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魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO  作者: HasumiChouji
第一一章:Eye of the Tiger
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(4)

 ゴン……。

 自分の側の高速移動能力者がやられたのを見て、敵の水城(みずき)が重機関銃を地面に投げ捨てる。

 そして、何故か、自分の味方を制止し……。

「えっ? あたし?」

 指差したのは、こっち側の水城(みずき)

 向こうの水城(みずき)は……指を猛禽類の爪のように曲げて両手を前に出す。

 どうやら「手4つ」での力比べを申し出ているようだ。

「仕方ねえなあ……」

 そう言いながら、敵側の水城(みずき)に近付く、こっち側の水城(みずき)

 その「目」の色が変っている。

 本来は民生用・作業用である水城(みずき)の視覚センサーは着装者の視線に合せて動くようになっている。

 これは、非戦闘目的の作業、それも生身の人間や他社の強化服の着装者との共同作業などであれば、アイ・コンタクトが必要になる場合も考えられるのを考慮したものだ。

 水城(みずき)の、いわば兄弟機だが純粋な戦闘用強化装甲服(パワードスーツ)である「護国軍鬼」の場合、近接戦闘で視線の向きが判るというのは敵に重要な情報を与えるのに等しい上に、より壊れにくい構造にする為に、「着装者の視線の向きと視覚センサーの向きを連動させる」機構は有るものの、水城(みずき)のものよりも簡易な仕組みで、かつ、外から見て「視線の向き」が判別しにくいものとなっている。

 そして、今、こちら側の水城(みずき)の「目」は鏡のように銀色に輝いていた。

 戦闘用に改造された水城(みずき)の追加機能で、「目」を保護する透明装甲が光を一方向にしか透過しないマジックミラーモードになったのだ。

 向こうの水城(みずき)は、自分にない機能が、こちらの水城(みずき)に有る事を悟ったのか、かすかに首を傾げ……だが、両者は歩みを止めない。

 やがて、2体の強化装甲服(パワードスーツ)は向き合って、両手を……組まなかった。

 銃声。

 向こうの水城(みずき)の下腕部に取り付けられていた単発式らしい隠し銃が火を吹く。

 だが、こっちの水城(みずき)は……それを予期していたかのようにしゃがんで銃弾を避け、同じく、下腕部に取り付けられていた隠し(ブレード)を展開。

 相手の両方の太股を斬り裂いていた。

「韓国のヤクザなら知ってるだろ? あんたらの先輩(パイセン)が良く使ってた手だ」

「がっ……‼」

 相手が付けられた傷の位置……そこは大腿動脈。人間の体表近くを走る8つの太い動脈の1つ。至急止血をしないと死の危険さえ有る場所だ。

 そして、韓国の刑法での「殺人罪」の成立要件の1つは、日本と同じく「未必の故意を含む故意」。

 かつて、韓国でのヤクザ同士の抗争では、わざと相手の太股を日本の柳葉包丁や刺身包丁に似た刃物で刺して、裁判で「死なないように、わざと急所から外れた場所を狙ったが、まさか、あんな所に太い動脈が走ってるなんて知らなかった」と証言して、殺人罪ではなく1つ軽い暴行致死を狙う方法が使われていたらしい。

 味方が2人続けてやられたのを見た向こうの「魔法使い」系が、何か呪文を唱え……た途端に、こちらの「新人ブルー」による電撃攻撃。

 続いて、「新人レッド」の(てのひら)から赤い「気」の塊のようなモノが放たれる。

 もっとも、これは、ボクの脳が「気配」のようなモノを無意識の内に視覚に変換してるらしく、本当は、昔の漫画の「かめはめ波」みたいなモノじゃなくて「呪詛」の一種らしく「物理的に避ける」事は出来ない代りに「気配を把握(つか)めない相手には狙いを付けられない」という欠点が有る上に、同じ「魔法使い」系に対して使った際に「術」を破られたり防がれた場合には「呪詛返し」と言われる反動を喰らう事も有るらしいけど。

 とは言え、多分、単純な力や技量(うで)は、向こうの「魔法使い」系の方が上だろうけど、電撃を食って精神集中が出来ない為に、こちら側の魔法攻撃を「防ぐ」事も「呪詛返し」も出来ないようだ。

 続いて、向こうの獣化能力者2人組が、こっちに向って走り出す……。

 だが、「新人レッド」「新人ブルー」が「気弾」と電撃で牽制。

 その時、味方のトラックからドローンが飛んで来た。

 ドローンが持って来たのは……通称「長巻」。

 九〇㎝ほどの黒に近い青とピンクに近い赤に塗り分けられた、やや反りの有る強化プラスチック製の棒。

 それをバタフライ・ナイフのように展開。

 中からは「鞘」と同じ位の長さの「峰が鋸歯になっている日本刀」のような刀身が出て来る。

 この刀身は(しのぎ)を境に材料の組成などが異なっており、通常の刃の方は「技やスピードで斬り裂く」のに向いており、鋸歯の方は「力まかせに挽き裂く」のに向いている。

 鋸歯の方で付けた傷口は、かなりズタボロな状態になり、高速治癒能力者でも傷口がふさがるまでに通常の傷よりも時間がかかる。

 鞘が2色になっているのも、その場に最適な刃が、どっちなのかを、とっさの場合でも判別出来るようにする為だ。

 ボクは、長巻を振い、まだ完全回復していない2体の獣化能力者に斬撃を加える。

 獣化能力者と言っても、ボクやハヌマン・シルバーに比べて、より「一般人」に近い上に、「高速治癒能力封じ」の刃で切り裂かれた為に、傷口がふさがる前に、更に負傷する事になる。

 やがて、血を流し過ぎて、体力を失なったらしい2体は、地面にへたり込む。

「とりあえず……鎮圧完了って、とこかな?」

 ハヌマン・シルバーが、そう言った。

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