(2)
翌朝の6時前、あたしは高良山の大鳥居の前に居た。
「よし、今日こそ……」
自分に言い聞かせるように呟くと、あたしは走り出す。
走る。
走る。
走って……。
いつしか足下は舗装された道路から剥き出しの土に変り……。
「『Gonna Fly Now』でも流そうか? 映画の『ロッキー』のテーマ曲の」
今日も頂上にある神社に到達出来ずに、へばっていると……前の方から声。
「あ……」
あいつの髪が黒に近い茶色なのに対して、地毛なのか染めてるのか判断出来な明けど、明らかな茶髪。
妙に太い直角三角形っぽい形の眉。
筋肉は付いてるけど齢の割に小柄なあいつに比べて、平均よりやや大き目の体格。
顔は……あいつよりボーイッシュだけど、しゃべり方は、あいつより「女の子言葉」っぽい感じ。
あいつが癖毛のセミロングなのに対して、直毛のボブカット。
双子らしいけど……声が似てる以外は全部正反対。
あのクソ女の妹だった。
「な……なに、してんですか?」
「カブトムシとかクワガタとかを捕りに……」
そう言って、よく知らないあたしでも「大物」な事だけは判る見事なノコギリクワガタが入った虫籠を見せる。
「ところでさ、瀾ちゃんから激しい運動をする前は、ちゃんと準備体操で柔軟をやれ、って言われてたと思うけど……やった?」
「あ……ああ……っ……えっ…。えっと……」
「あのさ……強くなりたいから練習してんのに、練習中に怪我して練習が出来なくなったら……馬鹿だよ、それ」
「す……すいません……」
「あと、水分補給も、ちゃんとやってる?」
そう言ってクソ女の妹は、ペットボトルを差し出した。




