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魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO  作者: HasumiChouji
第一章:Driving Me Wild
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(3)

 ショッピング・モール内のぬいぐるみ屋さんで、陳列してあるぬいぐるみを眺める。

 何だかんだ言って「魔法少女」だった頃より収入は減ってるので、下手に買う訳には……。

 駄目だ。

 駄目だ。

 絶対駄目だ。

 駄目だ……判ってるけど……この恐竜たちかわいい……。

「ええっと……今日、この子買って……来月に……こっちの子を……ごめんね、スーちゃん、スーちゃんのガールフレンドがウチに来るのは来月に……」

『人間さん、あんた、愛し合っとる(もん)同士ば引き離して、何が楽しかとね?』(注:幻聴です)

「だ……だからスーちゃん、来月にはガジくんもウチに来るようにするから……」

『ガジくんは、スーお姉ちゃんが寂しがってると思うだけで、胸が痛くなるのだ。早く、スーお姉ちゃんのそばに行ってあげたいのだ』(注:これも幻聴です)

「ガジくんまで、そんな事言わないで……絶対に……来月には一緒にしてあげるから……」

『本当やろうね? 嘘やったら、ウチもガジくんも、一生、あんたと寝てやらんけんね』(注:くどいようですが、これも幻聴です)

 我ながら怪しい人にしか思えない事をつぶやきながら恐竜のぬいぐるみをレジに持って行こうとしたら……。

『お客様にお報せします。当施設内で危険な特異能力者の可能性が有る人物が異常な行動を行なっています。お客様は警備員の指示に従い……』

 はあ?

 何だよ、この放送?

 そして、次の瞬間……。

「ファイアーボール‼」

 その叫びと共に……。

 声のした方を見ると……閃光と爆音。

 いや、マンガやラノベじゃないんだから……。

 現実の「魔法」だと物理現象を起こせるモノは……とんでもなく効率が悪い。

 たとえば、人1人余裕で呪い殺せるほどの「力」を消費して、ロウソクに火を灯すのがやっとだ。

 なので、「魔法使い」の多くは攻撃魔法を学ぶ場合は「対生物・対霊体特化型」になり……なので、物理現象を起こせる魔法を身に付けたり研究してる魔法使いは数が少なくて……あとは、悪循環が何百年も続いてたみたいで、どの地域のどんな流派でも、ある程度以上の規模の物理現象を起こせる魔法を使える「魔法使い」は、ほぼ居ない筈……。

 でも……確かに見えた……聞こえた。

 目が眩むほどの光と……耳が聞こえなくなるほどの轟音。

 ……いや……ちょっと待って……。

 何か、魔力とか気とかが……あ…あれ? さっき、確かに……()()()()()()()()

 ともかく……呼吸を整えて……「気」を周囲に放つ。

 この「気」は攻撃や防御の為のモノじゃない。

 レーダーの電波みたいなモノで、周囲の「気」や「霊力」を探るのが目的だ。

 でも……。

 居ない。

 周囲に居る人間が「魔法使い」などの自分の気・霊力・魔力なんかを操る訓練をした人間なのかは……「気」を探れば、ある程度は判る。

 と言っても、「気」の強さよりも、「気」のパターンみたいなモノだけど。

 そして……周囲には……「魔法使い」特有の「気」のパターンの持ち主は……。

 え……えっと……あたしの放った「気」が届く範囲に居る人間は……全員……おそらく一般人。

 でも……。

 何か変な気配が1つ。

 もう1度、探知用の「気」を放つ。

 変な気配は……さっきの「ファイアーボール‼」って声がした方向。

 目も見えず、耳も聞こえないまま、そっちへ走り……。

 変な気配は……誰か……多分、「魔法使い」なんかじゃない普通の人間の気配と重なっていた。

 その人間に向けて……。

「うりゃあああッ‼」

 叫んだつもりだけど……耳もまだ回復してない。

 あたしはパンチと共に「気」を叩き込む。

 ガシャンッ‼

 回復したあたしの耳に鳴り響いた最初の音は……ガラスが割れる音……。

 そして……視力を取り戻したあたしの目に最初に写ったモノは……通路の吹き抜けから下の階に落ちつつある1人のおじさん……。

 その時、あたしに投げ付けられたモノが有った。

 上着……。白っぽい色のカジュアルな感じの……男女どっち用でもおかしくない感じデザインの……大人ものにしては小さ目の上着。

「えっ?」

 続いて……小柄な女の人の後ろ姿。

 一本結びの髪がゆらめく……。その髪を束ねてるのは……青い迷彩模様のリボン。

 あたしが、今、髪を束ねてるのと同じデザインのモノだ。

 その人は、おじさんを追って、通路の吹き抜けに飛び込み……。

「あっ‼」

 あたしも、その女の人の後を追い、上着の片方の袖を両手で握り、上着を下に垂らし……。

「おい、すぐに助けを呼べ」

 その女の人は……片手で落ちかけてるおじさんの手を握り……もう片手で垂らされた上着を掴みながら、そう叫んだ。

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