3-1 産業革命
ご愛読、ありがとうございます。
産業革命の説明会です。この場合第一次産業革命の事です。
クーヤは産業革命について天帝様達にプレゼンする。
そのための準備を始めたクーヤと従者達。
〇帝城宿泊所 転移89日目
「お取り寄せが来たよお!」
元気よくアオイがナビさんに取り寄せてもらったものを食卓の上に広げた。
「なにこれ!アタイ達に着ろって言うのか?!」
「あんた達クーヤ君を手伝いたいんでしょう。なら繊維産業のサンプルを見せないと」
「ちょっと、短すぎない?」
「大丈夫よ。高校時代はもっと短くしてたじゃない」
「そ、それは若さゆえの過ちってやつだよ」
「とりあえず着てみてよ」
アカネとマシロは服を持って寝室に駆けこんだ。
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〇帝城大会議室
クーヤは正面にある大きなボードに①~⑦の項目を書いた。
①製鉄炉による鋼鉄の大量生産
②蒸気機関又は魔導機関の作成
③交通革命
④紡績機、織機による繊維産業の機械化
⑤労働者階級の形成
⑥資本主義経済の拡大
⑦国際貿易の拡大
俺はボードに書いた項目を説明を始めた。
「今日は産業革命をどう起こすのか、起きるとどうなるのかを説明しておきたいと思います。
まず①ですが前回の会議で申し上げました学校の設立によって、製鉄のノウハウを学生に学んでもらって鋼鉄の大量生産の人材を育てます。その人材によって各所に製鉄所を作ります。鉄は炭鉱から製鉄所に線路を繋いだり各種の機械を作ります」
これは前回説明したので質問はない。
「②は産業革命の動力となるものです。車や船・動力車の動力として走らせる。工場の動力として機械を動かす。最終的には発電所の動力としたい」
「蒸気機関と魔導機関の説明を頼む」
新しい言葉だから説明が必要だとは思った。
「蒸気機関は一部鉱山等で排水ポンプとして利用されている物ですが、もっと効率を上げ、物を運搬する動力として使用します。
魔導機関は私のゴーレム車を見ていただければ、ゴーレムで多くのものを運搬できることが分かっていただけると思います。ただ人の魔力では大きな荷物は運べないので、魔素を魔力に変換するジェネレータや魔力を蓄積する物が必要になります。学校ではこれを優先的に研究することになります」
言葉として言ったが実物を見せないと納得しないと思う。それは今後の課題だ。
「③の交通革命は②が出来て、道や線路・航路が整備されると、物流の量が今の数千倍・数万倍となります」
マシロがミニの秘書スーツの姿で列車、トラック、輸送船のカラー画を二人に一枚ずつ配っていく。マシロがなかなか色っぽい。刺しゅう入りのパンストがメインだからね。よく見てもらおう。
「そんな量の物が売れるのかね?」
「はい、動力を使って、工場でいろいろなものを作り始めると物の品質が上がり、価格が下がります。また工場で働く人々はその対価としてお金を貰い、工場の製品を買うようになります。またほかの国も我が国の製品を求めてきますからしばらくは生産量が減ることは無いでしょう」
「④の繊維産業は主に綿の紡績、布、服などを機械で作るものです。もちろん絹や羊毛なども含みます。
この産業は機械化がしやすく需要を見込めますので、優先的にかかりたいと思います。もちろん綿の栽培、外国からの買い付けなども必要になるでしょう」
「ワシにはそんなに服が売れるとは思わんのだがな」
「服の値段はおそらく10分の1以下になると思います。その結果庶民でも夏物・冬物・合い物と別個に持つようになると思いますし、赤ちゃんの肌着も浸透すると早逝することも減りますし、服を買う人口は爆発的に増えると思いますよ」
「⑤の労働者階級は産業革命が始まると爆発的に増えます。農業も機械化して集約すると農家の次男坊以下の仕事が無くなります。彼らは都市に出て工場に勤めることになります。繊維産業は女性の仕事がたくさんありますし、都市に人口が集中し始めます。そうすると労働者階級が形成されます。彼らは今まで農産物などを作ってましたから、現金をほとんど持っていませんでしたが、労働者階級は給金として現金を持って、それを生活の糧に変えることによって生活します。よって貨幣経済が一気に加速します」
「⑥は貨幣経済が進むと銀行・株などの信用を金に換えるシステムが働き始めます。これがないと大きな仕事ができないので必然的に生まれてきます。あと経済規模に金貨が足りなくなって紙幣経済つまり紙のお金ですね、に推移するでしょう」
「君の世界では紙の金を使ってると言うのかね?」
「これは日本で使ってる1万円札で大銀貨1枚分の価値があります」
アカネがこれもスーツ姿で紙幣を見せて回る。アカネは背が高いからスーパーモデルみたいだ。
アオイのプロデュースはそれなりに受けたみたいだ。
「最後の⑦ですが今はアジアしか貨幣文化がないようなので狭いですが、ヨーロッパやアフリカが平和になれば、さらには南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸の開発が進み、産業革命が広がっていき、世界中が必要な資源や製品を貿易することになります」
「君は信帝国にのみ産業革命をもたらすのではないのか?」
「俺は依頼されればどこの国でも起こしますよ。産業革命。だってあなた方だけ儲けたら世界中から恨まれることになりますよ」
俺はプレゼンを終わらせた。でも拍手はない。簡単なことしか言わなかったつもりだが難しすぎたのだろうか。
天帝様が立ち上がった。
「クーヤよ。おまえが言ってることは④くらいまでしか理解できん。しかし、国民も労働者階級となれば豊かな生活が出来て、幸せな生活を掴む権利が出来ると言うことじゃな」
まあ、そう言うことなんだが、さすが天帝は革命の恩賜をちゃんと捉えている。
「産業革命には政治のバックアップやインフラの整備が重要になります。俺としては最初の立ち上げだけをやるつもりです。まあ、4、5年くらいを目途にします」
「お前は種を蒔いて、収穫をしないと言うのか?」
「まあ、多少は収穫できると思いますよ。でもこれは俺の世界の先人の知恵なので、俺があまり利益を受けるのは違うと思うんですよ」
あとたくさんの質問を受けたが順調にプレゼンを終えた。
もちろん学校の設立は約束してもらった。
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〇某所 第三者視点
軍服に身を包んだ恰幅の良い初老の男性が壮年の技術士官に話しかけていた。
「ふん、金貨が足りなくなるなど、夢の話だな」
「いいえ、そうとも限りません。今でも金貨がない時は手形を使用します。それが万倍になったら・・・大金貨が億枚あっても足りないでしょう」
彼の言ってることはもっともである。この世界ではアジア以外の金が放置されているので。金の総量が圧倒的に少ないのだ。
「つまりは手形を発行すると言うことか?」
「手形は期間内に金と交換するものです。紙幣は金と交換しないのでしょう。そうしないと意味がありません」
クーヤの世界でも1970年代まで金本位制を取っていたが、米大統領がドルと金を交換しないと言ったのだ。
なお紙幣を初めて発行したのは元代の中国らしい。
「奴の言ったことを簡単に説明せい」
「要するに機会を使って物を高品質で安価に作り、それを庶民や外国に売ることによって国を豊かにすると言うことでしょう」
「では国内の販売には座を通すのだな」
「それはしないでしょう。今までの座で扱える量ではありません」
「ではやはり、我々とは敵対するしかないか?」
「前は座を見放すといっていませんでしたか?」
「もちろんだ。しかし過渡期には座を利用できるのではないか」
「見切りをつける時期を見余らないようにしてください」
「分かっておるわ。しかし、わしの懐に入ってくる金も万倍になると言うことよ。笑いが止まらんわ。ガハハハハ」
座と言うのは本来は同一業種の互助組織として設立されたが、やがて暴力や権力でみかじめ料を徴収する組織に成り下がる。なお警察権力に屈しない為、寺社や貴族をバックにした。
織田信長の楽市楽座の楽座は座を排除すると言うことだ。
西洋では商業ギルドが同様に有名である。
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〇帝城 宿泊所
産業革命の二回目のプレゼンが終わって俺は食卓でゆっくりしていた。
「ねえねえ、私達のコスプレどうだった」
マシロが正面から聞いてきた。
「ああ、カッコ良かったよ。ストッキングの縫い目がないのも受けてた」
「ああ、私の足に視線が集まってる感じがしたんだよな。そう言うことか。マシロは上半身だったけどな」
アカネの言葉にマシロが頬を膨らませる。
「私達も役に立ったようで良かったです」
「私達もお役に立ちたかったです」
ミヤとヒイが抗議する。
「君達はまだお子様だからね」
まあ、二人に秘書スーツはまだ似合わないな。
「アオイさんも出てなかったです」
「私は従者になったばかりで、そんなに綺麗になってないからね」
「え、従者って綺麗になるの?」
俺は驚いた。
「呆れた、気付いてなかったの。身体強化の一端で気になるところを治してくれるのよ」
「鈍感極まれりだな」
ああ、ぼろくそ言われる。そういやヒイがミヤがどんどん可愛くなっていったのはそう言うことだったのか。親の欲目だと思ってた。本当に可愛いんだな。
「ああ、またヒイちゃんやミヤちゃんに夢中になって」
〇宿泊所 第三者視点
夜になると転移組が集まって何やら話し合ってる。
「やっぱり、従者の立場は捨てられないわね」
「従者のまま、よそに嫁に行くのも考えられるぞ」
「それってまともにできるのか分からないじゃん」
「いずれにしてもこのままじゃ不安定ってことね」
「じゃあ、どうすんだ」
「安定した地位を手に入れるってことね」
「帰ることは諦めたのか」
「前に話し合ったでしょ。日本に帰って生きていける保証がないの。それこそ原始人みたいな生活かもしれないのよ」
「そうかそうだったな」
クーヤはともかく三人も日本に転移ポイントを見つけられずにいた。
もう日本には文化的な生活は残っていないのかもしれない。
そして三人は孤児だ。日本に縁者が居る訳じゃない。
「アオイは何か考えているの」
「私はクーヤ君の言ってた魔力発電の研究をしたいなと思ってる。そしてクーヤ君の愛人になりたい」
「な、何言ってるの。彼はミヤちゃんやヒイちゃんと結婚の約束をしているのよ」
「ここは日本じゃない、重婚でも一夫多妻でも自由よ」
「そ、そんなこと考えるか?」
「でも私達に価値を見出してくれるのはこの世界ではクーヤ君だけだよ」
「まあ、今は結論を急ぐべきではないわ。ね、そうでしょ」
「そうだな。そのとおりだ」
「あんた達がそう思うならそれでいいよ」
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次回は産業革命に向けて市民向けのイベントを依頼されます。




