2-11 アオイの決断
ご愛読、ありがとうございます。
アオイが合流しました。
朱雀国が連絡を絶った理由は先王が崩御したが、墓所で行うはずの儀式を魔獣に墓所を占拠されたため、皇太子が即位できないというものであった。
クーヤは皇太子が仮即位が出来るようになってからか、そのまま帰るのか迷うのだった。
一方。秘密を守るため軟禁されていたアオイは、秘密がクーヤに暴かれたので解放された。
〇朱雀国王都郊外 転移83日目
俺とアオイは皆が待つ王都郊外に来た。
従者回路で俺が近くに来たことは分かるから、みんな車の外に出ていたよ。
「おかえりなさい」
ヒイとミヤは俺のところへ、アカネとマシロはアオイのところへ行って抱き合った。
ヒイとミヤは泣いているようだ。少し脅しすぎたかな。
でも宰相が保守派だったら危なかったんだよな。
「アオイ、よく無事で」
「ごめん、何言ってんのか分かんない」
「そうよ。従者になってないんだから日本語で話さないと」
以後、日本語で再会を喜んでた。
俺達はヒイの家を建てる場所を車で探して、街道から見えない場所に家を建てた。
空中から鉄板張りの家が出て来てアオイが驚いた。
「バイクや車が消えるし、家が出てくるし、どうなってんの?」
「こんなので驚いてたら、そのうち気を失うわよ」
アオイとマシロが家を見上げながら話してる。
「そう言えばさ、あの子達、なんで猫耳や犬耳付けてるの?」
「そっかあ、アオイは外に出たことなかったんだね。鳳凰人は耳は普通だから解らなかったかもしれないけど、あの人たちのこの子達も獣人って言って、人なんだけど動物の特徴を持ってるの。角が生えてる人もいるんだよ」
「ええ、あの耳本物なの!」
アオイはかなり驚いていると玄関からヒイとハイジが出て来た。
ハイジが中型犬ぐらいから3mくらいまで巨大化する。ヒイはその背中に飛び乗って、散歩に出かけて行った。
「なにあれ、・・・もしかしてフェンリル?まるでラノベのファンタジーみたい」
「ああ、ハイジは魔獣でヒイちゃんの従魔なんだ。魔力で体を作ってるからあんなに大きくなれるんだ」
マシロに説明されながら家の中に入る。
「うわ、真っ暗じゃん。明かり無いの?」
マシロがライトの魔石に魔力を注ぎ照明を点ける。
「え、あんた、魔法を使えるの?」
「うん、私達はクーヤさんの従者になったから魔法を使えるんだよ」
「従者って何?もしかして奴隷とか?」
「ううん、違うよ。従者って言ってもクーヤさんに従う必要はないし、いろんな特典もある。ここにきたのだって、クーヤさんは危ないから残れって言ったんだけど、アオイを助けたかったから来たんだ」
そう言ってマシロは家の中を案内する。
トイレ・洗面所兼脱衣所・お風呂・寝室・台所、まあ部屋はこれだけしかないんだけどな。
そういや布団がカクタスの奴しかないか。新しいのを買うか。ついでに服も買ってやらないと学生服の着た切り雀は可愛そうだな。
マシロに言って見繕わせよう。身長はミヤくらいだがグラマラスだから同じサイズと言う訳にもいかないだろう。
俺はミヤ・アカネと夕食の準備を始める。
ヒイは戻って来ていて、お風呂を入れてる。
ハイジは玄関で小さくなって寝ている。このまま天都に帰れるといいが。
〇ヒイの家 寝室 アオイ
「やっぱり下着は日本製がいいね。このかぼちゃパンツはごわごわする」
パンツを日本製に履き替えた私はブラも日本製に変える。伸縮素材のレベルが違う。
Tシャツとショートパンツも色違いを買ってもらった。
「どうやって日本のものを買ってるの?」
「クーヤさんの従者のAI、ナビさんって言うんだけど。転移する前の日本と繋がってて、ネットから商品倉庫にアクセスして品物を転移して、クーヤさんの口座から店に代金を送金するんだよ」
Tシャツ、ショートパンツに着替える私の問いにマシロは丁寧に答えてくれる。
「その後日本は滅びるんでしょう。代金払う必要ある?」
「多分滅びてないよ。主要都市や米軍基地、自衛隊の基地なんかはやられたでしょうけど」
「じゃあ、日本に帰れるじゃん」
マシロはため息を吐いた。
「それがね。私達の居た時間には帰れないらしくて、その後の時間には繋がらないらしいの」
核爆発の後の世界は別の世界になってるのかな。それにしてもやっぱりタイムマシンのパラドックスは存在するんだね。
「従者の特典を教えてよ」
「これはクーヤさんと従者契約をすると魔力回路が出来て、魔法を使えるようになるの。言葉が話せるようになるし、私の場合結界って言う異能を持ってて、任意に透明な壁を作って攻撃や災害を止めることが出来るの」
「へえ、すごいね。私にも異能ってあるのかな?」
「誰でも一つは持ってるらしいよ。多い人は多いらしいけど。
「それから身体強化。普段の3倍くらいの力が出せるらしいわ。事実私も山賊に負けなかったし。それから病気になりにくいの。風邪やホルモンバランスの乱れなんかや癌にもならないらしいよ。それに生理を止められるんだよ」
「え、あれを止められるの。あの時は女に生まれたことを呪うぐらいなのに」
「うん、第二次性徴が終わってたら止められるんだって。何時でも再開できるから安心だよ。でもミヤちゃんみたいに始まったばかりだと成長するのに必要なんだって。でもあまりつらくならないようにしてくれるんだよ」
「マシロは止めてるの?私も止められるのかな?」
「もちろん止めてるよ、男の人と暮らしてるから恥ずかしいのもあるから。あんたは私より二か月若いだけでしょ。多分大丈夫だと思うよ」
私は5月生まれ、マシロは3月生まれで学年は違うけど、同じ年の二か月差なんだ
「それから従者通信、クーヤさんとか従者同士で離れてても会話が出来るんだ。私達ってヒイちゃんやミヤちゃんと同じ部屋で寝てるし、彼女達はお子様だから10時くらいには寝ちゃうのね。だからその後はアカネと従者通信でだべるんだ。喋らなくてもいいの念じるだけ」
ふーん、メールみたいな機能はないのね。それでもかなり便利ね。こちらには携帯どころか固定電話もないから。
「それから脳内地図。クーヤさんと従者が行った事がある場所が頭の中で地図になるの。見た風景も地図に対応してくれるんだ」
それだと誰も行った事のないところは地図になってない、あまり役に立たないのでは。
「最後はインストールね。インストールは日本で過去100年ぐらいに死んだ人間の霊を私達に憑依させる異能よ。達人の霊をインストールすればその技を再現できるし、短期間で習得することも可能よ。今私は薙刀名人を、アカネは槍の名人をインストールしているわ。インストールには魔力回路にスロットを作ってそこにインストールするのだけど、私達には二つのスロットがあってもう一つインストールすることが可能よ。クーヤさんからは護身用に無手の格闘術を入れてくれって言われてる」
これって逆にクーヤくんの従者にならないと無力で無価値な女の子でしかないって事じゃん。
この世界は良くは知らないけど、無力な女の子が無条件で生きることが出来るほど、やさしい世界じゃないことは分かる。なにせバカみたいな理由で3か月近く軟禁されてたんだから。
「それじゃあ、私も従者になった方が良いってことね」
「そうね、私達も従者になるまで4、5日考えてたんだけど部屋の中でじっとしているしかなかったわ」
少し、イラっとした。
「なぜ、すぐに従者にならなかったの?」
「だって奴隷とかにならないか心配だったのよ」
そんなのヒイちゃんやミヤちゃんを見れば、すぐに奴隷じゃないって分かるじゃん。
結局二人はクーヤ君に甘えてたんだ。
〇ヒイの家 台所兼食堂兼クーヤの寝室 アオイ
夕食が終わって後片付けは私とマシロの仕事だ。
クーヤさんはお風呂に行く。
「センセー、背中洗ってあげる」
「ヒイダメだよ。今日は二人でお風呂掃除でしょ」
「別にいいでしょ。お風呂に入るのはミヤちゃんと入るから」
「ダメだって、濡れると風邪ひくでしょ」
何を話してるのかは分からいけど、二人は姉妹と間違うぐらいの親密さだ。
二人に親はいないそうだ。だからクーヤ君が引き取った。
私達も孤児だ。だから面倒を見てくれるのだろうか。
話がしたい。できれば二人きりで・・・。
「アオイ、あんた、アカネとお風呂に入っておいで」
後片付けが終わったマシロが、明日の飲み水になる湯冷ましを作り始めていた。
「え、」
「あんたはまだ魔石でお湯を作れないから、誰かと一緒でないとね」
そうか魔力回路がないから、お湯も作れない。
自分の無力を思い知らされる。私は今のままではお荷物になるだけだ。
やっぱり、私も従者にしてもらおう。
「アオイ、行こう」
アカネが私を誘ってくれた。
脱衣所で服を脱ぎ始める。
「あれアカネ、ファンデーション付けてない」
「おう、すっぴんだぞ」
「きれいな肌、背が少し低くなった?」
「従者になって、劣等感を感じてたところが良くなったぞ。これを見ろ」
そう言って私に向き直った。
胸がある!
半年前に見た時にはほとんど膨らんでなかったのに、Bぐらいはあるではないか。
「どうしたのこれ?」
「うーん、良く解らんが身体強化のおかげらしい。マシロの胸も少し小さくなって、垂れてたのが張りがあるようになったし、あれだけあった背中の黒子もなくなったぞ」
信じられない、美容整形みたいなこともできるの。いえ、それ以上だわ。
これをナビさんって言うAIがやってるの?
恐らくクーヤ君は関与してないはず。じ、じゃあ、自律AIなの。
魔法とコンピューターが合わさるなんて、とんでもないことだわ。
ヒイちゃんとミヤちゃんがお風呂を上がると女性陣は寝室に籠った。
私はクーヤ君の居る台所に行った。
「クーヤ君、お話がしたいです」
「ああ、良いよ」
パジャマ姿で彼の前に座った私をクーヤ君は優しい目で見ていた。
「身体強化ってどこまでできるんですか?」
私はアカネに聞いたことを話した。
「いや、美容整形が出来るとは聞いてないな。まあ、本人の希望なら良いんじゃないか。そういやまたコンピューターの台数増やすって金を取られたな」
まるで従者のAIがやることを気にしてない。AIに支配される未来を考えないのだろうか。
いや、AIの話をしに来たんじゃない。
「私を従者にしてくれませんか」
「うーん、君は従者のメリットを考えて行っているようだね。俺としてはある程度の信頼関係が欲しい。だからちょっと待ってくれるかな」
「うー、断られるとは思ってませんでした」
ショックが大だわ。
「ごめんね。まあ、すぐに信頼関係を結べるんじゃないかと思うよ」
「もう一つ、お願いがあります。朱雀国の王女を助けて欲しいです」
クーヤ君が朱雀国の依頼を断ったことはだいたい分かった。
「それは難しいな。今のところ確実に勝つ方法が分からない」
「私は軟禁されていたけど、スイリンに励まされて精神を正常に保てました」
「分かった。とりあえずその場所に行ってみて、勝てる目があるなら引き受けよう」
クーヤ君は難しい顔をしていましたが現場は確認してくれるようです。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回は墓所に確認しに行きます。




