3-18 ライヤの決断
ご愛読、ありがとうございます。
今回は捕らえられたライヤがクーヤに希望を見出します。
帝城に潜入したドワーフ族の族長の娘ライヤは、クーヤ達との戦いで力尽き捕縛された。
〇帝城宿泊所 転移110日目 ライヤ
私は目覚めた。周囲は暗黒だった。
手足が動かない。縛られてる?
うう、このままだと大変なことになる。
周囲には寝息が聞こえる。
私はどこにいる。
家ではなさそうだ。
もうダメだ。
「私を自由にしろぉ!!」
叫んだ。周囲でざわめきが起きる。
そうだ。私は帝城に潜入したんだ。
それで見つかって・・・その後の記憶がない。
「うっせいな。静かにしろい」
乱暴な言葉が振って来たが、まったく何も見えない。
「我慢が出来ないのだ。早く自由にして欲しい」
「うん、なにが?」
ライトの魔法を使ったのか。周りが明るくなる。
「その漏れそうなのだ。早くしてくれ」
自分がベッドの上に縛られていることが分かった。
隣にいるのは褐色の肌をした娘だ。
「何が漏れるんだ」
こいつはちゃんと起きているのか?
「おしっこだよ。ここでしてもいいのか!」
「え、おしっこ?ちょっと待って!」
これだけうるさくしているのに誰も起きない。
仕方ないように褐色女はベッドに固定しているロープを外し、両手を手首で縛ったままで、後は腰ひもを付けた。
そのままトイレまで連れて行かれた。
「下着下ろして、そこに腰かけて、用を足すんだ」
褐色女が指さしながら指示をする。
「これ私のパンツじゃない」
いつの間にか私のゴワゴワパンツが、履いてるのが判らないくらい質の良いものに変わってる。
「お前が臭かったからお前と来ていた服は洗った。朝には乾いてるだろう」
用を足しながら、褐色女の言うことを聞いていた。
私は全身洗われたらしい。どうりですっきりしていると思った。
用を終え、パンツを上げようとしたら褐色女に怒られた。
「そこの紙でチャンと拭け!」
白く円筒形の物を指差す。
私が訳が分からず、戸惑っていると褐色女がイラついた顔で、白い円筒形の物を持って引っ張ると、なんと!向こうが透けそうな薄い紙が!それをクルクルと器用に何重かにすると私に差し出してきた。
「違う!大じゃない」
私は褐色女に逆らって紙を突き返した。
「違わない。前を拭くんだ。小便臭くなんだろうが」
こいつは何を言っているのだろうか。
「なぜ、そんなことを言う」
「うん、えーとだな。旦那に言われたんだけど・・・確か、そうだ、放って置くと目に見えないくらい小さな虫が湧いて、体に悪さをするんだ」
「そ、それを信じているのか?」
そんな話は聞いたことがない。こいつはクーヤとか言うやつに騙されてるんじゃないか。
「当たり前だ。旦那の言うことに間違いはない。
旦那はもうすぐすごいことをする。
平民が豊かになって幸せに暮らすんだ。
それには、えーと・・・そうだエイセイに気をつけて、病気になりにくいように・・・あとなんだっけ」
暫く考えて言った。
「とにかく小便臭いのは病気のもとだ」
こいつも解ってないな。これ以上の言い合いは不毛だ。
前を拭いてパンツを上げる。
クーヤが本当に平民の事を考えているなら、私のやってることは悪だ。
どうする?
その時、褐色女が柄杓に水を入れて私に話しかけて来た。
「手を洗え」
手を出すように言って来た。
「なんでだ」
「手をきれいにしとかないと俺達が触れねえ」
「はあ、やなこった」
私はわざと逆らってやった。
「あのなあ、俺達の手は何のために有ると思ってやがる」
「なな、何を言っている。生活したりするためだろう」
多分この褐色女は違うことを言ってるけど分からない。
「俺達女の手は赤ん坊を抱くためにあるんだ。赤ん坊にその虫を付けちゃいけないんだよ」
さっき言ってた見えない虫のことか。
「手を洗わないぐらいで病気になったことは無いぞ」
言ってやったぞ。どうだ。
「馬鹿だなあ。俺達は大きくなるうちに虫に強くなっていくんだ」
「じゃあ、かまわないだろう」
どや顔で言ってやった。
「さっき言っただろう。俺達の手は赤ん坊を抱く手だと。赤ん坊は虫と戦う力は持ってねえんだよ」
「わ、私に赤ん坊などいない」
なぜかこいつの言うことが本当のように思えて来た。
「そうだろうけどさ。こういうのは慣らしとかなきゃいけないのさ。何も考えずに出来るようにな。
それに流行病が近くで起きた時、手足をきれいにしときゃ、ある程度うつるのは防げる」
そこまで言われては仕方ない私は素直に手を差し出した。
手は洗ったけど良い負かされたのは気に入らない。
もうちょっと絡んどくか。
「おい、本当に飛行機械はここにないのか?」
「まだ壊す気か?ここにはないけど、ここにあるのかな?」
はあ、どういうことだ????
「あるのか?ないのか?」
「まあ、お前の行けないとこにある」
また訳の分からないことを言う。飛行機械が壊せないなら、私はどうすべきなのか?
「私はどうなるんだ?」
「旦那がお前は事情がありそうだとか言ってたから、命乞いでもすりゃ助けてもらえるんじゃないか?」
そうか甘そうなやつだな。しかし私は一族の事を考えねば、クーヤにそれだけの力があるのか?
「お前がなんでクーヤといるのか。聞いて良いか?」
「散々聞いといて今更なんだよ。長くなるぞ。
俺は田舎の族長の娘だ。ただお前と違って、台湾の山の中にあるホントに小さな村だ。
先祖代々、族長の娘は外から男を連れて来て、族長を継ぐみたいなことをやって来た。
俺もそのために村を出たんだけど、すぐにもう村はダメだと気が付いた。
産業もなければ、価値のある産物もない。若い奴は次々村を出て行くんだ。
俺は絶望したよ。こんな村に男を連れて行くのは人身御供うだ。
だから俺は村の復興を言い訳に天都に来たんだ。
そこで実入りの良い教会の勇者の従者って仕事を見つけて、大連に魔人退治に行ったんだ。
でも味方に裏切られて大けがをした。
天都に戻って来たんだけど、魔人退治を失敗した私達を教会が許すはずがないと思って、その頃有名だった旦那のところに転がり込んだんだ。
それでケガを直してもらえるし、村の事も考えてくれるって言うし、俺は惚れちゃったんだよね」
「そうか、私はドワーフ族の族長の娘ライヤ、朝になったら、お前の旦那と話してみたい」
「勝手にしろ。俺はドーテだ。一応旦那には言っといてやる」
そうして私はまたベッドに縛り付けられた。
「抜け出そうとするなよ。近衛は俺達みたいに甘くねえぞ」
そうか、ハンマーがなければ兵隊にも殺されてしまうな。
おとなしくするしかないか。
******
朝再び目を覚ますと私の周りが慌ただしくなってきた。
特に小さいのが走り回る。
顔の横に昨日私が着ていた服が積み上がっている。
いつの間にか洗濯され、もう乾いている。
どう見たってこの部屋に言われた飛行機械は入らない。
私は騙されたんだろうか。
分かっているのは私は失敗したってことだけ。
「ねえねえ、下着も替える?」
金髪の犬のたれ耳が可愛い少女が私を覗き込む。
私はもう目的を失っている。
「抵抗はしない。自分で着替えさせてくれないか?」
犬獣人はパッと振り返ると一緒に駆け回ってた猫獣人に聞いた。
「ミヤちゃん。この子自分で着替えたいってどうする?」
「ご主人様がロープは解いて良いって言ってたから、良いんじゃない」
「そっかー。じゃあ自分で着替えてね。終わったら部屋を出たところで朝ごはんだから」
そう言うと部屋を出て行った。
私は警戒されてないのか?
まあいい、私はクーヤに救いを求めてみるつもりだ。
暴れるなら決裂してからでいい。
着替えて扉を開けるといい匂いが・・・揚げパンだな
腹が鳴った。そう言えば昨日の夜は何も食べてない。
周りを見るが、私を誰も見てない。よかった。
「あ、来た来た。ここに座って」
さっきの犬獣人が私を引っ張っていく。
私はクーヤのすぐ横の席に案内された。
私はまず頭を下げた。
「おはようございます。昨日はごめんなさい。私の話を聞いてくれますか?」
「ああ、おはよう。食事が終わったら聞こう。まず食べなさい」
歳はそんなに変わらないよね。でもすごく大人びてる。
食卓には、私の前にさっきの獣人の二人の美少女、あれ、なぜかパンじゃなくしろい三角の塊を食べてる。
その並びに白い虎獣人・・・と言うことは白虎国の関係者かしら。
そしてドーテ。彼女達は私と同じパン。
私の並びには色白の美人さん、背が高くほっそりとした美人さん、そして少し背は低いがこれも美人さん。彼女達の前にはやっぱりパンが・・・。
もしかして・・・。
「私、あなた達のパンを盗ってしまったの?」
正面の獣人少女に尋ねる。
犬獣人の少女はきょとんとしているが、猫獣人の少女が答えてくれた。
「大丈夫ですよ。確かにここの朝食は人数分しかないのですが、私達にはおにぎりがあってどちらかと言えばおにぎりの方が好きですから」
そしてニコッと笑う。なんてかわいいんだ。
「おにぎりと言うのは青龍国では携帯食として重宝されている食べ物で、コメと言う穀物を使ってるんだ。こちらの方でも長江付近では、コメを主食として食べてるんだよ」
クーヤが説明してくれた。
とにかくお腹が空いているので、あまり考えられない。ありがたくいただいておこう。
私は前に置いてあった朝食をぺろりと平らげた。
よくよく見ると他の人の量が少ない。と言うか明らかに私のが多かった。
獣人少女の二人分だったかな?ま、仕方ないよね。
食事が終わると獣人少女達に連れられて、顔を洗い、歯を磨いた。
食卓に戻った時、すでに後片付けされており、私はクーヤさんの前に座った。
「ドワーフ族の族長の娘ライヤです。昨日は否定しましたがナオジは私の兄です。
まずここに来た訳を説明します」
「ああ、頼む」
この人は真摯に私の話を聞こうとしてくれる。
「まず私の父のことをお話する必要があります。
私の父は西域への派遣軍の派遣費を横領して自殺したと言われた人です。
もちろん横領したとされる金は銅貨一枚足りと見つかりませんでした。
2日前の事です。天都軍の主計局の人が村にやってきました。
その人は父の賠償金として村自体を差し押さえると言って来たのです」
「ちょっと待って、横領は個人の罪だよね。それをドワーフ族が責任を取る必要があるのかい?」
「いえ、聞いたことはありません。でもその男はそう言ったのです」
クーヤさんの問いに私は答えた。
「私は無理だと言ったら一枚の紙を見せて来たのです。
それにはクーヤさんの飛行機械を壊せば賠償金を相殺すると書かれてました。
私はそれを受けてここに来たのです」
「なるほどね。君は失敗した。どうしたい?」
クーヤさんの問いに私はドーテと話し合った時から考えたことを話した。
私は椅子から降りてひれ伏した。
「あなた達を襲った私が言えることではないことは承知しています。私達を助けてください。お願いします」
私はひれ伏した姿勢のままクーヤさんの言葉を待った。
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クーヤはライヤに答えるのか?




