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異世界最強の転移者と15人の美少女剣姫  作者: 西村将太郎
第1章 天都へ
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1-2 従属契約

ご愛読、ありがとうございます。

ちょっと準備不足でアタフタしています。

今回はヒイが従者になります。

 黒狼村を訪ねたクーヤは魔獣退治の途中で、自分達の後を付ける子供を見つける。子供を村に返そうと接近した時、熊の魔獣に遭遇する。何とか熊の魔獣を倒したクーヤは、その子供ヒルダにセンセーになってくれと頼まれる。


 転移9日目 黒狼村

 黒狼村の里山に魔獣の熊が出た。

 魔獣狩りに来ていたクーヤ、カクタスと兵士二人、そしてなぜかヒルダという子供が一緒に居る。

 倒した熊を前に話をしていたが、日が陰って来たのでカクタスが前に出た。


「まあ、話はあとだ。クーヤ、熊を仕舞ってくれるか」

「村に渡さないのか?」

「ああ、多分こんな立派な熊なら、城に持っていけば高く売れるぞ」

 身長だけで2.5mはある熊を見て他の兵士もそうだなと肯定する。


 こちらで生きていくなら金はいくらあっても良い。俺は亜空間に熊を収納した。

「熊が消えた。どうなってるのセンセー」

 さっきから俺に縋っているヒルダが不思議そうに俺を睨む。


 どうもこの子はトラブル体質みたいな気がするので、あまり馴れ合わない方が良いだろう。

 つながりを断つ意味でも、朱鞘の刀をヒルダに返す。

 無視をされたヒルダは頬を膨らませている。


 村に戻ると村長と何人かの村人が迎えてくれた。

「ご苦労様でした。あ、ヒルダ!お前は、家から出るなと言っておいたじゃろうが!」

 俺の後ろに隠れるヒルダはすぐに見つかった。



「だって、お父さんの代わりに戦わないと・・・」

「シュバルツであっても魔獣に囲まれて命を落としたというのに、お前如きが戦えるわけはなかろう!」

 シュバルツさんは魔獣に囲まれたのか。いくら英雄でも多勢に無勢だったか。俺も気を付けよう。


「ごめんなさい」

 ヒルダが頭を下げる。うん、カクタスが怖い顔をしている。ヒルダの我儘に怒ったのか?・・。

 カクタスが今日の報告をする。


「熊の魔獣が・・・」

 村長の顔が恐怖で固まった。

「心配するな。クーヤがもう倒したぞ」


 カクタスが俺を指さすので亜空間から熊を出す。

 おお!!、と大きな声が出る。

「こんな大きな魔獣をお一人で・・・」

「いくつか幸運が重なりまして、魔石だけ抜いてもらえますか?」

 俺は魔石が欲しいのだ。他はあまりかまわれたくない。


「あ。こんなところでお話しさせて申し訳ありません。田舎なので貧相ですが宴席を用意しました。どうぞお上がりください」

 村長は外であることに気付いたようだ。

 俺達は宴席に案内された。


 ******


 宴会場は上座が俺達四人が並んで一人一人に妙齢の女性が付く、下座には村長以下十人ほどの村人が並んだ。

「さあ、まずは一杯」

 二十歳前後と思われるナイスボディお姉さんが俺の横に座って、盃を持たせて酒を注ぐ。

 ちょっと鼻の下が伸びてる自覚はある。


「ちょっとどいて!センセーの接待は僕がやるんだからね」

 ヒルダがナイスボディお姉さんを押しのける。

 あ、あ、俺のお姉さんが行ってしまう。


「センセー、お酒飲んでよお」

 ヒルダが盃を開けるように酒を持って要求する。しかし、俺のテンションは下がってるんだ。

「ヒルダ、話がある。こちらに来い」

 隣に座るカクタスがヒルダに話しかける。


 ヒルダは言われるようにカクタスの正面に座る。

「おまえにはシュバルツ殿亡き後、我が家の猶子になれと言っている。知っているな」

 猶子とはこの場合養子のようなものですとナビさんが解説してくれた。

「でも、僕はお父さんに代わって黒狼村を守らないといけないんだ。お父さんの子供だから!」

 それで俺に縋っているのか。


 カクタスがため息を吐いた。

「今日はできなかったな」

「これからセンセーに習って強くなるんだ」

 ヒルダは諦めない。いや、諦めたくないのだろう。


「クーヤはじきに天都へ行って、自分の生活を築いてかないといけない。お前はクーヤに何が出来るんだ?」

「僕は、掃除洗濯、ご飯も作れるよ。センセーのお役に立てるよ」

 カクタスは盛大にため息を吐いた。


「だそうだ。どうする」

 なんだよ。カクタス、俺に丸投げか。

「カクタスが言ったように俺は天都に行く、多分青龍国には帰らないだろう。それに天帝様の考え次第でどうなるかもわからない。だから、君を巻き込むわけにはいかないと思ってる」


 まあ、俺は厄介ごとは嫌だから何とか傷つかないように断った方が良いでしょ。

 俺が内心ほくそ笑んでると、ヒルダが涙を溜めた上目遣いで睨んでくる。

 諦めなさい、ねっ。


「ではヒルダよ。クーヤが出発するまでまだ二月近くある。それまで我が家で考えてはどうか?」

 カクタスとしては何とかヒルダを引き取って、父親の意向に沿いたいようだ。

「うん、それでいいよ」

 ヒルダは何を考えているのか、村を離れる決心をしたようだ。


「では、明日の昼、我々はこの村を出る。それまでに用意をせよ」

 カクタスがそう言い、俺としてもここで反対する訳にもいかんから黙っていよう。

「うん」

 ヒルダは大きく頷いた。


「では村長、我々は明日朝から今日の場所を探索して、異常無ければ昼食を取り、王都に帰りたい。良いか?」

 村長は「はい」と頷く。

「では明日の行動に支障のないようにいただけ」


 ******


 宴の後、俺はヒルダの家に招待された。

 もちろんシュバルツさんの家だ。

 約6m×6mくらいの小さな家だ。


 ライトの魔石が付いた棒を柱のソケットに差すと、それが部屋の照明になる。

「ちょっと待ってて」

 入った小さな部屋の端っこに魔法のコンロがあり、水を入れた鍋を置いてコンロに魔力を流す。

 桶に水を張り、やがて鍋は沸騰を始める。

 柄杓でお湯を桶に入れ、温度を確認する。


 ヒルダは俺に手拭いを渡した。

「これで体をきれいにして」

「すまんな」

 俺は全裸になり、体を拭き始める。


 ヒルダはなかなか手際が良い。家事は全般できるのかな。

 俺は収納から下着を出して着替える。


「また、何もないところから出した。どうなっているんだ?」

「俺は場所と場所を繋ぐことが出来る。ワームホールって言うんだけどな。それを亜空間に固定すれば亜空間収納の出来上がりだ」

「何にも分かんないよ」

 出来るだけ簡単に説明したんだけどな。仕方ない。


 ヒルダは俺の下着を桶に突っ込んで洗い始める。

「手慣れてるな」

「お父さんのも僕が洗っていたんだ」

 なんていい子なんだろう。


 俺の下着を部屋の隅に張ってあるロープに干す。

 桶の残りの湯を捨てるとまた新しいお湯を張る。

 今度は自分を洗う番みたいだ。

 着ていた服を潔くパアッと脱いだ。


 ついてない!!

「お、お前!女じゃないか!」

 俺はヒルダの全裸を見て叫び、見えないように反対を向いた。

「そうだよ。僕は女だよ」

 一人称が僕だし、父親の跡目を継ぎたがってたから男だと思ってた。


 ヤバい、このままではロリコン認定されてしまう。

「ヒルダ、俺は村長の家に戻る」

 慌てて服を着てヒルダの家を飛び出した。


 村長宅の広間に行くとカクタスが寝具にくるまっていたので、近くに居た女にもう一組寝具を用意してくれと頼む。女は首肯すると下がって行った。

「ヒルダは女じゃないか!」

「知らなかったのか?」

 カクタスは口角を上げ、俺をからかっているようだ。


 追求したって仕方がない、俺の観察力が不足していただけだから。

「ここで寝ることにするよ。他の奴らは?」

「酒の相手と寝てるぞ」


 そうか、あの女達にはそういう意味があったのか。

「おまえも頼むか?」

 カクタスがニヤニヤして言った。

「いや、あの娘もどこの馬の骨か分からない俺の相手は嫌だろうぜ」

 小さな村では血が濃くなりすぎるので、時々新しい血を入れる必要があると聞いたことがある。


「まあな、奴らも士分だからな。男の子が出来れば王都で暮らせるかも知れん」

 娘達もそう言う狙いがあるのかな。俺には解らんし、理解しようとも思わんが。

 寝具が来たので俺もカクタスの横に寝っ転がった。


「カクタスは女と寝ないのか?」

「俺はお前達と天都に行って、近衛兵になるつもりでいろいろやってるんだ。子に縛られたくないからな」

 そうか、こいつは飛龍将軍の子供って枠から出たいのかな。


「青龍国に居たら、兄貴達を越えられないからな」

 こいつは自分の力を試したいのかもな。

「おまえ、すごいな。向こうじゃ飛龍将軍の息子って言っても認めてもらえんだろう」


「クーヤほどじゃない。天帝様に何を頼まれるのかもわからないのに、良くそう平然としていられるな」

 カクタスからはそう見えているんだ。俺は日本で過ごしてきたから、感情を簡単に表に出さないようにしている。こちらの人間から見たら感情起伏の小さな人間に見えるだろうな。


「俺はワクワクしてるんだよ。この世界に来たことで不思議な力が使えるようになった。それを使えばこの世界の人より有利に生きることが出来る」

「前の世界には帰りたくはないのか」


「そうだな。帰れないって言うこともあるけど、向こうの世界に身寄りもいないし、結構煮詰まってる。だから、この新しい世界で楽しく生きたいとも思えるんだ」

「天都行はお前にもチャンスであるわけだ」

 カクタスも俺が悲壮になってない訳を理解したようだ。


「そりゃそうだ。日本ではそんな偉い人と話す機会もないからな」

「おまえ、平民なのか?」

「当たり前だ。日本には平民と少数の特別階級の皇族しかいない」


「士分はいないのか?」

「士分も貴族もいないぞ。ただ一代限りなら政治家にも将校にもなれる」

「平民がか?」


 それから俺達は日本の事、こちらの世界の事をずいぶん長い間話し合った。

 いつの間にか二人とも寝落ちしたようだ。

 朝の光に目を覚ました時のことだった。


 なんか暖かい。手を伸ばすと柔らかく暖かい何かが・・・隣を見るとカクタスはまだ寝ている。

 寝具を捲ると金色の髪の毛が、背中をこちらを向けたヒルダだ。

 俺の手に当たったのはヒルダの尻らしい。

 流石にこれを他の人に見られるのは恥ずかしい。


「おい、ヒルダ、お前、なんでここにいる」

 押し殺した声と背中を軽く叩いてヒルダを起こそうとする。

 ヒルダはゴロッと寝返りを打つ。

 まるで天使のような顔がこちらを向いた。ドキッと心臓が鳴る。


 薄目を開けたヒルダがささやく。

「お父さん」

 その声で俺はこの娘が愛おしくなった。彼女は俺に父性を求めているのか。


「ほらヒルダ、起きろ」

 女の子座りで起き上がったヒルダは俺の顔を眺めた。

「センセー、おはよう。ヒイって呼んでくれないと嫌だ」


 体に何かが走るような感覚があった。

「あ」

 ヒイも何か感じたようだ。


『従属契約が結ばれました。ヒルダは従者となります。身体強化、脳内地図、従者通信、インストールおよびヒルダの異能狙撃が共有されます』

 ナビさんの声が頭の中に響く。


 え、従者契約って、おれ許可した?そりゃヒイの事、可愛いとか、娘みたいだとは思ったけどそんなに簡単でいいの。

 混乱してるとヒイが俺に抱き着いた。


「僕、従者だって。センセーと一緒に居ていいんでしょ」

 ヒイを引きはがして隣を見ると、カクタスが信じられんと言う顔をして俺を見ていた。

「違うんだ!いや、違わないのか。ああ、どう説明すればいいんだ」

 俺は頭を抱えた。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

次回は黒狼村の秘密の予定です。

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