宣伝は天帝様に任せて俺は帰るとしよう。
ヒイが静かだと思ったら、いつの間にか眠ってる。
だいぶはしゃいでたから、疲れたんだろう。
学校建設予定地がまじかに見えて来た。
俺の家や学校の寮の基礎工事がほぼ終わってるのが見える。
こっちが終われば、いよいよ学校の建設が開始される。
俺の力でこの国の文明を一気に数百年進めるのだ。
おっと、またフラップを降ろすのを忘れるところだった。
俺は歴史に名を遺す偉人と呼ばれるかもな。なんかくすぐったい。
いや、功績はすべて天帝様に渡さないとな。
俺は依頼されただけだからな。
もう地面がすぐそこだ。
魔力を絞って出力を下げると車輪が地面に着く。
数十mランディングして、そのままみんなのいるところまで走っていく。
ワンボックスを止めた位置まで行くとみんなが寄って来た。
マシロが、アカネが、アオイが、ミヤが、ジュレイとドーテも。
いよいよ産業革命を始めるぞ。
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次回からクーヤ達は産業革命に取り掛かります。




