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異世界最強の転移者と15人の美少女剣姫  作者: 西村将太郎
第1章 天都へ
4/4

1-1 ヒイ

ご愛読、ありがとうございます。

本編開始です。

 浅野空也はパラレルワールドのエドに転移した。

 空也は日本に帰ることを諦め、この世界で生きることを選択する。

 まず、移動手段を確保するためバイクを異能で購入したが、この世界では急速な膨張が起こらず、動かせなかった

 バイクにゴーレムを使うため材料の魔石を取りに、カクタス達の魔獣狩りに付き合うことになった。


 〇転移九日目 エドから東に延びる街道

 俺達は馬車で朝早く、東に向けて王城を出た。

 千葉の方に向かうみたいだが、土地勘が全くないので解らない。


 馬車を牽くのはゴーレム馬だ。ゴーレム馬の利点は休まずに1日中使えることが一番大きい。馬の倍以上の距離を移動できるようだ。この日も馬車なら1日がかりだが4時間ぐらいで着けるらしい。

 御者は手綱を通して魔力をゴーレムに供給するので、1時間ぐらいで交代するようだ。

 俺ならばずっと魔力を供給できるとナビさんが言ってた。やはり俺はチートだ。


 馬車は町中を抜けて鬱蒼とした林の中を通る。主要な街道らしく道は平坦であった。

 今の東京周辺なら家が途切れることがないので、人口が圧倒的に少ないのだろうか。

 林を抜けると田畑と農家が見えてくる。周辺の農家が王都に食料を供給しているのだろうな。

 恐らく農業用水が未熟なために大規模な集落を形成できないのだろう。林と小規模の集落の繰り返しを見てそう思った。


 ゴーレムは休憩はいらないが人間はそうもいかないようだ。中間で一度トイレ休憩をはさんだ。

 短い休憩だがカクタスの同僚二人から質問を受けた。異世界から来たのは知っているので、元の世界のことが中心だ。機械化文明と人口の多さに驚いていた。まあ、短い休憩だったから深くは語れなかったがな。

 馬車が動き始めると振動と騒音で、ほとんど話はできないから続きは夜になるな。


 やがて湖が見えてきた。

「香取の内海だ。もうすぐ着くぞ」

 御者をやっていたカクタスが告げる。

 湖の中ほどから南に進路を取り、目的地の黒狼村を目指す。


 やがて拓かれた田畑と30軒ほどの小さな集落が見えた。

 集落の下で茅葺屋根の一番大きな家の前で馬車は止まった。

「ちょっと村長に様子を訪ねに行こう」

 カクタスについてその家にお邪魔する。


 その家で一番広い部屋に通された俺達の前に黒狼族とは言うものの、白髪の混じったお爺さんが座った。

 狼の耳を持つお爺さんは早速話し始めた。

「カクタス様、このような田舎までわざわざありがとうございます」

 お爺さんの様子ではカクタスはこの村に何か関係があるのだろうか。


「村長、昨日聞いた内容だと魔獣となったウサギやネズミが押し寄せてると聞いたが?」

「はい、昨日の朝、突如山から下りてきました。数は20匹くらいです。男が総出で追い払ったところ山に帰って行きました」


「そうすると我々は魔獣が近くに居るようなら退治すればよいか」

「はい、奥の方は下草が刈られてないので入らない方がよろしいかと」

 下草があると魔獣が見えなくて危険だそうだ。

 ちょっとカクタスが偉そうだなと思ったが、貴族なら当然なのかもしれない。


 話が一段落して、カクタスが村長に聞いた。

「ヒルダはどうか?」

「ヒルダですか?」


 ヒルダって誰だと思ったが聞ける雰囲気でもない。

「そうだ父上が心配しておる。お前達の手に余るようなら引き取るとも言っていたが」

「最近は落ち着いてまいりましたが、あなた様が直接お話されるのが良いと存じます」

 ヒルダというのは何かしら飛竜将軍と縁のある人みたいだな。


 ヒルダとは夕食時に面会することになった。

 俺達は昼食を食べ、討伐に向かう。

 外に出て、探索の範囲を聞く。

「あちらの山すそからこちらの山すそまでだな」


 カクタスは指を指して説明する。

 ゲッ広い、これは数日かかるかな。

 中央くらいから俺とカクタスが南へ、他の二人が北へ調査をしていくことになった。

 武装は俺は刀を選んだが、他は槍と盾だ。


「俺が前で、お前が後ろだ。噛まれると死ぬこともあるから注意しろ」

 カクタスは何でもないように言う。

 俺達は南に向いて歩き始めた。


 20分ほど歩いたが何も現れない。

「魔獣に噛まれるとどうなるんだ」

「良く解らんが、毒みたいなもんらしい」


 カクタスと話をしながら木々が結構な密度で生える尾根の斜面に沿って歩く。こちら側は下草を刈ってきれいにされているが向こう側は腰の高さまで笹や雑草が茂っている。こちら側は村人が腐葉土を作るのに落ち葉を集めるのだ。

 俺は目線を360度見回しながら歩く。それで後はナビさんに任せておけば、異常を見つけてくれる。


『尾根の向こう側で何者かが動く音がします』

 さっそくナビさんが異常を見つけたようだ。

「カクタス!。尾根の向こうで音がした。出たかもしれない」


 カクタスは歩みを止めて斜面を見上げる。

「戦闘準備して、待て」

 少し緊張したように言って盾と槍を構えた。俺も腰に差した刀を抜いて正眼に構える。


 ザザッ、ザザッと笹が揺れた。

 灰色の塊が飛び出してくる。

 は、はやい!!


 カクタスの盾に何かがぶつかった。素早く槍で止めを刺した。

 小型犬並の大きさの鼠だ。

 俺の方にもネズミが来る。


 しまったな。地面を這うようにやってくるネズミ相手では刀は使いにくい。

 と思った瞬間、俺は腰を落とし水平に刀を振った。

 ネズミの頭蓋骨が上下に割れる。


 なんと、俺は無意識にネズミを斬っていた。

 こんな大きな動物を殺したのは初めてだ。

 いや、今まででも魚を殺すのにも抵抗があった。


 なのに俺は周囲を警戒している。

 精神的なダメージがないのはなぜなんだ。

 新たなネズミが来た。しかも二匹。

 右へ左へと刀を振ると二匹のネズミが倒れた。


 俺はインストールで無意識でも最良の戦闘が出来るようだ。こないだまでたむろするヤンキーどもにビビってたのにである。

 振り返るとカクタスも一匹倒していた。


 反対側に行った人達も戦ったらしいが、さすがにここでは解らない。

『ウサギを二羽倒したようです』

 ウサギの助数詞は羽だっけか、中型犬ぐらいありそうだぞ。頭で数えた方がしっくりくる。

 しかし、ここからでは人がアリのようにしか見えないけど、ナビさんにはちゃんと見えてるんだねえ。


 もうここには魔獣の気配がないので、魔獣の死体を下に置いてくる。村の人か処置をしてくれるそうだ。

 また斜面を南に歩く。

「魔獣ってさ、村人が追っ払ったら逃げてったんだろ。俺達にはなんで向かってくるんだ?」

 俺は周囲を見回しつつ。疑問を聞いた。


「ああ、あいつらは勝てると思った時にしか出てこない。だから少人数でこうやっておびき出すんだ」

 なるほどな、俺達はオトリもってことか。


 開始から2時間、そろそろ尾根の南端に到着する。あれ以来、魔獣は出てこない。

 こちらが倒したのは5匹、向こうも同じだけ倒してたら10匹、報告の半分だ。

 こりゃ、明日もかな。


 確保した魔石は3個、失敗した時の分を後2、3個欲しいよな。

 そんなことを考えながら来た斜面を戻っているとナビさんが言った。

『ご主人様、警戒がおろそかになっています!』

 ああ、怒られちゃった。ちょっと緊張感が薄れてたな。反省、反省。


 戻りはカクタスも警戒が薄れているのか、幾分歩くのが速くなっている。

 俺達は油断していた。出てこない魔獣、しかもあまり強くなかった。

 ナビさんに怒られたのにな。


『子供が付いてきます』

 いきなり、ナビさんが言った。

 振り向くと数十m後ろで木の影に隠れる子供らしき姿が見える。


「カクタス、子供が付いて来てる。村に帰すから先に行っててくれ」

 カクタスは振り向くと苦虫を嚙み潰したような顔をする。

「あぶねえなあ。分かった。気を付けてくれ」

 もう合流地点まで100mほどまで来ていたので、もう魔獣は出ないと思っていた。


 俺は子供が隠れている木を目指して歩き始める。声を掛けることはしない、逃げられると困るから。

 木まで20mくらいまで近付いた時である。

『左前方!大きな動物がいます!!』

 頭の中にナビさんの叫び声が響いた。


 尾根の向こうに胸まである笹の上で、黒い塊がゆっくり動いているのが見える。


 でかい!ネズミやウサギじゃない。熊?いや熊はこんなに大きくない。魔獣か!?


 慌てるな!向こうがこちらに気付いているのかが解らない。


 俺はすり足で走った。大きな音や声を出すのは危ない。


 子供には俺が近付いているのは解っているはずだ。


「静かにして!魔獣がいる!」

 低い小さい声で子供に伝える。


 木の向こうから弓矢を持った子供が顔を出す。

 金色の髪の毛、小さい、140cmもないんじゃないか。


 子供の腕をつかんでわきに抱える。

「キャアーッ!」

 馬鹿な、悲鳴を上げた!?


 ガサっと音がして笹の上に熊の上半身が見えた。


 魔獣だ!!


 仕方ない。俺は一瞬で決意を固める。


 子供を降ろすと「逃げろ!!」と低い声で言う。


 俺は熊に向き直る。熊との距離は30mといったところか。


 熊がのそりと笹をかき分けその全身を現した。

 北海道に行ったときに見たヒグマよりでかい。


「カアクタアスー!!」

 俺は大声で呼んだ。いや叫んだ。そうしないと恐怖に負けそうだから。

 カクタスはまだ100mと離れてないだろう。


 子供が逃げた様子がないが、熊とのにらみ合いで視線を離せない。

 熊を走らせてはいけない。後ろに子供がいる状況で避けられないから。

 恐らく1t近い体重と速度なんて俺に止められる訳がない。


 熊との距離は5mを切った。


 熊は相撲取りの仕切りのように両手を前に出して、襲い掛かってきた。


 俺は熊の両手を刀で思いっきり打った。

 斬るつもりだったが刀が熊に当たった衝撃で曲がった。


『この刀じゃ無理でござる!』

 頭の中で剣豪さんが叫ぶ。

 カクタスに借りたこの刀はかなりのナマクラらしい。


 熊は斬れなかったが突進方向をずらすことができた。

 熊は子供の隠れていた木に頭から突っ込んだ。

 俺もびっくりした、火事場のバカ力だろうか?


 熊は脳震盪でも起こしたのか、動かない。

 チャンス!しかし刀を見ると大きくくの字に曲がっている。

 これでは熊を倒せない。どうする?!。


 熊が目を覚ましたのか動き始めた。

 くっそー!!、どうしようもない!・・。


「お兄ちゃん!」

 子供が叫んだ。


 俺の目の前に朱鞘の刀が飛んできた。

 俺は今持っている刀を放って朱鞘の刀を受け取る。


 熊は怒ったのか「グオオオオオーッ」と吠えながらこちらを向く。


 俺は鞘を払って構える。


 あばら三枚!!

 心臓の位置をナビさんが示す。


 熊は俺の頭をめがけ腕を振り下ろす。


 体を開いた熊の心臓めがけ、刀を突き刺すが間に合わないか?!。


 熊の爪が肩越しに背中に回って俺を引き裂く。


「お兄ちゃん大丈夫?」


 俺はもたれかかってきた熊を横に倒す。

 熊はゆっくりと回転するように倒れる。

 熊は完全に死んでいた。身長が2.5mくらいあるツキノワグマだ。

 背中はかすり傷ですんだようだ。良く生きていたもんだ。


 あれ、熊の目に矢が突き立ってた。

 どうやらこれのおかげで、熊の攻撃が遅れたようだ。

 どうもこの子が矢を射ったらしい。


「君のおかげで死なずにすんだ」

 子供に向いて言った。

 子供はかわいい顔で頭に犬のような垂れ耳があった。黒狼族ではなさそうだ。

 ゴールデンレトリバーのような耳だと思ったが言わずに置こう。


「おい、クーヤ!大丈夫か!」

 カクタスが戻って来た。

「なんとかな。一瞬死んだかと思ったけどな」


「おい、ヒルダ!お前なんでこんなところに居るんだ!」

 子供に向かって怒るカクタス。

「だって、僕が村のみんなを守んなきゃ、お父さんが・・」

 言ってる途中で子供は泣き出した。


 ハアと大きく息を吐いたカクタスは話し始めた。

「この子は親父の教え子の子供なんだ。・・・」


 カクタスの話を要約すると十数年前、飛竜将軍は越冬訓練のため、東北の平泉に自分の部隊を率いて出かけていた。その中にこの子の父親のシュバルツがいた

 その近くで一揆が起きて、将軍がその鎮圧に赴くことになった。


 一揆の原因が貴族の苛烈な年貢取り立てにあった。主たる貴族を滅ぼして一揆側は将軍との話し合いを望んだが、貴族の部下が懲罰を恐れて反乱を起こした。なにせ冬の東北、将軍は雪をかき分け奮闘したが、思うような戦果を残せなかった。


 そこに現れたのが一揆を率いた少女、その正体は滅ぼされた貴族の庶子だった。

 地の利を知った一揆軍を加えた将軍は、反乱軍を追い詰めていった。

 追い詰められた反乱軍は少女を誘拐、人質にして逆転を狙った。


 なにせ一揆勢の精神的支柱と言うべき少女を奪われた将軍たちは、反乱軍を攻めあぐねた。

 そこに現れたのがシュバルツだ。単身敵の拠点に乗り込み少女を救出した。混乱に陥った反乱軍はすぐさま降伏した。


 この時の功績で、竜人族の英雄の名のシュバルツを名乗ることになった。

 その後シュバルツが少女を娶って黒狼村に帰った。

 そしてヒルダで母親そっくりの犬人族の姿で生まれた。ヒルダの名前は飛竜将軍が名付けた。


 ヒルダの母は産後すぐに亡くなり、シュバルツも半年前に亡くなった。

 飛竜将軍はヒルダを憐れみ、今回のついでにカクタスに引き取る様に命令していた。


「ねえねえ、お兄ちゃん、僕のセンセーになってよ」

 いつのまにか泣き止んだ子供が言った。

「なんだあ、先生って?」

「ああ、シュバルツさんが俺の親父をそう呼んで慕ってたんだよ」

 カクタスがヒルダの言葉を説明してくれた。


「僕のことはヒイって呼んで。お父さんもそう呼んでいたから」

 ヒイはニシャッと笑った。

 俺はどうすべきなんだろうか。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

次回はヒイが狼をティムします。

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