2-10 朱雀王国の危機
ご愛読、ありがとうございます。
王城で朱雀国の置かれた立場を知ります。
いよいよ朱雀国王城に迫ったクーヤは女性陣に車で待機を命じた。
〇朱雀国王城 転移83日目
俺とトウガイは朱雀国王城に来ていた。
「トーヤ殿、俺に先に交渉させてもらえないか」
バイクを降りるとトウガイがそう申し出た。
俺は警戒はしていた。
俺を軟禁するにしても殺すにしても、天都への連絡はマシロ達がしてくれる。
朱雀国が恐れてるのは国王が死んで、時代の王が即位できてないことを天都に知られることだ。
二ヶ月以上即位が遅れているのがバレると朱雀国の格が下がるらしい。
では儀式をせずに即位すると内政が立ち往かなくなるらしい。
伝統を重視する貴族が反旗を翻す可能性もあるらしい。
「30分以内に報告しろ。報告がない場合、天都に帰るからな」
そう言ってトウガイを送り出して、俺は正門外で待つことにした。
朱雀国の街や王城は青龍国に比べて小さい。版図が小さいと言うことである。
俺はマシロ達に1時間以上の場所に離れるように従者通信を送った。
追手を送られたときに逃げられるようにしたのだ。
流石に今回の相手は国家だ山賊達とは相手が違う。
ふと、考えると俺には策士的な奴が必要じゃないかと思うし、情報を収集してくれる者もいるかな。
いやいや、俺って何を目指してるのか?そうだな3年は信帝国で頑張って見るか。
後は東南アジアをめぐってみたいな、海がきれいなんだろうな。
マシロの水着姿を見てみたい。
そんな事を考えているとトウガイが爺さんを連れて来た。
高級そうな服を着てるから偉いさんなんだろう。
二人は門まで来て手招きする。
俺は警戒しながら二人の元に行く。
怪しいところはなかった。使者とはいえこんな若造に会ってくれるんだから、そこそこ期待してしまう。
「君がクーヤ殿だね」
爺さんが話しかけて来た。言葉にすごみがある。こいつは大物だな。
「はい、天帝様の使者として参りました」
「ワシはこの国の宰相をやっているハクキと申す。やはり連絡を絶っていることを調べに来たのだね」
「そう言うことになりますね」
この国のナンバー2か。まあ、嘘ではなさそうだ。
嘘を言っても仕方がない。俺は正直に答えて、爺さんに天帝様の書簡を渡す。
「国王陛下がいないなら、あなたに受け取ってもらうしかないですね」
「では受け取ろう。それはさておき、ちょっと込み入った話もある。城に来てくれんかね」
俺は丸腰だが、兵が揃えられてるわけでもない。俺は城に入ることにした。
応接室に入り、宰相が上座を避け着席したので、俺も上座を避けてその向かいに着席する。
「トウガイ、殿下を呼んできてくれ」
殿下と言うと次代の女王か。
「はい」
トウガイが出て行き、部屋には俺と宰相の二人だ。
「さて、君のような人が天帝陛下の周りにいるのは聞いたことがない。君はもしかすると転移者かな?」
おっと、さすがに鋭い。隠しても仕方がないので正直に言う。
「はい、そうです」
「やはりか。君の外面にある優しさはアオイと共通する。余程平和な世界から来たのだろう。しかし君の中には反骨心が隠れているようじゃ」
まあ、課長にいじめられたからな。しかしこの爺さんの洞察力には脱帽するぜ。
「それより、連絡を絶った訳を教えてもらえますか?」
俺は人物評を聞きに来たわけじゃない。
「すまんな。その話は殿下からしていただく。まあ、今のは君の無聊を慰めようと思ったのじゃ」
俺の緊張を和らげようとした訳か。俺は敵地に居るかも知れんのだから、緊張を解く必要はない。
ちょうどその時扉が開いて、トウガイが現れた。
「皇太子殿下の御なりです」
きらびやかな衣装をまとった少女と屈強な護衛が4人、それと背の低い(ミヤと同じぐらいか)学生服に身を包んだ美少女が一人、この子がアオイか。
護衛二人は扉の前に立った。宰相が立ってお辞儀をしたので俺もそれに倣う。
トウガイは宰相の後ろに立ち、護衛の残りは上座の後ろに立った。
殿下は上座に腰かけ、アオイを横に座らせる。
「天帝様からの使者、ご苦労である。座れ」
殿下の言葉で宰相が座ったので、俺も腰掛ける。
宰相が天帝様の書簡を殿下に渡す。時代劇か!あまりに遅い展開に腹が立ってきた。
殿下が書簡を読み始めた。内容は分かってるだろうが!
落ち着け、ここは日本じゃない。郷に入れば郷に従えだ。心を落ち着かせる。
「天帝様からのご要望は二つです。
連絡を絶っている理由と連絡の再開です。
もう一つは転生者アオイ殿の身柄を天都に届けることです」
いつの間に呼んだのか宰相が殿下に告げる。
「なお、使者殿はバンコ族は退治され、前の使者を脅したことは知られています。また、副使を王都外に残し、使者に事故があればそのまま王都に戻る体制です」
つまり朱雀国は王手が掛かってる。
下手をすれば謀反と見られる。天都から鎮圧軍が来ると言うことだ。
「宰相」
殿下はそう言っただけだ。丸投げしたな。
もしかすると使者の追い返しにも加担してないかも。
「はっ、我々が即位を行えないのは儀式が出来ないからです。なぜ儀式が出来ないかと言えば儀式を行う墓所が魔獣に占拠されているからです」
魔獣、魔獣ぐらいで、ここの兵は何をしているのだ。
「その魔獣と言うのが巨大な虎なのですよ。弓矢は効かないし、墓所に行く道が狭く兵二人が並ぶのやっとです。ですから余程の強者でないと魔獣の相手が務まりません」
なるほど、たくさんの兵で囲むこともできないのか。近くに寄っても爪と牙があるから槍で届くかどうかだな。
虎の大きさは3m前後、魔獣ともなれば4~5mにもなるだろう。体重は700kg~1t、普通の人間が勝てるものではないだろう。しかも横や後ろに回ることもできない。
「正直に天帝様に申し上げてはどうでしょう」
俺達でも勝ち筋が見えない。所謂お手上げというやつだ。
「それが出来れば苦労はない。我ら四天王は、外部から攻撃を退けることで存在する。それを魔獣1匹に降参するなど出来ることではない」
青龍王、朱雀王、白虎王、玄武王は信帝国の東西南北を守るために王の位を与えられてる。王には税の免除の他、自治権など他の貴族に比べてかなり優遇されているのだ。
「ではどうするのですか?」
「今は魔獣が墓所から去っていくのを待っています。そうだクーヤ殿はバンコ族を簡単に撃退した強者、どうか魔獣を退治していただけないか?」
あ、やっぱり言って来たか。
魔獣が離れないのは魔素が湧き出る場所なんだろうな、魔獣が飢えることもないのだろう。
「いやあ、その条件だときついですね。勝ち目がありません」
ネコ科の動物だ。俺の瞬歩でも見切られるだろうし、槍と前足の間合いでも向こうが有利だもんな。
誰も言葉を発さない。完全に詰んだな。
「では俺は転生仲間のアオイを引き取って天都に帰りますね」
「ちょっと待って、あなたもしかして転生者なの」
アオイが日本語で話し掛けて来た。
「ああ、そうだよ」
突然俺とアオイが分からない言葉で話し始めたので、周りの鳳凰人は目を見張った。
「天都から来たのならアカネさんとマシロさんの事って知ってますか?」
「知ってると言うか。この近くまで君を迎えに来てるよ」
「本当ですか。会いたいです」
「今こちらの人とその話をしてるから、ちょっと待ってて」
なにか視線を感じるので殿下を見るとすごく怖い目で俺を睨んでる。
へ、俺ってなんか悪いことしたのかな。
「おまえ、アオイの言葉が分かるのか」
「ああ、日本語ですか、解りますよ」
殿下の機嫌があからさまに悪くなってる。どういうこと・・・。
俺が不思議がってるとかまわず宰相が話し出した。
「使者が現れたことはチャンスです。仮即位をやって、天都に知らせましょう」
宰相に言われて不機嫌な顔もできなかったのか、元の感情の無い顔に戻った殿下。
「しかし、保守派がそれを許すのか?」
「天帝様に知られては保守派も文句は言えません」
宰相は国のメンツより実利を取って、この場を凌ごうとしているようだ。
俺は無事にアオイを連れて帰れば何でもいい。
「クーヤ殿、3日程こちらに居ていただくわけにはまいりませんか」
「その保守派とやらは大丈夫なんですか?俺達に危害とか加えませんか?それに天帝様からの指示では2日しか余裕はありません」
まあ、こんなごたごたに首を突っ込む暇はないと言うことだな。
あれ、と思ってトウガイを見ると能面のような顔をしていて感情が見えない。
こいつバンコ族を操っていたから保守派じゃねえのかよ。
「あの、トウガイさんは大丈夫でしょうか」
「え、」
みんなきょとんとした顔をする。
宰相が気付いたのか俺に話し出した。
「トウガイは私の弟子で中道派です。保守派には脳筋が多くて使者に危害を加えそうだったので、トウガイにやって貰ってました」
へえ、中道派もあるのか、じゃあ革新派なんてえのもあるのかな。
いずれにせよ俺達は保守派に狙われそうだな。仮即位の道筋が立つまでここに居るのか、このまま帰るのか悩むなあ。やっぱり軍師的な奴が欲しいよ。
うーん、俺って戦争のことは飛龍将軍から習って得意になって来たけど、政治が苦手だよなあ。
そう言うのってインストールしたくないんだよな。軍師って石原莞爾なんかがそうだと思うけど、政治家東条英機には負けるんだよ。黒田官兵衛も徳川家康には勝てなかったしさ。
結局、政治家の不気味さに辟易してるのかなあ。
「とりあえず、城にいるのは危険そうなので、郊外に身を潜めますね。明日にでも連絡を入れます」
「では、連絡には王都のコウシュウホテルのフロントを使ってくれ。あそこは俺の叔父がやっているから秘密は守れる」
トウガイが連絡役を名乗り出た。結構大きなホテルで街道沿いで分かりやすいらしい。
「じゃあ、行くか」
アオイに日本語で声を掛ける。
「はい、お願いします」
殿下が「あ、」と小さく呟いた。
「クーヤさん通訳してください。殿下、お世話になりました。また機会がありましたらお会いしましょう」
俺はそのまま通訳してやった。
「アオイに伝えてください。私こそありがとう。私の言ってたことは内緒よ」
殿下の言葉をアオイに通訳すると彼女はニコッと殿下に笑い返した。歳の近い二人には秘めた思いがあったのだろう。
俺は他人の居ないところで、バイクを出してアオイに驚かれ、そのまま、みんなの待つ車まで戻る。
「二人とも元気なんですね。ああ、早く会いたい」
「元気すぎて困るぐらいだ」
アオイは俺にしがみ付きながら、再会に胸を膨らますのだった
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回はアオイたちの再会と決断です。




