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異世界最強の転移者と15人の美少女剣姫  作者: 西村将太郎
第1章 天都へ
13/29

1-10 リョウカ様とヒイの家

ご愛読、ありがとうございます。

やっぱり出発まで行けなかった。リョウカ様に振り回される話です。

 着々と進む、準備。天都への旅立ちまで一か月ちょっとと迫って来ていた。


 〇青龍国王城 転移26日目

 俺は今日、リョウカ様によって王城に呼び出されていた。

「カクタスよ、顔合わせかなんかかな」

 あまり、王城とかの雰囲気が好きじゃない俺はちょっとビビっていた。


 俺は天帝様の用事が済んだ後、独立して暮らしてく行くために準備をしている。おそらく今みたいに自由に時間を使える状況ではなくなるんじゃないか。そう言う思いがあるのでワンボックスやボートを用意しているのだ。


 俺の天都行はリョウカ様の天都行に便乗する形で行われる。

 青龍国の王女は異能を持つことが多く、リョウカ様は姉のシンシア様の代わりに天帝の巫女として天都へ行くことになっている。今回の交代で世話役として天都について行ったゴンタの妹も帰ってくると言っていた。


 顔合わせは応接室みたいな場所で行われた。

 ソファーには若い女性が二人座っていた。女官の服と振袖を着ている人がいるので、振袖の人がリョウカ様だろう。


「リョウカ様、クーヤ殿とお連れしました」

 カクタスが俺を紹介した。

「おお、待っていたぞ。ワシがリョウカじゃ。こちらにいるのが一緒に行くことになっておるハンナじゃ」

 女官の人はお辞儀をした。


「クーヤです。今回はご同道させていただきます、よろしくお願いします」

 俺はお辞儀をした。

「おう、まあ、座れ。話はそれからじゃ」


 俺達はリョウカ様達の向かい側に腰かけた。

 俺くらいの身分の人間が、貴人の女性の顔を直接見ることはマナー違反だ。俺はリョウカ様の腹のあたりに視線を止める。

 カクタスが隣に座ったのは、俺が失礼をしないようにするためだろう。


「さてクーヤよ。お主に来てもらったのは他でもない。ゴーレム車の事じゃ。最近近場を乗り回しておるそうじゃの」

 えー、こういう話って、日本の話とか振って、場を温めてから言うもんじゃないの。

 つい、視線を上げて顔を凝視しちゃったよ。


 色白で少し目尻の上がった細面の美少女が、俺のマナー違反を無視して続ける。

「ワシも乗せてくれ!」

 また凝視しちゃったよ。カクタスも何も言わないなと思ったら、彼もびっくりして凝視してる。


「いや、警備や経路の選定などの問題がありますから、おいそれとは行きません」

 俺はそう言ってカクタスを肘でつつく。

「そうです。姫様、どうかお考え直しをお願いします」


「いやじゃ!、クーヤ、お主もあれで天都へ行くつもりだったのじゃろう。ならばわしも乗ることがあろう!」

 カクタスもだめか。


「従者が居りますので、もし、乗れない場合はと考えては居ましたが、積極的に走らせるつもりはありませんでした」

 ヒイやハイジが増えたので、もし馬車から降ろされたらとは思っていたが、姫様を乗せるのは想定外です。


「物は試しじゃ。王城内なら構わんじゃろう。うん」

「まあ、王城内なら・・・」

 カクタス、お前なんてことを。

「決定じゃな。ゴーレム車を持ってくるが良い」


 あー、かなりの我儘姫だな。

 その後、カクタスによって王城内にコースが作られ、コーナーには警備兵が立つ事態となった。

 俺としては金持ちがいるところでは見せたくないんだよな。欲しがる人がいるから。


 人気の無いところでワンボックスを収納から出して、車寄せに付ける。

 電動スライドドアを開ける。オプションのステップ付けといてよかったよ。

「なんじゃこれは!人もおらんのに勝手に扉が開いたぞ!」


「そう言う仕様になっております。上がって奥から席についてください」

 俺は運転席から呼びかける。

 二列目シートは真ん中が通れるように一人ずつ座る様になっている。


 奥にリョウカ様、扉側にハンナさんが座った。

「ハンナさん、扉についてる取っ手を押してください」

「はい」

 カチャッと言う音がして扉が閉まっていく。


「こちらからも操作できますが、もしもの時はその取っ手を思いっきり引くと扉を開けます」

 ハンナさんをじっくり見る機会がなかったけど、ちょっとふくよかな体形でバスケットボールを二つ付けていらっしゃる。南無~。イカン拝んでしまった。


 カクタスにシートベルトと窓ガラスの開閉を説明してもらった。

 カクタスを助手席に乗せると車を走らせる。

 流石に大人4人は重いのでアクセルを踏む足から魔力を吸い取られる。


 一周約2kmのコースをゆっくりと走る。

 綺麗な平坦な道なので、ほとんど揺れないし、音もしない。エンジン音もないからね。

「静かじゃ。揺れもせんぞ」

 そりゃ馬車と比べたらね。


 リョウカ様が窓から顔を出して外の人に手を振ってる。

 一周回って車寄せに戻る。

「もう一周じゃ。もっと早く走れるのじゃろう。早く走らせよ」

 リョウカ様が命じる。


 俺は助手席のカクタスを見る。

「仕方ないな。もっと速く走れるか?」

「ああ。このコースなら3倍くらいならいける」

「おまえなあ、倍くらいにしといてくれ」

 3倍でも安全なのにな。


 ちょっと雰囲気を味わってもらうのにアクセルを強く踏み込む。ゴーレムに変えて低速トルクがぐんと増えた感じだ。4WDなのでホイルスピンはしないが、椅子にグッと押さえ付けられる。

「キャッ」

 ハンナさんから小さな悲鳴が漏れる。


「おい」

 カクタスから非難される。

 アクセルを弱める。


 タイトなコーナーが迫る。リョウカ様の顔が引きつる。馬車では絶対に減速できない距離だ。

 しかし車のブレーキは強力だ。グッとブレーキを踏み、少し弱める。車は速度を十分落としコーナーを安全に曲がっていく。


 リョウカ様の呆気にとられた顔をバックミラーで確認して、このコースで一番長い直線に入る。

 アクセルをベタ踏みするとどんどん魔力が流れ込み、速度計がぐんぐん上がる。

「おい!!」

 カクタスから鋭い声が掛かる。


 中間点からブレーキを掛ける。この車は吸排気系取っ払ってるからエンジンブレーキがあんまり効かないんだよね。

 悪いけどリョウカ様に車は嫌だと思わせないと、後が大変だからね。


 その後も安全マージンをたっぷり取ったブレーキとアクセルだけど、馬車の比じゃないよ運転をして車寄せに到着したよ。

 後ろを見るとハンナさんの胸にシートベルトが食い込んで、素晴らしい眺めになっていた。


「面白かった。・・・面白かったぞ!。もっと速く走れるのか。やってみろ」

「姫様、私は無理でございます。なにとぞ、お諦め下さい」

 ハンナさんはベルトを外し、扉を開けてさっさと降りてしまった。

 そうだろハンナさんの反応が普通だ。馬車と自動車じゃあ加速する、曲がる、減速するの次元が違う。


 それをこの姫さんはジェットコースターかなんかみたいに。

 これはあれだな。みんな嫌がっても絶叫系のアトラクションに何回も並ぶ女だな。俺の苦手なタイプだ。

 俺も緊急時のためにラリードライバーをインストールしたけど、危険な運転はするつもりはないからな。


 結局ハンナさんが降りた後、二回目ぐらいのペースで3周走らされたよ。

 俺はこれで終わったと思ってたんだよね。


 〇王城謁見の間 転移30日目

 いつもの講義が終わるころに使者が来た。龍王様から王城に来いと。

 嫌な予感がする。ヒイとハイジを連れてこいとか、この前のリョウカ様の騒ぎが関係してるんじゃないかとかね。


 まあ、行きましたよ。一人と一匹を連れてね。

 俺達が王城に着くとすぐに謁見の間に通された。

 なんと謁見の間の玉座の横に身長2m超の熊のはく製が飾られてた。早くね。


 謁見者が並ぶ位置にきた俺はヒイに注意をする。

「ヒイ、王様が来たら跪くんだよ。ハイジには「お座り」させてね」

「うん、分かった」

 ハイジは俺の言うことも聞くがヒイの方が確実だ。


 護衛の兵達が位置に着くと大臣達が前の方に並ぶ。

 その後、龍王が高い段の上にある玉座に、もったいぶって現れた。

「龍王様に礼を!」

 侍従が大声で言うと俺達は跪き、大臣たちはお辞儀をする。


 俺が来た時に会った宰相さんが前に出る。

「クーヤ殿、急ぎ来てもらったのには訳がある」

 そりゃそうでしょうよ。


「実はこないだの雨で常陸の方で洪水が起きた。救援のため急遽大金が必要になり、天都行の予算が不足することになった。ついては君のゴーレム車を貸して貰いたい」

 はああ、どういうことこないだの雨ってこちらじゃあちらついた程度じゃん。

 それに金がないから俺のゴーレム車っておかしくない。


「君のゴーレム車はゴーレム馬車の数倍の速度で走れるのだろう。宿泊日数が半分になれば旅費も半分になる」

 なるほど、そう言うことか。リョウカ様が裏に居るな。


「それと護衛だが、カクタスと君、それにヒルダとその獣魔としたら、護衛の帰りの費用も浮く。こちらは金貨50枚を用意しよう。ヒルダについてはカクタスやゴンタに聞いているよ」

 金貨50枚ね。日本なら十分お釣りも出るが、ひと月半で宿泊費が1泊金貨1枚とすると金貨45枚か食費が金貨5枚はきついな。本来の宿ではもっとかかるんだろうな。俺の懐の金を狙っているのか。


 そうか、そうすればお釣りがだいぶ出そうだ。

「一つよろしいでしょうか?」

「なんじゃ、言ってみなさい」


「道程、宿泊について俺に任せてもらえますか?」

 宰相は隣の大臣と相談を始めた。

 宰相はゴホンと咳ばらいをした。

「道程は無理のない範囲ならば任そう。宿泊については他の者に王女が蔑まれないことが条件じゃ」

「解りました」


 ******


 王城から帰った俺は急ぎ鉄板を探した。100万ちょっとで揃えることができた。

 夕方やって来たゴンタに鬼人の村で加工をお願いした。

 次の日、講義を休んでバイクでゴンタの村に行く。

 驚いたことに数十人の男が集まっていた。


 俺はゴンタが仕事で居なかったので、キヘイタに仕事の段取り、図面と金ノコを渡した。

 そして広場の地面を均してヒイの家を置く。

 ヒイの家を移動用の家屋に改造して、さらに鉄板張りにするのだ。


「家に詳しい仲間もいる。任せてくれ」

 キヘイタは胸を叩く。

 要するにこの家にみんなを宿泊させれば宿泊費は浮くし、他人に見られないところに建てれば悪評も立たない。


 まずは板葺きの屋根を平らにして鉄板を被せて釘で止めていく。

 家の中は小さな風呂場を作る。一人ずつしか入れないがないよりはましだ。

 そうこうしているうちに昼になったので近場で狩りをしているヒイとハイジを迎えに行く。


「これ、僕の家?」

 広場に置いた家を見てヒイが目を丸くした。もう屋根は半分くらい鉄板に覆われている。

 そとでヒイの作った少し歪なおにぎりを食べ始めると、シズカさんが味噌汁を持って来てくれた。


「もう、ゴンタのところに住んでるの?」

「いえ、王都の家は狭いので、広い部屋に引っ越してからになります」

「そうか待ち遠しいね」

「はい」

 シズカさんは顔を赤らめて去って行った。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

次回は出発します。多分・・・。

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