3-15 飛翔
ご愛読、ありがとうございます。
今回はようやく飛行機が飛びます。
クーヤ達は産業革命の成果として飛行機による飛行展示を行うための飛行機の製作に入った。
そんな中転移三人組はクーヤとの絆を増すため、彼との行為を行った。
〇帝城 天帝執務室 転移107日目
俺は久しぶりに天帝様に会いに来ていた。
「おう、クーヤ、久しぶりじゃのう。宿泊所に籠って何かやっておったようじゃが、何をしておったのじゃ?」
「はい、天帝様から産業革命を肯定的にとらえるイベントを考えろとの事でしたので、飛行機を作っておりました」
「ひこうき?、それはどんなものじゃ、教えよ」
「はい、飛行機、それは空飛ぶ機械にございます」
天帝様は驚いてテーブルに手を突き、立ち上がった。
「機械が空を飛ぶと言うのか。まさかカエルのように跳ねるのではないだろうな」
「もちろん鳥のように人を乗せて飛ぶのです」
「それが出来たのか!」
「はい、今は最終的な塗装をしています。飛行機を飛ばすには300m×20mの平坦な土地が要ります。ご用意していただけますか?」
「うーんそんな土地はいくらでもあるが、練習は必要ないのか?」
「それは計算上は飛べますが、練習は必要かと思います」
流石にぶっつけ本番は堪忍して欲しい。
「では、学校の建設用地を使え。本番まではあまり人に見せたくない。あそこなら作業員だけだし、お前の屋敷から建設するから十分な広さがあるはずじゃ」
うん、あそこなら問題ない。
「ありがとうございます」
「では安全に飛べるようになったら朕に連絡するが良い。本番を計画しよう」
練習に二日貰えれば問題なかろう。インストールをすればその場でパイロットだからな。
そうだ、忘れてたよ。
「ちょっと籠っていたので間が空きましたが、我々を襲撃した奴らはどうなりましたか?」
コウメイ様が少し手を挙げて、自分が話す意志を示した。
「それは僕の方から話そう。襲撃した奴らは商業ギルド”干支座”の暴力組織”イヌ座”の構成員だ。
今、警らがイヌ座を家宅捜索したが、君達を襲わせた理由は定かではない。
君がやろうとしている産業革命が彼らの利権を侵害すると見たみたいだが、命令系統がはっきりしない」
結局黒幕まではたどり着けないどころか、干支座そのものも罪に問えないらしい。
イヌ座が壊滅しただけだ。
「ではこれからも襲撃があると言うことですか?」
「まあ。気を付けてくれ」
コウメイ様はいたずらっ子みたいに笑う。
この間みたいなレベルじゃあ俺達を傷つけることは不可能だ。
「干支座にイヌ座みたいな暴力組織がまだあるんですか?」
「うむ、情報取集を主な業務とするサル座があるが、そこは暗殺もやるそうだ」
暗殺ってなんだよ。聞いてねえぞ。
「暗殺って帝城は大丈夫なんですか?手口は?」
「奴らが帝城に手を出すことは無いよ。さすがに帝国に逆らって生きてはいけないからね。奴らの使う手口は毒が多いようだよ。人のいないところなら匕首なんかも使うみたいだ」
帝城なら大丈夫か。まあ、従者たちは安心かな。
後は外に出るときかな、工場建設用地は林とか草むらを避けて、周りに何もないところなら良いか。
そのとき天帝様が話しかけて来た。
「クーヤよ、死なないでくれ。お前のおかげで朕の立場はずいぶん良くなった。産業革命が成れば信帝国は盤石と成る。頼むぞ」
「お任せください」
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〇帝城宿泊所 執事室 転移108日目
昨日は飛行機完成の打ち上げと、アカネが何回も求めて来たので、寝過ごした。
おかしいな、普段ならヒイとミヤが起こしに来てるはずだけど。
温かい、俺は自分の横を見るとヒイとミヤが寝ている。
昨日の打ち上げで寝るのが遅かったから、俺を起こしに来てそのまま眠ってしまったようだ。
ヒイが俺に抱き着いてきた。俺の首に手を回し、顔を付けてくる。
「お父さん・・・」
寝惚けている様だ。普段明るく元気だが、本来両親を失った11歳の女の子だ。
抱き着かれているのは気分がいいが、いつまでもこのままでいるわけにはいかん。
今日は飛行機の初飛行だ。
「おい、ヒイ、ミヤ、起きなさい」
軽くゆすって見るも起きない。
こうなれば仕方ないよな。
俺が起き上げるとさすがに二人は目を覚ます。
俺はまだ目を覚まし切っていないヒイの腰に手を回すと肩に持ち上げた。
肩に腰かけた形になったヒイは、落ちないように俺の頭に両手を回した。
「もうセンセー、いきなりなんだから」
文句を言いながらまんざらでもなさそうな声を出す。
ミヤが羨ましそうに見上げているので、さっと腕を顔の前に伸ばす。
腕にお尻を乗せるのでそのまま肩まで持ち上げると、器用に腕から肩に移って腰掛ける。
二人を肩に乗せたまま、ドアをアヒル歩きで潜る。
「旦那!何やってんの」
「クーヤ殿!」
二人を肩に乗せて食堂に入った俺を見つけたのは、朝食の準備をしているドーテとジュレイだ。
キャッキャッとはしゃぐヒイとミヤを見てると気分が高揚する。
俺は二人を保護しているのだ。そう、まるで父親のように。
「ああ、旦那。悪いが先に着替えてくれるか。いくらなんでもさあ」
やば、もう真夏なので、上はタンクトップ、下はトランクス、要するに下着姿で寝ていた。
流石に思春期の女性に見せる姿じゃあなかった。
良いとこ育ちのジュレイなんて真っ赤になって俯いてる。
「おお、ワリい。着替えて来るよ」
慌てて、抵抗する二人を降ろして、執事部屋に駆け込む。
今日も慌ただしい一日が始まる。
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〇学校建設予定地
俺とヒイ、ミヤとハイジは学校の建設用地に来ていた。
俺達の周りは整地され100m以上にわたって何もなかった。
少し離れた個所では俺達の家の建設が開始されていた。
帝都の方向には俺達が襲われた丘があり、帝都からはこちらの様子は見えなかった。
車の影で収納から飛行機を出した。
全体が白地で翼の前縁と胴体の両側に青い線が描かれていた。
また、垂直尾翼には急降下するハヤブサの姿が黒いシルエットで描かれている。
次に俺は車の中に亜空間の出口を作った。
マシロ、アカネ、アオイ、ジュレイ、ドーテが次々と亜空間から現れる。
ワンボックスには7人しか乗れないので、苦肉の策だ。
「うわ、暑い」
アオイが叫ぶ。
帝城の中は洞窟と同じで結構涼しいが、ここは35℃はあるんじゃないかと思う。
「ほらアオイ、組み立てるよ」
取り出したのはワンボックス用の日除けだ。
深緑の帆布を屋根に支柱とロープで固定する。
机と椅子を並べると、7人と一匹が十分寛げる空間になる。
俺はその間に飛行機の点検をする。
外観、接続部のガタツキ、各舵の動き、エンジンの動作。
「エンジン始動」
左側のスロットルレバーに魔力を流し込むとプロペラが回り始める。
エンジンは前席のすぐ前にアルミの骨格に鎮座し、その振動が前席に座る俺に心地よく伝わる。
「車止め(チョーク)外せー!」
ヒイとミヤが左右の車輪を止めていた三角の木製の車止めを取り去る。
スロットルに流し込む。
エンジンが吠える。機体がプロペラの推力で走り始める。
どんどん速度が上がる。
おかしい。もう機体が浮いてもいいはずだが、まだ地上を走っている。
あ!フラップ!!
フラップを降ろし忘れていた。
慌ててフラップを降ろす。
強いGを感じて、機体は思い出したように地面を離れる。
フラップは主翼の付け根の後縁にある揚力補助装置だ。
これを降ろすことにより見かけの迎角を大きくして、さらにプロペラの起こした空気の流れを下に押しやることで大きな揚力を発生する。
もう高度は30mを越えている。
今日はあまり高度を取るつもりはないので、スロットルを緩め、フラップ角を小さくする。
そのまま操縦桿を横に倒し、同じ方向のフットペダルを踏む。
機体は緩やかに旋回に入る。俺はあて舵を当て、旋回を維持する。
伊河の上に出ると旋回をやめ、川に沿って上流に向かう。
そのまま手足を緩め、直進性を確認する。
元にしたH-23Cは練習機だけあって、手足を離しても直進する素直な機体だ。
インストールしたとはいえ、俺達が組んだ機体だ。そこまで再現できてるのかどうか。
エンジンのトルクをトリムタブで打ち消してやると、なかなか良い仕上がりだ。
フラップを戻して、今度は速度試験だ。
スロットルに魔力を送り込んで高度を200mに上げる
そのまま水平飛行で徐々に速度を上げていく。
ピトー管を買えなかったので、速度はナビさんのマップによる対地速度だ。
設計最大速度は時速300kmだ。
徐々に速度が上がっていく。
タコメーターは4000rpmを越えた
『時速250km・・・260・・・270・・・280・・・290・・・300』
スロットルを絞る。
5000rpm以内で300kmを達成した。
エンジンも機体も時速300kmを許容したと言うことだ。
これ以上を望むなら全金属製にしないとな。
その頃。ワンボックスの日陰では。
「あー、見えなくなっちゃった」
「もっと見える場所で飛んでくれえ」
「ミヤちゃん、ジュースのお替り、ジュレイちゃん氷タップリでお願い」
「マシロ、だいぶ我儘だな。仲間を使うな」
「ちょっとリゾート気分でいただけじゃない」
転生組は姦しい。
「あんたら、人が飛んでるんだぞ。驚かねえのか?」
「そうだ。聞いてはいたが信じられん」
ドーテとジュレイは単純に驚いている。
「この暑いのに信じられません」
ヒイは広い場所に来てはしゃぐハイジを追って走り回っている。
ミヤはそれを呆れながら眺めていた。
工事していない茂みに近寄ったハイジがピタッと止まった。
「ミヤちゃーん!、ハイジが誰かいるって言ってる!」
すこしハイジの方へ駆け寄ったヒイが告げた。
「ご主人様がこちらに何もしないなら放っておけって言ってたあ!」
ミヤが叫び返すとヒイがハイジに言った。
「ハイジ!放って置いて良いって!こっちに来て!」
ハイジがヒイの元に帰って来た。
俺は試験飛行を終わって着陸した。
みんなが集まって来たので俺は一言。
「試験飛行が成功したので命名式をします」
「この飛行機の名前はハヤブサとします」
俺はエンジンの両脇にハヤブサと青字で書いた。
それからは一人づつ、後ろの席に乗せて大剣飛行を行った。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回はハヤブサを狙う影が・・・。




