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私は三男です。三男なんです。

母と一緒に入浴することになり自分の体が女であることを再確認したトロア

ベッドの上で不貞腐れていると2人の兄がやってきて…

部屋で1人ベッドの上に倒れるようにダイブした。

嘘だ、確かに母様とは同じ体であったわけだが、なんとなーく昔から私のチンチン豆粒みたいだなとは思っていたが、思ってはいたが!

きっと内心わかっていたのかも知れないな、少しばかりショックは小さい。というか胸も小さい。

ふん、いいんだ。

私はこのまま男として生きていくんだ。

だっていまさらそんなの無理だ。お淑やかにしろーとか言われたところで私は兄2人と共に遊び三男として生活してきたのに何をいまさら女として生きなければならないのか。


「全く、勝手すぎる……」

「トロアー暇かー?」

「おや、お兄様」


この金髪碧眼で明るくかっこいい人は私のお兄様、イミルお兄様だ。私たちグリアノール家の跡継ぎ、すなわち長男。ちなみにイミルお兄様の後ろにいる黒髪吊り目の男は私の兄様、次男で根暗ですぐ怒るラナク兄様だ。

私はどちらかと言えばイミルお兄様の方が好きだ。ラナク兄様は意地悪だから嫌いだ。


「何か面白い遊びでもあるのか?」

「いや、母様と父様にお前が女だと聞いて」

「あーあー聞きたくない」

「ちゃんと聞け愚弟、とにかく座れ」

「まぁまぁラナク、まだトロアも聞いたばかりだろうし、そんなにカリカリしなくてもいいじゃないか」

「ふん、こいつが男として結婚することもあり得ないのに女だと余計にあり得なくなっただけだろう」

「見た目だけで寄ってこられるよりはいいんじゃないか?それにトロアはまだ高等部1年になりたてなんだから」


ベッドに座り直すとお兄様が隣に座っていつものように頭を撫でてくれたのだが兄様はそれが気に食わないのか立ったまま見下ろしてくるだけだ。

どうしてこうも馬が合わないのか

同じ腹から生まれているのに

幼少期の頃から6つ上の兄様はいつもピリピリした感じはあったがそれでも私のそばで私の遊んでいる姿をどっしりと構えて見ている記憶がある。記憶にあるのはそれくらいで、あとは……そうだな、私が1人で家の廊下を歩いていると勝手に現れて勝手に行き先を決めるものだから、ひっくり返って暴れてやったのもあるな。

あの時ばかりはちょっと兄様の顔が困り顔になっていて聡明なお子様だった私はすぐに辞めて言うことを聞いてやったが……


「俺は寝る、兄貴もさっさと部屋に戻れ」

「なんの話し合いもしてないじゃないか」

「話し合いなど要らん、トロアはトロアだ。昔から女みたいな奴だったからいまさら女と言われたところで変わらん」


少し乱暴に扉が閉められて兄様の行動にお兄様はやれやれと呆れている。

兎にも角にも、お兄様達は話し合いをするために来たと言っていたが、まさか私に女らしく振る舞えなどと……

いや、兄様はそんなことを言わなかったが


「あのなトロア、母様達に教えてもらう前から俺はトロアが女だと知っていたんだよ」

「何故に?」

「いや、ラナクに教えてもらった。俺は気づかなかったさ、ラナクはお前が生まれて色々世話してるうちに気づいたらしいけどな」

「お兄様は?」

「常に兄弟3人で寝ていた時期があっただろう?お前が初等部を卒業する前までだ」


確かに幼い頃から兄様は一緒に寝ることを強要してきては、1人で寝るのを許してくれなかったな。昼寝をしていても、風邪で寝込んでいても、ラナク兄様はそばにいて……

正直仲良くもないのにどうしてそこまでやるのか疑問だった。


「ラナクはお祖父様の異常な部分に気がついてすぐに守れる位置についていたんだ」


おっと出たぞお祖父様。


「特にお前が小学校に上がった時はお祖父様はそれはそれは酷かった。可愛い顔してるから魔法使いとしての儀式がどうとか言って今なら女にできるとかなんとか呟きながら徘徊してたからな。ラナクはお祖父様から視界に入れたくないなんてひっでぇ事言われるくらい嫌われてたし、なんでだろうね。

ともかく、お前が生まれた日は、ラナクが兄になった日でもある。ああ見えて侍女達を困らせるくらいトロアの世話を全部やろうとしてたくらいだ」

「………よくわからないお人ですよね兄様も」

「安心しろ、俺にもわからないからな!」


どちらにせよ、身の安全が確保されたと言うことでもあるようだな。お祖父様の亡き今なら兄様も少しは軟化するかも知れないが……


(それはそれで気持ち悪いな)




………


1人部屋を出て廊下を歩く男は急いでいるわけではないが歩く速度を早めた。この広い屋敷の中で途中大きな玄関ホールに辿り着き、中央階段を登った先には大きな肖像画が飾られていた。

3年毎に入れ替わる家族の肖像画にはまだ身長の低い幼い自分達と父と母の姿が描かれていて、それを見るとなんだかホッとする。

無事何事もなく家族5人が平和に暮らせたのだ。


(あのクソジジイの目もない今、俺が必要以上に守ってやる理由も無くなったわけか)






いや、まだだ


男で生きるにしろ女で生きるにしろ

まだまだトロアを陰で守らねばならない


(今年こそは……トロアにお兄様と呼ばせてやる)


変な気合いを入れているところをメイドに見られたが、とりあえず睨んで黙らせてから本当に部屋に帰った。

トロアが大きい兄様という意味でお兄様を使っているため、一生呼ばれる可能性がないことを小さい兄様は知るよしもなかった。


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