1-14 オオサカラプソディー
ご愛読、ありがとうございます。
今回は旅が再開されます。
行き倒れの少女ミヤを助けたクーヤ、彼女を引き取ってくれる人がいないので、従者として旅行に連れていくことにした。
〇スズカ峠 転移60日目
朝起きると俺の布団にはミヤが潜り込んでいた。反対側にはハイジがいたので結構暑い。
俺は矢間を空けると東の方がぼんやりと明るかった。防戦用にあちこちに弓矢用の穴を空けてある。
俺はシャワーを浴びてさっぱりした。
体を拭いて下着を着たところで戸が乱暴に開かれる。
「ご主人様!!」
ミヤだ。
「どうしたんだ。血相変えて」
「ご主人様はどうして私を抱いてくれないんですか?」
起きた時に体に変化がなかったので、文句を言って来たようだ。
「はあ、何言ってるの?」
急に怖いことを言ってくるなあと呆然とした。
「私はご主人様に気に入られようと裸も見せたし、くっついたりしたじゃないですか。ご主人様もどぎまぎしてましたよね」
この子は何を怒ってるんだろうか???。
「俺は男に裸を見られて、傷ついたりしてないか心配してただけだ」
残念だが俺は幼い少女に劣情を抱くようなことは無い。ナビさんにヒイぐらいの女の子に興奮しないように精神コントロールをしてもらってるからな。
「でも、抱いてもらえないと捨てられると聞きました」
彼女の情報源がかなり怪しい人だと思う。
「そんなことは無い。君とは従者契約を結んだ。これは両者の同意がないと破棄できない。安心してくれ。それにそう言う行為は妊娠する可能性もある。ミヤはまだ子供だ。まだ体が出来ていない。出産には危険が伴う」
「まだ初潮が来てないから大丈夫です」
こちらの人は微妙な話題でも結構オープンなんだよな。俺は赤面するよ。
「もう準備されてるかもしれないし、従者でなくても一方的に手放すことは無いから大丈夫だ」
まあ、こういうことは何回言っても安心はできないんだろうな。
「でも・・・」
「ミヤはそのいかがわしい話をした人の方が俺より信じられるのか」
「いいえ、なぜか、ご主人様の言葉は心に届くんです。でも抱いてもらうと安心できる気がするんです」
そんなもんなのかな。でもお母さんは捨てられたんだろ。これは言っちゃいけないな。
「そうだな後10年俺を思い続けてくれるなら、その時にな」
「10年も経ったら行き遅れじゃないですか。もっと早くしてください」
そうだ、この世界の適齢期は17、8歳だったな。しかし22歳が行き遅れなんて日本で言ったら袋叩きにされる。
「じ、じゃあ、あと5年でいいか?」
まあ、ミヤは可愛いし、周りの男がほっとかないだろ。
「約束ですよ。絶対に離れませんから」
顔を花が開くようにして笑うミヤは、まぶしいほど可愛かった。
この子もヒイもいずれは他の男に盗られるんだろうな。その時は俺、号泣する自信がある。
着替えた俺は、明るくなってきた外にハイジを放して朝食の準備をする。
ミヤもナビさんのおかげで本調子になっているので、目玉焼きに温野菜を添えて、あとは味噌汁とご飯だ。ミヤも家事は両親にやらされていたので、かなり手伝ってもらえたよ。
ミヤも着替えさせないとな。
まず下着、下は解るけど上は解んねえな。ヒイよりずいぶん大きいし、いるだろうな。
困った時のナビさんだな。
『日本では普通のブラよりスポーツブラが良いようですね。取り寄せますので着せてみてください』
パンイチで待ってるミヤにスポーツブラ渡す。付け方はナビさんに聞いたみたいで器用に付ける。
「これは何のために付けるのですか?」
「激しく動くとおっぱいが揺れて邪魔だろう。それとこれを付けてるとおっぱいが型崩れしにくいよ」
ミアは納得したようだ。
ネットのカタログを見せながら、服を選ばせる。
後はTシャツとタイツ。色は・・・黒を着るの?。まあ良いか。スカートとズボンはどっち、ミニスカートでこれも黒?。ブルゾンも黒なの?。まあいいかそのうち好みもはっきりしてくるだろう。
その後はミヤを外へ出して家の消毒だ。消毒液と手動式の噴霧器をネットで買って、ミヤが居たところを全部消毒だ。リョウカ様をインフルエンザにするわけにはいかんからな。
消毒液が蒸発するのを待って、家を収納庫に入れる。
「家が無くなりました。これからどうするんですか」
「これでクサツへ行くんだ。仲間が待ってる」
俺は収納庫からバイクを出す。
「これは何ですか?」
「ゴーレムバイクだ。これでクサツまで走る」
ミヤを持ち上げて、バイクの後ろの席に乗せる。
「ハイジ、小さくなって」
ハイジは普通の狼サイズから子狼に変身する。
俺は秘密兵器の抱っこ紐を取り出す。
ハイジを紐で胸に固定し、バイクにまたがる。
抱っこ紐はハイジの前足と後ろ脚が外に出るので窮屈にはならんだろ。
「さあ、行くぞ。俺にしっかり捕まって」
ミヤは俺の腹のあたりに手を回す。
バイクが走り出すとミヤの手に力が入る。
クサツまでは約50km、2時間あれば着くだろう。
******
〇クサツ
午前八時半ごろクサツに到着、市街の中央を貫くトウカイ道を走っていく。
金髪の女の子が道に飛び出て来た。
「あの子が私の仲間ですね。感じます。胸が熱くなる」
ミヤが後ろから顔を出して、ヒイの姿を捕らえようとする。
「センセー!おかえり!」
ハイジがヒイを迎えようともがくので、ヒイの少し手前で止まった。
おんぶ紐を緩めると、ハイジが飛び出してヒイに飛びついた。
ミヤのことは従者通信で、朝伝えたのでミヤを見ても驚きはしない。
「この子がミヤちゃんね。僕はヒイ、よろしく」
バイクを降りたミヤに挨拶するヒイ。ハイジに顔を舐め回されてる。
「ヒイ、みんなは?」
「こっち」
ヒイの後について行く俺達。
ホテルのロビーでリョウカ様達と合流する。
「青龍国の王女様のリョウカ様だ」
いきなり平伏するミヤ。
「良い良い、これから一緒に旅をする仲間じゃ。立つが良い」
ヒイからだいたいのことは聞いているで、彼女もおおらかに対応する。
「ミヤと申します。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
ミヤは平伏したまま謝罪する。
「良いと言っておろうが!」
ちょっとイラっとするリョウカ様。あわててミヤを立ち上がらせるクーヤ。
「今日はヒメジまで行く予定ですから早く出ましょう」
クーヤは誤魔化して出発を急かす。
「おいおい、その子の病気は大丈夫なんだろうな」
カクタスが心配するので、一応説明しておこう。
「もう完全に治っているから問題ないし、俺の従者になったから病気をうつしたりしないぞ」
カクタスは了解したと手を挙げて答えた。
「クーヤよ、旅程の話じゃが。オオサカの総督府に寄ってほしい。幼い頃世話になった叔父が居るのじゃ」
リョウカ様に言われたら断ることはできませんので、はい、寄らさせていただきますよ。
と言うことでオオサカに向かって出発した。
ミヤはワンボックスの3列目の席に座らせる。
大阪までは70km強の道程、お昼前には着くでしょう。
途中、日本で京都があった場所を通ったが小さな町があるだけだった。こちらの歴史では千年前までこの列島を支配した民族の歴史は残っていない。文字を持たなかったのか、龍人族に根絶やしにされたのか。
いずれにせよ日本に在った神社仏閣が何もないのは寂しいものがある。
予定通り、11時ぐらいに総督府に到着した。
馬車の横に車を並べて全員で総督府に入るつもりだったのだが・・・。
「総督府に入れるのは王女様と護衛二人です」
門番に言われちゃったんだよね。
リョウカ様は叔父さんと会いたいって言ってるし、ハンナさんと子供たちだけにするのも心配だ。
「大丈夫ですよ。私が二人を連れて、なにかおいしいものでも食べてきます」
ハンナさんは言うけど、俺はハンナさんより二人が心配なんだけど。
「センセー、大丈夫だよ。何かあったら僕が守ってあげるから」
ヒイが言うとハンナさんが「まあ」とか言って喜んでるけど、それが心配なんだって。
******
〇オオサカ ミヤ視点
総督府の門番さんにおいしい店を聞いて、3人と1匹で向かうことになりました。
治安は比較的良いと言っていたので心配はないはずです。
ハイジを連れていたので目当ての店は入れませんでした。
そこでちょっと離れた路地で見つけた「お好み焼き」の店に行きました。
初老の小父さんと小母さんがやっているお店で、外に食卓を出して。ここでなら大丈夫と行ってくれました。
私達は豚玉、イカ玉、モダン焼を注文して、分けていろいろ食べてみようと思いました。
残念ながら全部味は同じで、入ってるものが違うだけでしたが、本当においしくて今まで食べたことのない味でした。
店内では自分で焼いて食べるらしいけど、私はこんなにおいしく焼く自信がありません。
外側のパリパリッとしたところやキャベツがシャキシャキしているところ。そして生焼けのドロッとしたところも今まで感じたことのないおいしさでした。そしてなんといってもお好み焼の上に塗られたソースが甘じょっぱくって生地のおいしさとマッチする感じです。
「ねえねえ、もう一枚頼もうか?三人で割ったらちょうど良くない?」
ハンナさんが誘惑してきます。でもここは先輩のヒイちゃんを立てなければ。
あれ、ヒイちゃんが返事をしません。じっと店内を見ています。
「こらあ!!親父!!虫が入ってるやないか!なとしてくれるんやあ!!おお!」
店の中から怒号が聞こえます。店の引き戸は開けっ放しで、ヒイちゃんの座ってたところからは店の中が見えます。
私も店の中を覗くと、いわゆるチンピラと思われる人達4人が、奥の調理場にいる小父さんに突っかかってます。
「お兄さん達が虫を入れたの見たよ」
ヒイちゃんが立って店の中に入って行きました。
「何やと!、このガキ!!なんてこと言いやがる」
チンピラ3人がヒイちゃんを囲みます。
そのうちの1人がこちらを見ました。
「おい見てみいな。どえらいのがおるでえ」
チンピラの眼はハンナさんの胸にくぎ付けです。それは私も羨ましいけど。
「お前ら、ハンナさんに手を出すな!」
ヒイちゃんがこちらに来ようとすると残った1人が通せんぼをします。
「ハイジ!お願い!殺しちゃだめよ!」
ヒイちゃんの言葉にハイジが大きくなって、チンピラの前に出て唸ります。
「なんでえ!イヌッコロが邪魔すんな!」
私はハンナさんを立たせて、その前に立ちます。
ご主人様の従者としてハンナさんにケガさせてはいけないのです。
ハイジが前に出ようとしたチンピラに体当たりをします。チンピラは吹き飛びます。
その隙にもう1人のチンピラがこちらに来ます
「来ないでええ!!」
私が両手を突き出すとチンピラが、ハイジにやられたより飛んでいきました。
「あれえ???」
思わぬ結果に頭にクエスチョンマークがいくつも並びます。
店内を見るとすでに2人のチンピラは伸されていました。
そこに地元の警らの人達が来て、状況を聞いてチンピラを縛って連れて行きました。
小父さんはお礼にと、小ぶりのお好み焼を私達とハイジに焼いてくれました。
おいしかったし、お腹がいっぱいです。ちなみにハイジは塩分を減らしてソースなしです。
面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。
次回はヒメジで山賊退治です。




