3-11 忍び寄る魔手
ご愛読、ありがとうございます。
今回は干支座がクーヤ襲撃を計画します。
天帝様に屋敷を貰えるようになったクーヤは、飛行機を作って、市民に産業革命の希望を見せることを約束する。
〇天都酒店 転移102日目
夜の帳がおり始めた頃。
ここは帝城の近くのホテル天都酒店の奥まった場所に作られた部屋、十二人の男が大きなテーブルに車のような形に座っている。
全員が覆面をして声も発しないので、その場の雰囲気は重苦しいものであった。
「全員そろったようだ。ウマよ、始めてくれるか」
「今年は午年で、私ウマが議長をやらせていただきます。
本来なら年始にだけ集まる我らですが、あの方より連絡がありましたので、ご報告申し上げます。
先月より天帝様の周りに動きがあり、先日クーヤと申す平民が相談役に登用されました」
ウマの絵は描かれた覆面をした男の言葉に、ほとんどの者が知っているとばかりに頷いた。
「そのトーヤなる者が行おうとしていることが、産業革命で内容は機械でもって製品を安価に作り、庶民に届けることを目標にしているようです」
ここで大きく会場が騒がしく揺らめく。
「それは我々を排除しようとしているということか」
ネズミの覆面をした男が、訪ねるとまた騒がしくなる。
「お静かに願います。あの方からは”そのようだ”聞いております」
一旦静かになった会場がまた騒がしくなる。
「あの方からの指示はないのか」
「干支座に対して明確な指示はございません。あの方がこれを漏らしたことが全てかと思います」
「殺せと言うことか」
イヌの覆面の男が呟いた。
「クーヤは帝城の中にいるのだろう。暗殺は無理だろう。サル、できるのか?」
「帝城の中は無理だ。例え出来たとしても我々の正体を暴かれる危険が大きい」
トラから聞かれたサルはそう答えた。
「南東の伊河のほとりで、大規模な工事が始まっているのは知っていますか?あれはクーヤが始める学校を作るらしいです。工事の視察もあるとしたら一週間以内と思われます」
「なら、サルが見張れ、俺達がやる」
ウマの言葉にイヌが答えた。
「待て、クーヤは剣の達人と聞いたぞ。周りにいる女達も近衛に指導するほどだと聞いた」
タツがそう言うと、ヘビも言い足した。
「ナメるのは良くない。邯鄲で反乱軍を倒し、朱雀国では巨大トラを倒したと聞く」
「分かったイヌ座で出せるだけ出す。サルも頼む」
「あの方が足りなければドワーフを使えると言っていたが」
「素人なんか使えるかよ」
「ドワーフってハンマーを振り回して戦うんだろ」
「ないない」
「ふざけるのはそれくらいにしてください」
ウマが自分に注目を集めた。
「では意見をまとめるとしましょう。情報収集がサル座、襲撃がイヌ座を中心に各座の荒事に特化した者をお出しください。これでよろしいですか。幸い工事個所は周囲の眼もありませんし、必要であれば工事人も一緒にお願いします。これでよろしいですか?承認なら挙手を」
全員が手を挙げた。
「全員の挙手を確認しました。イヌ座、サル座は相談して連絡方法等詰めておいてください。他の座で協力するものはイヌ座と相談してください」
干支座の会議は閉会した。
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〇宿泊所
天帝様の元から帰って俺は彼女達と話を続けた。
マシロ・アカネ・アオイとは結婚について、ジュレイ・ドーテとは従者についてだ。
結婚については今はそのような形態をとれないこと。
三人ともまだ若く俺に固執する必要がないと保留にしている。
従者についてはジュレイは結婚のために天都に呼んだと聞いたので、母は許可してるらしいので、白虎王の許可が必要と言った。
ドーテも台湾で母親が山岳民族の族長をしており、ドーテが婿を連れて来るのを待っている。
彼女も帰省して母親を納得させる必要がある。
ジュレイは言っても仕方ないだろうが、俺より条件の良い貴族は居るだろうに、なんでこだわるんだろうか。彼女の母親を助けたのは天帝様であって俺じゃないのに。
ドーテは俺が腕を直してやったから恩を感じているのかもしれないが、俺にこだわり過ぎだと思う。
「私は母は許可してるので、従者にしてください。父がもし許可をしないときは解約すればいいじゃないですか」
「そうだ、俺も故郷には帰るつもりはなかったんだから、従者にはしといてくれよ」
ナビさんも勧めて来るから、俺にとって良いことだとは思う。しかし、彼女達のことを思うと割り切れないと言うかなんと言うか。
しかし、学校が始まればそんなことも言ってらんないよな。
学校が始まれば信頼できる人が、それこそ100人以上必要になるだろう。俺が全てを見る訳にもいかないし、学校ばかりにかまってるわけにもいかない。
ええい、もう悩んでいても仕方ない。
「じゃあ、二人を従者にする。まずジュレイ」
「はい」
『ジュレイに従属契約を実施します』
「頭の中で誰かが・・・アッ・・・アッ」
ジュレイが色っぽい声を出す。
『従属契約を締結しました。
異能身体強化、従者通信、脳内地図、インストールをコピー、使用可能です』
『固有の異能氷精をご主人様にコピーします。以上で従属契約を終了します』
「どうだ、気分は?」
「はあ、ちょっと体の中をいじられたような感じだ」
「次はドーテだ」
「おう」
『ドーテに従属契約を実施します』
「誰だよ・・・ウアッ・・・アッ」
ドーテはあまり色っぽくない。
『従属契約を締結しました。
異能身体強化、従者通信、脳内地図、インストールをコピー、使用可能です』
『固有の異能土精をご主人様にコピーします。以上で従属契約を終了します』
「異能で氷精とか土精ってなに?」
「なんですかそれ?」
「聞いたことないぜ」
二人とも知らないようだ。
『文献では使用時に大量の魔力が必要なため、持っていても使えないことが多いらしいです』
ナビさんが解説してくれたけど何が出来るんだかわかんない。
『それぞれの属性の魔法が使えるようですが、イメージにより内容は異なるようです』
「身体強化で魔力量も増えてるはずだから、使えるかもしれないな」
「今まで自分には異能はないものと思っていたが、持っていたとはな」
「俺も知らなかった。持ってる奴もいたけど、だいたいしょぼかったよな。
でも、これは期待できそうだぜ」
二人は喜んでいるけど魔法の内容は分からない。
しかし、異能を持ってても解らない場合もあるのか。
でも魔法ってワクワクするよな。
「ここで魔法の練習は禁止だからな。やるなよ」
先に釘を刺しとかないと危ないからな。成人しているとはいえまだ十五だからな。
「えー、何が出来るか分からないと使えないじゃないか」
「そうだ、練兵場ならいいんじゃないか」
「ダメったらダメ」
大きな音や地面を抉ったりしかねないからな。
そういや、学校の建設用地は山すそで人気がないんだったな。
「明日、学校の建設用地に行ってみよう。工事してるから中には入れないけど、近くに山があるから魔法の練習ぐらいできるだろう」
「やったぜ」
「私も行くぞ」
納得してくれたみたいだ。よかった。
「センセー、僕も行く」
「ご主人様。私も行きたいです」
「アタイ達を放って行かないよな」
「面白そうじゃん」
「行きましょう」
えー、全員行くのお。ワンボックスに乗れないよ。
ワンボックスは7人乗りだ。子供が2人、転生組が3人、新人が2人で7人、俺を含めると8人、それにハイジが加わるとちょっと無理だよな。
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〇帝城正門近くのホテル 第三者視点 転移103日目
ホテルの正門側の2階の二間続きの部屋にいる4人の男女、部屋の窓はカーテンが閉められ手はいるがわずかな隙間が空けられている。
一人の男がその隙間から外を覗いている。
奥の部屋の応接椅子に座る女がその正面に座る男に話しかける。
「兄上、我々は何時までこのようなことを続けるのです」
女は若くまだ二十歳にもなってないのだろう。男は二十歳を越えているのか。
「頭領からは一週間は続けるように命令されている。その後はイヌ座と相談だな」
「いえ、そう言う意味ではありません。私達の一族が裏の世界から抜け出せないのかということです」
「まあ、無理だな。千年近く続いた体制だ。おいそれとは覆らん」
女の方は影の暮らしから抜け出そうとしていたが、兄の方は興味もない感じだ。
「標的は何やら庶民に仕事を与えて豊かな暮らしをさせると宣伝しています」
「まあ、眉唾だろう。もし、そんな事になったら、我等の暮らしが成り立たんではないか」
こんな自分の職業を人に話せない暮らしなら無くなってしまえ。女はそう思ったが、口には出せなかった。
正門が開門してから2時間ほど経っただろうか、見張りをしていた男が叫んだ。
「若、出てきました。車輪の付いたゴーレム馬と馬がいない馬車です」
若、兄上と呼ばれた男が隙間から正門を覗いた。
正門では車輪の付いたゴーレム馬、バイクの事だ、バイクにはクーヤとミヤが乗っていた。それを降りてクーヤが出門の手続きをしている。その後ろには馬のない馬車、ワンボックスが居た。
「間違いない、手筈通りイヌ座と頭領に連絡だ。キメイ、俺達は後を追うぞ」
キメイと呼ばれた少女は兄の後を追った。
4人はそれぞれの命令を守って駆け出していた。
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〇学校建設用地
用地までの道は工事用の車両が通るので広く踏み固められていた。
用地は東に伊河、北に低い丘と西と南は山に囲まれた盆地のようになっている。
草が刈り掃われて良く解る。1km×1kmの正方形だ。
「すごい、広いよ」
丘の高い所に車を止めて全員が用地を眺めている。
「ここにあなたの屋敷が出来るのね。私達も住めるんでしょ」
「そうだ、屋敷が出来たらここに越してきて、学校を作る監督をする予定だ」
「私の研究所もできるんでしょう」
アオイは魔力研究所の所長になる予定だ。インストールは日本人だから当てにできないので、鋭意勉強中だ。
「十月ぐらいには寮も完成する予定だから、人も集めている。青龍国、朱雀国、白虎国には要請した。
鬼族とか村上水軍、バンコ族とかも来るかもな」
「白虎国はいないのですか?
ジュレイが憤慨している。
「そう言われても、白虎国では庶民とはほとんど接触していないからなあ」
「ご主人様、あれ」
不意にミヤが天都の方を指差した。
目一杯の人間を乗せた荷馬車が4台と何頭かの騎馬が連なってやってくる。
工事作業員にしては異様な雰囲気を醸し出している
「殺気だ!全員武装だ。インストールを忘れるな」
故人の物は各々収納庫から出せるようにしたから、武器を出して装備する。
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次回は干支座との戦いです。




