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たしかに、あの時は子犬2匹と子猫1匹に見えた。
そして、数ヶ月で大きく成長した。育ち盛りってヤツだ。
冬にボクが「本当の関東」から連れてきた3匹は、夏になった今でも兄弟のように仲良く遊んでいる。
「そろそろ、動物園に連絡して引き取ってもらうしかないな……」
ボクが住み込みで働いてる児童養護施設の理事は、そう言った。
身長一九〇㎝以上、体重一五〇㎏近く有る筋肉の塊にして武術の達人。
裏の顔は伝説級の「正義の味方」である「護国軍鬼2号鬼」。
普段は温厚だけど、「特異能力を持ってない」という意味での一般人なのに、獣化能力者であるボクが喧嘩を売っても勝てる気がしない相手だ。たとえ、ボクが獣人形態になって、この人が護国軍鬼2号鬼を着装してない状態であっても。
「いや……でも……こんなに仲がいいのに引き離してしまうのは……ちょっと……その……」
「その内、一番デカいのが、他の2匹を、じゃれついたつもりで殺してしまいかねんぞ……。その次は、ここの職員や子供が犠牲になりかねん」
「で……でも……引き取ってもらう動物園には、どう説明するんですか?」
「それは、私の方でうまい事考える」
ボクはため息をつく……。
「おかしいなぁ……。あの時は、子犬と子猫にしか思えなかったのに……」
ボクは「本当の関東」のあるテロ組織の首領の邸宅の庭で見付けた「子犬2匹と子猫1匹」の頭を撫でてやるしかなかった。
「ごめんな兄弟たち……もうすぐお別れだ……」
子狐と子狸とホワイトタイガーの子供が、ボクの言った事を理解出来る筈は無い。でも、ボクの事を兄弟か何かだと思ってるらしい3匹の子たちは……妙にさびしそうな表情をしていた。