3-2 帝国相談役
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クーヤは相談役の肩書を手に入れます。
朱雀国の問題を解決し、産業革命のプレゼンを成功させたクーヤは、またも天帝様に呼び出されるのだった。
〇帝城 天帝執務室 転移90日目
その日の午後天帝様に呼び出された俺、と言うか午前中は天帝様が朝議に出てるから、呼び出されるのはどうしても午後になってしまう。
「まあ、座れ」
今日は天帝様の隣に青年が座ってる。来ている服から見て身分は相当高そうだ。
よく考えれば俺がここに座るのはかなり身分違いだ。今まで良く首を斬られなかったことよ。
日本育ちで身分に無頓着な俺でも分かる。本来なら謁見室で「ははあ」と頭を下げるのが普通だ。
「何の御用でしょうか?」
俺は座らずに頭を下げた。
「何をしておる。早く座らんか。お主みたいに背の高い奴に見下ろされるのは気分が悪い」
そこまで言われると仕方ない、天帝様の正面に腰かける。青年はどうも笑いを堪えている様だ。
「紹介しよう、朕の兄上だ。幼少の頃、事故で足を悪くした。それで朕が即位したのだ」
それなら俺が直せるかもしれない。アカネからもらった異能再生を使えば。
「もしかしたら私の異能で治せるかもしれません」
天帝様の顔がパアっと輝いた。
「ホント・・・」
「いや、そのことは無用にしてもらおう」
天帝様の言葉を遮って青年は言った。
「どうしてじゃ、兄上。そうすれば兄上が天帝に成れるのじゃぞ」
「私はお前を支えていくのだ。今更引きずり降ろそうとは思わん」
どうも複雑な事情がありそうだ。
「それより彼を呼んだのは伝えることがあったのだろう」
「そうであった。クーヤ、朱雀国の手柄でお前を帝国相談役に抜擢した。これからは我前に好きな時に来れる」
ええ、俺は信帝国に使える気はないのだが。
「ありがたいのですが・・・」
「心配するな。宮仕えをせいと言ってるわけではない」
「それはどういう?」
「相談役とは古来引退した政治家や将軍を非常時に呼び出して就ける職じゃ。非常時が終われば解任するし、いやになれば自分でやめてもよいのじゃ。ただ仕事をやりやすくするための職じゃ。解任権も天帝にしかない」
「君には妹を支えてもらいたいのだ。私は残念ながら物理的に動けない。そこを補ってもらいたいのだ」
「具体的に何をすればよいのでしょう」
「妹の眼となり耳となり、時には敵に罰を与えたりと言うとこかな」
うーん、結構難しいんじゃないかな。
「嫌だったら依頼を受けなくても良いよ。私は君の速い足と強さに賭けているんだ」
「では相談事は依頼を受ける形でいいのですね」
それだったら今までと変わらない。権力を持つだけやりやすくなる。
「そう言うことだ。受けてくれるね」
「分かりました。お受けいたします」
「そうか、さっそくじゃが、西域に不穏な動きが見られるのじゃが、見てきて欲しい」
「どういうことでしょう?」
「3年程前、トルファン、ウルムチの方から軍隊行動があると白虎国からの連絡があった。それで西域の軍隊を増やしたのだが、今度はその兵が反乱を起こしたと言っておるのじゃ」
へ?国境警備に増援された兵が反乱ってかなりヤバいんじゃないの。
「それが本当ならかなりまずいですね」
「そうじゃ、だからお主に頼んでおる」
「それでは誰かを私の従者にしてください。緊急の連絡ができます」
俺は執事かメイドを従者にして従者通信を出来るように進言した。
「それなら朕を従者にするが良い」
はあ、天帝様を?!
「それはなんと言うか恐れ多いと言いましょうか・・・」
「かまわん、お主と秘密の相談が出来る。まさに相談役ではないか」
「私からもお願いしよう。妹にはふるいにかけられた情報しか手に入らん。君のような情報源は大歓迎だ」
そんなこんなで押し切られてしまった。まったくとんでもない人に信頼されてしまった。
「では従者契約をします。これはあくまで仮契約で付与する異能は従者通信だけです」
ナビさんのお願いして制限付き従者契約をした。俺はそんな細かい調整はできないからね。
『これで話が出来るのか?』
早速通信してきた。素早い、説明もなしにできてしまうとは、やはり並の人間ではなさそうだ。
『はい、それで結構です』
俺は唇が動いてないことを強調して通信した。
「これが西域からでも出来るのか?」
「はい試したことは無いのですが、私の従者AIがそう言ってます」
「なんじゃその「えーあい」とか申すものは?」
『天帝様、私がクーヤの従者AIナビでございます。出来る範囲でお手伝いいたしますので、よろしくお願いします』
ナビさんが天帝様に話しかけたようだ。天帝様がキョロキョロを周りを見回している。
「従者通信でナビと話しかけていただければAIに繋がります。かなりの知能を持っておりますので便利にお使いください」
その後報酬等を取り決め宿泊所に戻った。
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〇帝城 宿泊所
「・・・と言う訳で俺は帝国相談役になって西域に行くことになった」
俺は皆を集めて天帝様との話の内容を伝えた。
「クーヤさんは天帝様にお仕えするのですね?」
マシロが称えるように言った。
「いや俺は仕えるんじゃない。依頼を達成するための身分にすぎないよ。身分に対する報酬はないし、やめる気になりゃいつでもやめれるんだ」
「えー、宮仕えしてアタイ達を養ってくれんじゃねえのかよ」
「なんでお仕えしないの。仕えた方が楽じゃん」
アカネとアオイが煽ってくる。
大きな声では言えないが、日本でブラックな場所で働いてきたから、組織に組み込まれるのは嫌なんだよ。まあ、所詮学生だった君達には解らんだろうな。
「俺はこの世界を回ってみたいんだよ。だから組織に縛られたくないんだ」
「センセー、カッコいい。僕も連れてってね」
「私は当然ご主人様と一緒です」
ヒイとミヤはいつもの調子だ。
「本当かな?」
「怪しいね」
「どっちでもいいんじゃない」
もう、こいつらは。俺は転移組を睨むがどこ吹く風だ。
「とにかく明日から西域に向かうぞ。着いて来る者は用意しろ」
「はーい」
「もちろん私もついて行きます」
「嘉峪関は私が転移した場所の近くよ。まあ、案内はできないけど」
「従者の経験が浅いから付いてくヨ」
「朱雀国では活躍できなかったからな。今度こそだ」
「はいはい、今回は様子見に行くだけだからチャンバラはないと思うよ」
「えー・・・」
いつの間にこんなに好戦的になったんだ。
「私達はあなたの役に立ちたいのです。今のところチャンバラぐらいしか役に立たないので」
マシロ達もタダで養われるのは嫌みたいだ。
「ああ、そう言うことか。大丈夫だよ。学校をやり始めたらいろいろインストールして、先生やって貰わないとだから」
「はーい、私は魔力の研究やりたいでーす」
おお、アオイは魔力を研究したいのか、地頭は結構良さそうだから任せたいな。
「とりあえず10日分の水を確保するぞ」
「オー」×5
「ウォン」
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〇平涼 転移91日目
流石に中東・ヨーロッパとの交易路だっただけあって結構道は広いし、きれいだ。
朝早くから走って平涼を越えた。ここで夜営する。
〇武威 転移92日目
田畑以外は木も草もない、山道をひた走る。
武威を越えたところで夜営する。
〇白虎国 転移93日目
夕方着いたので、とりあえず王城に到着の連絡だけ入れる。
「ここから少し西に行ったところに嘉峪関があって、そこが信帝国と西域の境界になってるのよ」
マシロはここに転移したので少しは分かるらしい。まあ、その時は言葉が分からなかったからほんの少しだけどな。
〇白虎国 王城 転移94日目
明るくなって周りを見ると、やはり砂漠の中の街と言う感じで砂っぽい。
あまり背の高い建物がない中でそびえたつのが王城だ。
門番に話をするとすでに白虎王に話は通っており、俺達は城に入ることになった。
すぐに従者も含め執務室に通された。
部屋には火はないが暖炉があり、北の国に来たのだと思った。
西域と言うより北西だからな。西には砂漠があって人は住めないから、仕方がないと言えば仕方ない。
やがて現れたのは壮年のおじさんだ。これが獣王とも呼ばれる白虎王らしい。
白い髪と丸い虎の耳、白虎の獣人みたいだ。
「あなたが帝国相談役ですか。お若いですな」
まあ、中身はおっさんなんだけどな。
しかし、身分的には四天王とほぼ同等なんだよな。朱雀国の場合、俺が命運を握ってたから、対応が良かったけど、身分で対応が良いのはちょっとくすぐったい。
「これが天帝様からの命令書です」
白虎王は命令書を確認する。ちょっと顔色が悪くなる。
「いや、ここで反乱が起きているわけではなく、どちらかと言えばストライキでして、しかもそれが天都から来ている兵なので、こちらも困っているわけです」
うん、なにか風向きが変わって来たぞ。反乱ならその事実を天帝様に伝えればいいだけだが、ストライキならその理由を調べて、解決に導かないといけない。
白虎王から聞かされた話ではこの街の西側にある国境の城、嘉峪関に1000名の兵が天都から派遣されているが、その兵が不満を抱きサボタージュをしていて困っているそうだ。
「敵はどうするんですか。攻め寄せてはこないんですか」
「はあ、敵?。敵なんか俺がここの王になって20年、いや100年以上見たことがないぞ」
「はああ???、その1000名は援軍なんですよね?」
「いや、こちらから援軍を求めたことは無いのだが。なぜか送られてきて、嘉峪関の守りについているんだ」
はあ、なんでこんなことになってるんだ。とりあえず天帝様に連絡を取るか。
『天帝様、今よろしいですか?』
『すまん、今は朝の会議中だ。午後からにしてくれるか』
『分かりました』
そうか午前中は会議だったか。朝廷って言うぐらいだからな。
「誰か、嘉峪関に案内していただける人を紹介いただけますか」
仕方ない実際の兵に聞いてみるしかあるまい。
「私が行ってあげる!」
白虎王が部下に指示をしようと腰を上げかけた時、いきなりドアが開き現れた少女がそう言った。
「ジュレイ!、お前また立ち聞きを!」
白い髪をポニーテールにした少女は白虎王と同じ獣人だった。
「すみません、この子は私の娘で好奇心が強くていつもしゃしゃり出て来るんです」
白虎王は極めて遺憾ですって表情でそう言った。
「早速、行きましょう」
ジュレイは有無をも言わさず、ポニーテールを翻した。
俺は白虎王を見た。
「申し訳ないが良ければ、あの子に案内をさせてもらえんかな」
娘に弱い父親がここにいる。まあ、俺もだから気にしないよ。
俺はジュレイについて行くことにした。
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次回は嘉峪関で調査を行います。




