認めません。
「いいかい?お前は女の子なんだ」
私の両肩に両手を置いて父が唐突にそう言った。今なんと?
噂で聞いたことのあるエイプリル・フールかと思ったが今は春でもなければ夏真っ盛り、暑くて敵わない。男なのに虚弱体質なこの体は日光の光だけでも皮膚は赤くなるし何にもいいことはないから袖の長い白いシャツを着ていなければならなくてお兄様や兄様のように自由気ままな格好もできないのが腹立たしくて
「話を聞いてくれトロア」
「あぁ父様?なんですか?」
「だからお前は女の子なんだよ」
「またまたご冗談を、私のような女児がどこにいるというのですか」
ドレスだって着たことはないし、なんならズボン以外は履いたことがなければ使用人たちもみな坊ちゃんと呼んでいるじゃないか。
それを問いただすと父は頭を抱えて、「もっと早くに真実を教えておくべきだった」と嘆き始めるが隣にいる母はあらあらとでもいうように首を傾げるだけだ。
「やっぱり、遅すぎたのねぇ………」
「母様?」
母までもがこんな事を言い出すなんて世も末だな、みんなで子供を騙して何が楽しいのか。
やれやれとポーズをとって、とりあえず騙されたふりをしてあげるべきかと答えを巡らせる。
「して?なぜ私が男子として育てられたのですか?」
「それはなぁ………当主様がな……」
「お祖父様、ど変態だったのよ」
お祖父様がど変態?
私の中にあるお祖父様は家族に興味もなく1人ギャーギャー騒ぎながら魔法とやらに酔狂している姿しかなく、家族全員嫌っていたが、まぁ変態と言われれば変態なのかも知れないな……
だがそんな姿を見れたのも10日前の話
いきなりぶっ倒れてそのまま死去
葬儀をやったり埋葬したりでようやく落ち着いてきたところなのにお祖父様の話を掘り返すなんてどうかしている。
「お祖父様がねぇ、女の子が生まれたら養子としてよこせって言ってて、何するのか聞いたら魔法使いとして育てるって言い出すのよ」
「それはまたお祖父様らしい……」
「それだけならいいんだけど……お祖父様ちょっと幼い女の子の写真いっぱい集めたりしてたから……」
「おっとぉ?」
「だから貴女が生まれた時咄嗟に男の子が産まれたことにしたのよ、あのクソ親父に知られないように徹底してお兄ちゃんたちにも教えてなかった。あーやっと逝ったわ」
お祖父様の娘である母様がこんな反応をするのだからきっと婿養子の父も少しは気が楽になったに違いないな。
お祖父様が無駄に元気だった時代は婿いびりを見せられ続けたからな、私たちは………
「とにかく理由はわかったが、私が女の子だとしてもこれまで通りの生活しててもいいですよね?」
「そういうわけにもいかないでしょ?貴女もいつか結婚するんだから」
「冗談でしょう、私はまだ信じておりません」
「じゃあ今夜は母様とお風呂に入りましょう、それなら、貴女も信じるしかないでしょう?」
やれやれ、参ったなこれは……
信ぴょう性が高すぎやしませんか?
とりあえず騙されたと思って母様とお風呂に入りますか!