3-19 どうしようもない
ご愛読、ありがとうございます。
ライヤの依頼を聞くとコウメイ様の頼みとも重なる。
ライヤはクーヤに私達を助けてと頼んだ。
〇帝城宿泊所 転移110日目
「まず整理しよう。君達の置かれている立場とどうなりたいかを言ってくれ」
宿泊所の食卓の向かいに座るライヤに対して俺は、この依頼を受けるにせよ断るにせよ、詳細を知っておきたかった。
天帝様から俺が受けている依頼は、産業革命を起こして信帝国の文明を進めることだ。
そこには黒幕と戦うことは含まれていない。ただ天帝様の兄であるコウメイ様からは期待されているように思う。
ライヤの依頼を受けることは黒幕と対峙するかも知れず、内容を吟味する必要がある。
いままで干支座の襲撃などで従者達を戦わせてはいるが、あくまで防衛のための戦いであり。従者が俺のために戦うことを肯定しているとしても、進んで危険な目には合わせたくない。
ライヤはしばらく考えて話し出した。
「私はあなた達に迷惑をかけました。警らか近衛に突き出してください。でもドワーフ族は今仕事を取り上げられ、住む場所まで奪われようとしています。
どうかみんなを助けてください。
それとできれば父上の事件の真実の解明をお願い致します」
仕事は学校内でいくらでもある。ドワーフって生産の職人ばっかりだよね。
住む場所については連座制は普通家族だけだし、突っぱねれば、これは大丈夫だろう
横領事件の捜査って俺の権限じゃ難しいよね。って言うか黒幕との直接対決にならないか?
俺が悩んでるとドーテが手を挙げた。
「なあ、旦那。こいつの事、助けてやっちゃあ貰えねえか」
俺は深夜の事なんか知らないから、ドーテが族長の娘と言うシンパシーを感じてることは知らなかった。
ドーテはちょっと横に置いておかれる。
「俺は原則として依頼には相応の報酬を要求する。俺だってこの子達を養っているんだ。特に横領事件の解明は闇の権力者との対決が含まれてくるだろう」
「わ、私に差し出せるものは、この身しかありません」
ライヤはそう言うが、この身と言っても警らに捕まったら犯罪奴隷だろう。帝城侵入と相談役襲撃が、どれほどの罪になるか知らんが一生強制労働だろ。
ちなみにこの世界には刑務所と言う優しい施設はない。強制労働か死刑だ。
ほらそんなこと言うから、うちのお嬢さんたちが怖い顔で睨んでくる。
「まあ、生産職の仕事なら秋ぐらいから学校でいくらでもあるし、立ち退きは君を追い詰める策略で効力はないと思う。まだ言ってくるなら相談に乗ろう。
だからここまでの報酬は労働力の提供だ。もちろん、ちゃんと給金も払う。
ここまではいいか?」
「はい、ありがとうございます」
俺は間髪置かずに行った。
「横領事件については天帝様でも持て余してる問題だ。情報収集に失敗すれば天都から逃げ出すことになるかもしれん」
「クーヤ君、一つ気になるのだが、そのライヤさんだっけ、この帝城から脱出はどうするつもりだったんだ?」
アオイが名探偵張りにどや顔をして俺に尋ねた。
「そうか、まだライヤへの指示系統への繋がりは斬れてないかも」
ライヤに指示した人物は黒幕への事の成否を報告するはずだ。
「はい、潜入したところで今日のお昼前に落ち合う手はずになっています」
ライヤの返答に黒幕への道筋が出来たと感じた。
「しかし、黒幕への道筋をたどることは危険も伴う。俺はコウメイ様に投げてみるつもりだ」
やはりみんなを危険な目に合わせるのは本意ではない。
「旦那、俺は嫌だ。あいつらにはやられっぱなしだ。目にもの見せてやろうぜ!」
「そうだな、一方的に攻められるのは気に食わん」
「センセー、黒幕なんてやっつけようよ」
「ヒイの言う通りです。相手はご主人様を侮っています」
「圧政を敷くものを放置してはいけません。戦うことも考えてください」
「その黒幕とやらが気に食わん。陰に隠れてこそこそと」
「クーヤ君。ここまで言われたら戦うしかないよね」
はあ、なんでこんなに好戦的なの。
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〇天帝執務室
俺はコウメイ様を呼び出して、向き合っていた。
もちろん、天帝様も宰相も朝議中だからいない。
朝やるから朝廷・朝議なのだから。
「そうか飛行機の破壊をな。それが黒幕の指示と考えるのだな?」
俺は昨日の夜からの事を話していた。
もちろんライヤは保護すると伝えた。
「はい、まず間違いないと思います」
「それで指示のルートをたどると言うのだな」
「はい、それでお力を貸して頂けないかと?」
これは天帝様への敵対者への攻撃になる。コウメイ様も利益になるものだ。
コウメイ様は顔を曇らせる。難しいことを言っちゃったかな。
「申し訳ないのだが、私の使える駒が脳筋な奴等か文官しかいないのだ。探偵のような仕事が出来るやつがいないのだ」
そうか、そうだよな。探偵のような仕事が出来てたら、ここまで追い込まれてないよな。
かといって従者達にそんな役目を負わすのは嫌だ。ミヤ辺りがやらせろと言いそうだが。
「コウメイ様は黒幕の正体は分かってますよね。教えていただけませんか?」
コウメイ様は周りを見回して誰もいないのを確認すると声を落として言ってくれた。
「天都軍と干支座を使って庶民を締め上げているのは軍務大臣だ。
他に漏らすなよ。奴は俺達が気付いていないと思ってる」
うん、軍務大臣はこれまでの事を考えると気が短くて小さいみたいだ。
天帝様達が正体に気付いてると知ったら命を狙いかねないな。
俺はプレゼンの時に会ってるはずだけど、あまり覚えてないなあ。
「だから、調べるなら指示ルートより悪事の証拠を探ってくれ」
「そんなものがあるのでしょうか?」
今までのいきさつから見ると実行犯は死んでしまうし、指示も口頭が多い。
「最低でも干支座は自己保身のために証拠を残しているだろう。軍務大臣は小心だから証拠は残さないだろうな」
えー、悪代官は証拠を手文庫に入れて、床の間に置いとくんじゃないの?それをふくよかな渡世人が盗んで、ご隠居が「これが証拠の書付、〇さん、懲らしめて上げなさい」それでチャンバラやって、〇籠を出してへへーとやる様式美は異世界にはないんだね。
ついつい子供の頃、再放送を何回も見た、越後の縮緬問屋のご隠居の話を思い出したよ。
帝城の外まで探索範囲を広げる気はないけど、ライヤのお迎えを捕まえてみましょうかね。
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〇帝城 民部省 農政局 第三者視点
信帝国の政府組織は各大臣の下に八つの省があり、その下に細かい局がある。
ここは天帝の所領の税・戸籍・農政などをつかさどる民部省。
つまり天帝の収入を管理する省である。
そこの下部組織、農政局、と言っても大勢の局員が働いている。
そこの大勢いる主任の一人が呼び出される。
小さな会議スペースには中年の女が座っていた。
「主任様、ご厄介をお掛けします」
女は立ってお辞儀をする。
この女は郊外の豪農の主人とされていた。
「二日連続は拙い。気を付けてくれ」
主任が座ると、女の座る。
「今年の麦は良くできております」
「分かった、調べておく」
麦を入れた袋がチャリと金属音を出す。
主任は中身も確認せずに懐に収める。
別に気にする様子はない。他の人間もやっていることだ。
女は紙を差し出す。ここを訪れた証拠のハンコを貰う。
これで帝城を出るとき、疑いを掛けられずに済むのだ。
女は主任に礼を言い、局を出る。
馬車に乗り、約束の場所に向かう。
昨日の場所のかなり手前で馬車を止め、隣に座る護衛の男にライヤが待っているか確認させる。
男は音も立てずに走っていく。
男は隠れて立つライヤを見つけ、周囲を伺ったあと、女に合図を送る。
馬車は静かに走り出す。
女官服のライヤが俯いて待っている。
馬車が止まった瞬間であった。
庇の影から飛び出したアカネが、御者に飛び掛かる。
ライヤが忍び込んだ窓から飛び出たミヤが、護衛の男に当身を入れ無力化する。
馬車の扉を開けたライヤ、いやライヤじゃないヒイだ、は手首を獲った。
それらのことが同時に一瞬で起こった。
中年女はヒイに手首を極められ、身動きできない状態にある。
「お前達はクーヤの眷属か?」
中年女はそう言うのが精一杯だった。
中年女と御者、護衛は縛り上げられた。
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〇帝城宿泊所
俺は3人を宿泊所に連れて来た。
一応、ライヤはドーテを付けて寝室に入れてある。
「何よ、ここへ連れてくることないでしょ。天帝様に頼んで部屋を貸して貰いなさいよ」
アオイが俺に怒って来た。
「いやあ、近衛に見つかると良くて殺されるし、下手するととんでもない拷問とかされそうだしさ」
三人が身震いしてるよ。可哀そうに。
「スパイならそれぐらい訓練されてるんじゃないの?」
アオイは厳しいな。
「そんなわけないだろう。この人達は民間の組織だよ。やくざと変わんないよ」
中年女がビクッと肩を震わせた。やっぱり怖がってるかな?
「君達がライヤを使って、飛行機を壊そうとしたのは分かってる。まず君達の所属を教えてくれ」
あー俺ってこういう役は嫌なんだよな。
「話したら、この二人とライヤさんを解放してくれますか?」
おお、この中年女は頼れる上司みたいじゃん。羨ましいぞ。
「お嬢!、俺達だけ帰れるわけがねえ!やめて下せえ」
この二人の男は中年女の部下なのか。え、お嬢・・・て感じじゃないよね。
「それでいいなら、解放してもいいけど」
「お嬢、騙されちゃだめだ!」
「おだまり!私が話します。どうか助けてください」
ああ、胸熱くなる展開だな。
ジュレイが剣を抜いて御者をやっていた男ののどに突き付ける。
「ジュレイ!やめろ!誰かの命が掛かってるならともかく、今はいい」
ジュレイは剣を引っ込め、くるりと回して鞘に入れる。
「私達は干支座の中のサル座、主に情報収集や暗殺を任としています」
中年女は話し始めた。
「飛行機を壊せとはだれの指示だ」
「サル座の頭領から指示されました。頭領はあの方と呼ばれる人に指示されており、詳細は分かりません」
フーン、何にも分からんじゃないか。
「頭領を捕らえれば分かるか?」
「さあ、頭領がどんな情報を持っているか知りません」
「どうする?」
皆に聞いてみる。
「天帝様に頼まれた訳じゃないんでしょう。この女だけ差し出せばいいんじゃないでしょうか」
マシロが真っ先に言う。
「頭領をひっ捕らえよう」
アカネだ。
「私もアカネさんと同意見です」
ジュレイだ。
ヒイとミヤは首を傾げてるのでパスだ。
「サル座に突っ込めば黒幕が警戒するし、私達がやることじゃないと思う」
アオイが言った。
2対2か。ドーテは突っ込む方だろうな。ああどうしよう。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
とりあえずライヤの向かえに来たサル座を捕らえたクーヤ。




