2-7 副師団長
ご愛読、ありがとうございます。
今回は新たなクエストが提示されます。
マシロとアカネは何もできない自分達にいら立ち、クーヤの従者になる道を選んだ。
〇帝城 天帝執務室 転移79日目
俺は天都産業技術育成学校(仮)の案とそれに掛かる材料をまとめ提出した。
「ふむ、ご苦労。しかし早く仕上がったな」
宰相と一緒に資料に目を通しながら、天帝様は感心した。
実はマシロとアカネが従者になったことで、製鉄技術者のインストールが出来て、恐ろしい速度で仕上がってしまったのだ。
「宰相、これで費用を見積もってくれ」
「はい、しかしこの短い期間でこれほどの資料を完成させるとは、クーヤ殿にはずっとこの国にいて欲しいものですな」
「何を言っておる。産業革命が実になるまでは居って貰わねば困る。クーヤよ。この資料を基に予算を見積もるが、そうだな10日ぐらいは掛かるだろう。それでだなその間暇であろう」
「いいえ、近衛師団長から剣の指導をお願いされています」
「ぬ、ゲントクめ、もう目を付けおったか。良いゲントクは待たせておけ。お主には朱雀国に使いに行って語しいのだ」
朱雀国ってアオイとかいう女子高生が転移した場所だよな。
「使いとはどういうことでしょう」
「朕の巫女には四方王と連絡ができる者がいる。それが二か月ぐらい朱雀国と連絡が取れんのじゃ。2回使者を出したのだが、手前で追い返されておる。知っての通りお前達と一緒に転移した少女もいるはずだ」
なるほど俺達が転移することを王様達にどう連絡したのかと思ってたんだよね。しかしアオイだっけか、彼女もいるとなるとマシロやアカネが黙ってないだろうな。
「それで朱雀国までの距離はどれくらいですか?」
「1500kmと言うところですか。道も主要道が通ってますので、あなた方なら10日で往復できるかと思います」
宰相が丁寧に教えてくれる。
「わかりました。行きます。それでなんですが、薙刀と片鎌槍があれば譲っていただきたいのですが?」
「おお行ってくれるか。おい、こいつを武器庫に案内してやれ。しかし業物はやれんぞ」
「はい、数打ち品でなければ結構です」
「クーヤ殿、依頼金は大蔵府に言っておくから、武器を選んでから受け取っておいてくれ」
「はい」
俺は従者通信でマシロとアカネを呼んだ。
侍従の案内で武器庫に行くとマシロとアカネ・・・ヒイとミヤなんで君達が???。
「だってお姉さんが武器庫に行くって聞いたから」
要するに暇つぶしか。
「そうだ、君達に言っとかないと、明日から朱雀国に行って連絡がつかない理由を調べる。君達も付いてくるか?」
俺はアカネとマシロに聞いてみる。
「私は行くぞ。アオイを連れてこなければ」
「私も連れて行ってください」
「もしかすると山賊や魔獣と戦うこともあるかも知れん」
「そのための武器なのでしょう」
「心配するな。私が対峙してやるぞ」
あれ、この子達、普通の日本人だよね。なんでこんなの好戦的なの。
武器庫に入ると結構広くて、剣、刀槍、薙刀や名前の分からない武器も多数並んでいた。
「なんでこんなにいろいろな武器があるのですか?」
「ここには先々代の天帝様の集めた武器が収納されてます。名のある武器は別に保管されてますのでお好きなものをどうぞ」
侍従が俺に説明してくれた。
ああ、天帝様の爺さんが趣味で集めたものか、そこそこ良いものがあるみたいだ。
レベル的にはシュバルツさんの刀ぐらいかな。一般兵が使うものよりはかなり上等だ。
俺も何本か貰おうか。
いや、ほら朱雀国に行かなきゃだし、山賊が出るかもだし。折れたりすると命取りだしさ。
女の子たちの方を見るとマシロが薙刀をアカネは槍をミヤが刀をヒイは短剣を見ているようだ。
「ヒイ、お前は短剣が良いのかい?」
「うん、僕は弓矢使いだから、持っていても邪魔にならない方が良いんだ」
「フーン、良く考えているんだな。偉いぞ」
俺はヒイの頭を撫でてやる。彼女は嬉しそうに俺の方を向いてニシャッと顔を崩した。
おお、可愛いぞ。
背中をツンツン突かれて振り向くとミヤが居た。その手には脇差が握られていた。
「気に入ったのか?」
「はい。バランスがいいので使いやすそうです」
言った後で頭を突き出してきた。
なんだ・・・。あっそうか。
俺はミヤの頭を撫でてやる。この子も嬉しそうな笑顔を向けてくれる
しかし、もう子ども扱いを嫌がる年じゃないのかとも思うが、可愛いから良いか。
マシロは薙刀をアカネも片鎌槍を持ってきた。
侍従に少し広い場所で獲物を振り回す許可を得る。
「じゃあ、ここでお願いします」
武器庫の前の廊下で試しをやる。
まずはマシロから。
ビュンビュンとうなりを上げ、竜巻の如く風が渦を巻く。
凄まじい速度の切っ先が縦横無尽に駆け回る。
「いいですね。ブレもないし重さもちょうどいいです」
侍従は顔を青くしてる。
次はアカネだ。
彼女は槍を持つのは今が初めてのはず。
ビュッビュッビュッビュッ高速の突きが上下左右に繰り出される。
頭の上で両手で回転させるとブォーンと言う音がして廊下のほこりが舞い上がる。
「いいね、ほぼ思い通りだ」
ミヤの番だ
「子供じゃないですか?」
「この子はこの中で一番強いんですよ」
俺はフォローをしておいた。
ミヤは二人と違って自分が動く。
まるでボールのように壁に跳ね返り、天井で跳ね返る。
床を蹴る、ジグザグに、輪郭が捕らえられないぐらいに速い。
「気に入りました」
「刀を振る所が見えなかった」
「ミヤちゃんすごいよ」
侍従は何が起きていたか把握できないようだ。
「天帝様があなた達に依頼した理由が解った気がします」
ヒイはと言うと隅っこで短剣を一度振って、そのまま腰のホルダーに入れて終わっていた。
彼女は短剣で戦うことは想定せずに、あくまで護身用に留めるようだ。
その後大蔵府によって命令書と金貨60枚を手に入れた。
これは俺が1日当たり金貨2枚、娘達が1枚と言うことらしい。
それから食料の準備をしなくては、青龍国で貰ったコメと野菜などは、まだ大量に余ってる。なにせ1月半の予定を14日で着いたからね。布団や食器はリョウカ様達のものを使ってもらえばいい。
問題は水だ。五つの水タンクは全部空、俺も暇がないし女の子たちに任せるしかない。
午後には近衛に行って朱雀国行きの報告をしておかなくちゃいけない。それまでに井戸からタンクに水を入れる段取りをする。前に使った手押しポンプを井戸に設置してマシロとアカネに水を入れてもらう。次元収納にはナビさんに入れてもらおう。
昼食後、ヒイとミヤを連れて近衛府に行く。
「すみませーん。浅野空也と申します。近衛師団長閣下は居られますか?」
受付のお姉さんに聞いてみる。
「あの、お約束は・・・」
「居られないなら、伝言をお願いしたいんですが」
俺の後ろにいるヒイとミヤに気が付いたのか「ああ」と言った。
「少しお待ちくださいね。聞いてきます」
俺よりヒイとミヤの方がここでは顔が効くみたいだ。
「君達、こちらにも来てるのか?」
「うん、練習の後、お菓子くれたりするんだ」
なるほど、いつの間にか近衛のアイドル的存在になってたりして。
「こちらにおいでください」
戻って来たお姉さんが俺を案内して奥の扉の中に入る。
天帝様の執務室よりは少し小さいが、造りが武骨で少し優雅な装飾のある少し違和感はあるが、近衛らしいと言えばそうなのだろう。
奥の机には近衛師団長閣下と元の俺とよく似た歳と思われる精悍な細マッチョ男が立っている。ちょっと落ち着きがない感じだ
そんなラウンジセット(天帝様のところはラグジュアリーソファとテーブルと言う感じだった)に向かい合せに座ると師団長閣下から精悍細マッチョ男を紹介された。
「こいつはシリュウと言って、副師団長をしている。実務面で近衛を支えている男だ」
「クーヤです。よろしくお願いします」
俺は立って手を差し出した。
「シリュウだよろしくお願いする」
彼も立って握手を交わす。
「それで何の話だね?」
師団長閣下が少しこちらに体を出した。
「はい天帝様から、朱雀国へ行く仕事を依頼されまして、しばらくこちらに来ることが出来ませんので、そのご挨拶に伺いました」
「君は若いのにずいぶんしっかり話すんだねえ。その話なら午前中に天帝様に聞いたよ。ヒイちゃんやミヤちゃんも行くのかい?」
俺の両側に座った彼女達に聞いた。
「僕は行くよ。センセー置いてかないよねえ」
「私達はクーヤ様の従者ですから当然です」
置いてかれると思ったのか、二人は俺の脇腹あたりにしがみつく
「ハッハッハッ、君達にはうちの兵も勝てんのだから、ご主人様も頼りにしてるんじゃないか」
「すみません、お世話になったようで」
「クーヤ君、この子達はなぜこんなに強いのだ。君に教えを請えば我々も強くなれるのか?!」
今まで我慢していたのかシリュウさんが実を乗り出して、唾を飛ばしてくる。
「こら、シリュウ!落ち着かんか!」
師団長閣下に怒られる。この人は強さを渇望しているのか。それで落ち着きがなかったのね。
「すみません」
「この子達には秘術が施してあるので、ここまでは無理ですが、系統だった教育を行えば、半年で今の三倍くらいにはなれるかと思います」
俺は自信満々で答えた。カクタスやゴンタで証明されてるもんね。
「これから少し手合わせをしてくれんか」
シリュウさんが物欲しそうな顔を近寄せてくる。俺はおじさんに趣味はない。
「わ、分かりましたから、あまり近付かないでください」
彼の顔は俺の顔から数cmまで近付いていた。
俺はシリュウさんに手を引かれ、扉の外へ。
お姉さん達に奇異の目で見られながら、近衛府を出て練兵場へ。
何時持ったのか分からない木刀二本とともに。
俺とシリュウさんは向かい合った。
「いつでもどうぞ」
緊張感が満ちた。
シリュウさんが素早く小手から面へのコンビネーションで攻撃してきた。
攻撃を避けながら、観察する。出会った時のカクタス以上だな。
攻撃が避けられて後退するときの隙をついて小手を撃つ。
「あっ!」
そんなに強く叩いていないのだが、シリュウさんは木剣を取り落とす。
「まいった」
シリュウさんは少し考えていた。
「どうだ私は強くなれそうか?」
「は、間違いなくカクタス以上になれると思います」
お世辞ではなくそう言った。
「そうか、俺はまだ強くなれるのだな。クーヤ殿、あなたの帰りを待っております」
ああ、この人も脳筋そうだな。なぜ、俺の周りの男は脳筋ばかりなのか・・・。
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次回は朱雀国に旅立ちます。




