3-3 疑惑
ご愛読、ありがとうございます。
今回は西域に来て仕事を始めるクーヤ達です。
西域の白虎国に反乱の調査に来たクーヤ達。しかし反乱ではなくストライキだと言う白虎王だった。
真実を見つけるために嘉峪関に向かうクーヤ達に白虎王の娘が付いてくるのだった。
〇嘉峪関 転移94日目
王城から20kmに嘉峪の街、それから5kmくらいに山から山を壁でつないだ国境がある。そこを貫くように街道があるのだが、街道を塞ぐように三階層の城が建っているこれが通関も兼ねている嘉峪関だ。
この城は国境に近付く敵から国土を守るために在る。まあ、今のところは開店休業状態らしいが。
ハイジを小さくして2列目シートの間に座らせ、7人プラス1匹状態にした車で1時間、嘉峪関に到着した。
助手席に乗せたジュレイの顔パスで嘉峪関に入って行く。
「この方天都の偉い方なんだけど、責任者を応接室に呼んでくれるかな」
暇そうに城の壁にもたれながら座って駄弁ってる兵隊達にジュレイが声を掛ける。
兵隊達は驚いた顔をして城の中に走っていく。
「なるほど、あからさまに仕事をしてないな」
俺達は城の中の応接室に入る。
「僕、退屈だからお城見学してくる」
ここは帝城と違って極端に偉い人もいない。大丈夫かな。
「ジュレイさん、子供がうろついても大丈夫かな?」
「普段なら大丈夫だけど。今はどうかしら」
普段大丈夫ならいいのかな。
「私もついて行くので大丈夫です」
ミヤがヒイについて行くと言った。
「じゃあ、迷子になるなよ」
「え、子供たちだけで行かせるの?だめよ、今は兵隊たちも苛立っているのよ」
「兵士のたくさんいるところにはいかないでしょう」
ジュレイは何に心配してるのかな。
「ハイジ、おいで」
「ウォン!」
二人と一匹は扉の外に走って行った。
「こら!走るんじゃない!」
「何があったって知らないんだから」
ジュレイが投げやりに俺に話しかける。
「クーヤさんも常識がなくなったもんね」
マシロがなにか失礼なことを呟いている。
ヒイ達が出て行った方向を眺めていたら、秘書を連れた佐官が入って来た。
******
〇嘉峪関の壁の上の通路 ミヤ
白から出て、西を見ると砂漠の中に一本の道が走ってる。両側には山があり視界を遮っている。裏の嘉峪の町以外はすべて薄茶色の石と砂だ。
「あまり、きれいじゃないね」
ヒイが不満そうにいう。いやいや、あんた今までずっとこの景色の中を旅して来たんでしょうが。
「今までと同じでしょ」
「でも壁の向こうは違うと思ったんだもん」
呆れるしかないが青龍国と比べると、景色の変化が乏しいのも事実だ。
ここに来るまでの通路で博打をしたり、寝転んだりする兵がたくさんいた。
あれがストライキって言うのかな。
ご主人様と通ったところにはいなかったから隠してるのかもしれないね。
「おい、ガキがこんなとこに居て良いとおもってんのか?」
いきなり5人の兵隊が私達の後ろで逃げないように、とうせんぼするように立っていた。
もちろんそんなことは分かっていたが、相手にする気がなかったので黙っていただけだ。
「私達は白虎王様の娘さんに許可を得ていますが」
ま、一応許可してくれたんだよね。多分。
「白虎王だと、俺達は天都の兵だ。そんなの知らねえな」
「ハイジ」
ヒイがハイジに声を掛けると中型犬ぐらいだったハイジが闘牛の大きさになる。
「ひっ」
兵隊たちが一気に腰砕けになる。
「犬っころがあ!!俺様をなめるなよ!!」
身長が2mくらいもある兵隊がハイジを恐れずに前に出た。
ヒイがハイジをけしかけようとしたが。私が手で制した。
「ハイジじゃあ、殺しちゃうわ。私がやる」
私は一歩前に出た。
大男も前に出た
「ガキがぶち殺してやる」
樽のような腕が唸って、私の顔を壊そうとする。
大男は逆立ち状態で頭を床に打ち付けている。
他の兵たちは何が起こったのか理解できてないようだ。
「お前達!何をやっている!!やめん・・・・」
城から若い男が出て来た。小さい、いや、私よりは少し大きいけど。
逆立ちしている大男を見つけて声も出せずにいる。
「これは一体どういうことだ?」
頭をひねる小男に私は優しく答えてやる。
「この大男がいきなり殴りかかって来たから、腕を取って一本背負いで投げて上げたのよ」
「君がこの大男を?」
そんな馬鹿なという顔をする小男。
「僕は伍長でナオジと言う。こいつらが何をしたか教えてくれ」
それで私は囲まれたこと、脅されたことを話した。
いつの間にか大男以外は姿を消した。
「それでこの巨大な犬はなんなんだ?」
「ハイジ、もういいよ」
また中型犬の大きさになったハイジの頭を、ヒイが撫でてやると目を細めて気持ちよさそうにする。
先程までの怪獣のような姿は想像できなくなる。
「小さくなった。俺は頭がおかしくなったのか?」
ナオジさんが頭を抱え始めた。
私達って外から見たらかなり常識外れだよね。
「どうして兵隊さんは働いてないの?」
「君に行っても分からないかもしれないが、俺達は3年たったら天都に帰れるはずだったんだ。それがもう3ヶ月も余分にいるのに帰れないんだ。それですっかり働く気を無くしているんだよ」
これがストライキってやつの原因なんだわ。ご主人様に連絡しなきゃ。
******
〇嘉峪関の応接室
「じゃあ、兵隊の勤務に問題はないと仰るんですね」
秘書を連れた中佐殿は嘉峪関には何も問題はないと言っているがだ。
今、ミヤから従者通信が入ったんだよ。
「私の方には駐留期間が終わったのに帰してもらえないから、仕事を放棄していると報告が入っているのですが、違いますか?」
駐留軍は常任の軍隊じゃない。招集して送り込んでるから、期間が伸びることは死活問題だ。
前払いした給料はすでに家族に渡してあるだろう。帰るのが遅れれば、家族が飢えるかもしれないのだ。
「なぜ、それ・・・いや、そんなことはありませんよ」
中佐殿の顔に汗が浮いた。相当焦ってるな。
「では、兵達を見せてもらいましょうか?」
「いや、それは軍機ですから、おいそれとは・・・」
秘書が部屋の外に走った。
恐らく兵達を仕事をさせにでも行ったのだろう。
「では城の中は諦めて壁から景色を眺めますか」
「まあ、それぐらいなら」
俺の要請を中佐殿は了承してくれた。
ミヤ達のところへ行ってナオジ殿と逆立ちした大男に会うつもりなんだよね。
通路はごみが落ちてはいたが寝てる奴も博打している奴もいなかった。
城から壁の上の通路に出るとすぐにいた。
うちの娘達とハイジと大男の逆立ちオブジェと若い下士官。
おっと、中佐殿があわてて下士官に向かおうとする。
『抑えて』
俺の指示で転移組が動く。
アカネとマシロが中佐と秘書を捕まえる。
「帝国相談役様に何をするつもりですか。危険行動と見なし拘束します」
アオイがすました顔で二人に言う。しかし、彼らは口も塞がれているので喋れない。
俺は下士官に近付き話しかけた。
「君、私は天帝様から派遣された使者だが、君達が駐留期間を無断で延長されている件について伺いたい」
俺は天帝様の指令所を見せる。
「へっ!」
彼は驚いて片膝になり、お辞儀をする。
「早く話せ」
ジュレイはここにきて、俺が頭ごなしに変わったことに驚いている。
彼は三年の駐留の任期が過ぎても帰してもらえないこと。当然追加の賃金の支払いも無視されていることを話した。
俺は中佐に向き直った。
「これはどういうことかね?」
中佐はふさがれていた口が自由になったが話し出そうとはしなかった。
うーん、ちょっと脅した方が良いかな。
「なにも話さないんだね。では君がこの事件の主犯となるがいいのか?」
中佐は首をぶんぶんと振る。
「だって、君が駐留軍の責任者なんだろ」
「チ、違います。私は上に指示を、駐留を1年延長せよと言われただけです」
「証拠はあるのか、指示されたと言う証拠は!」
「ありません・・・。だって西域に行く商人に口伝で言われただけで・・・」
中佐は涙を流し始めた。
「誰の指示だ。いくら何でも指示した者が分からなければ、命令を実行しないだろう」
「言えません・・・が帰るにもお金が要ります。それを貰えないと帰れないじゃないですか」
面倒だな。そうだ天帝様に丸投げしよう。ソウシヨウ。
応接室で収納の中のおにぎりとお茶で昼食をとる。
収納に入れた時から一か月が経っているがまだ握りたてのようだ。
とりあえず中佐とナオジと言う下士官はここに軟禁してる。
天帝様から質問があるかもだからな。
「クーヤ様、この食べ物は何ですか?どこから出したんですか?」
「これは、おにぎり、または握り飯だ。どこから出したかは秘密だ」
「この子達はあんな大男に勝てるってどういうことですか?この人達も男の人を捕まえてたし」
「それも秘密だ」
ジュレイがうるさい。この子は好奇心旺盛みたいだ。
しかし、うちの子の実力を見抜くとは大したもんだ。
まあ、ヒイとミヤなら油断して、兵達も秘密を洩らしそうと思ったかから、二人で行動させたんだが、こうもうまくいくとは思わなかったがな。
まあ、兵達も軍紀が緩んでるって言うのもあったんだろうな。
飯を食ってると天帝様から通信が来た。
朝議が終わったみたいだ。
『もう西域に着いたのか。兵達は嘉峪関と言う国境の城に居るようじゃ』
『今、嘉峪関にいますよ。それと反乱じゃなくストライキでした』
『なんじゃと、ストライキじゃと。何を要求しておるのじゃ』
『駐留期間が過ぎたので天都に帰りたいと言っています』
『おかしいな・駐留期間を延長したと言う話は聞いて居らんぞ』
そりゃそうだ。命令書も届けてないんだから、公式にはなってないんだろう。
『命令書もなく口伝で行われたようです』
『それで国境の守りは大丈夫なのか?』
『それが白虎王様が言うには敵兵など百年以上見たことがないと』
『いろいろ話が違ってきているようじゃ。もう少しそちらに居てくれるか。こちらも調べてみる』
『分かりました。何か調べることはありますか?』
『特にはないが、そちらの人間の話を聞いておいてくれ』
『分かりました。夕方まで嘉峪関に居て夜には白虎王様のところに戻ります。娘さんを預かってますので』
『何、ジュレイもおるのか。朕の幼馴染じゃ』
『そうでしたか。彼女もお元気ですよ』
『そうか、また会いたいと伝えておいてくれ』
『かしこまりました。では失礼します』
『うむ』
従者通信を終えるとみんなが俺の顔を見ていた。
「天帝様からですか」
マシロが代表して俺に聞く。
「ああ、ジュレイさん、天帝様がまた会いたいと仰ってました」
ジュレイは飲んでいたお茶を盛大に噴き出した。
ブフォーッ!!
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回はなぜかジュレイが・・・です。




