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魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO  作者: HasumiChouji
第五章:Premonition
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(3)

 そして、翌週の月曜の朝、鳥栖(とす)駅で博多方面行きの快速に乗り換える。

 早めに出たので、平日の朝とは言え、満員には程遠い……ん?

 獣化能力者のせいか……ボクは鼻が妙に効く。

 体臭だ……。男性……アジア系……年齢は……あれ?……良く判らない。

 いや、ここは日本の電車の中なので、アジア系の男性の体臭がするのは当然……でも、何か違和感。

 人間の臭いだらけの電車の中を……気になった体臭の元を目指して……。

 段々、気になった理由が自分でも理解出来てくる。

 どんなモノかは不明だけど体調不良の人に特有の体臭のパターンだ。年齢が良く判らなかったのも、それと関係が有るかも知れない。

「あ……あの……」

 電車内の座席に座ってる……その男の人は……。

 二〇代ぐらい……。でも……顔色は悪くて……良く見ると……肌が……妙な荒れ方を……。

 妙だ……服はマトモだ。普通のデスクワーク系のサラリーマンっぽいワイシャツにネクタイ……。でも、妙に痩せこけて……。

「大丈夫ですか?」

「は……はい……? えっと、私……具合悪そうに見えます?」

 疲れ切った声。

 いや……唯の疲れじゃない……。

 変だ。

 どこかで……似たような人を……それも1人や2人じゃなくて……。

 博多駅に電車が到着した時……ようやく気付いた。

 一〇年前の富士の噴火で壊滅した「本当の関東」に居た頃に……。

 職場の仕事で、家の無い子供や、親に虐待されている子供を保護した時に……。

 何度も……見て……そして……臭いをかいできた「パターン」だ。

 その若い男の人も……博多駅で降りるらしく、ゆっくりと立ち上がり……。

 心に迷いが生じる。

 職場の上司に受けてこいと言われた講義に遅れるかも知れない。

 でも……。

 ウチの職場は児童養護施設で……ボクの裏の顔は「正義の味方」見習いだ。

 正義とは何か?

 正しいとは何か?

 責任とは何か?

 責任とは結果ではなく、正しい行為を選択する事そのもの。

 正しい事とは、正義とは……この状況で、自分の都合を優先し、この男の人に関わらない人達が大半を占める社会と……自分の都合よりも見ず知らずの誰かを助ける事を優先する人達が大半を占める社会と……自分は、どちらに住みたいか?

 トロッコ問題なら……5人の命の為に1人を犠牲にする社会と……人の命には貴賤が有り5人と1人のどちらを助けるかは誰かか何かが決めたそれぞれの命の価値に依って答が変るような社会と……誰もが6人全員の命を救う解決策を見出そうと最後まで足掻き続ける社会と……自分が住みたい社会の人達やその社会そのものと同じ選択をする事が「正しい」事だ。

 どうやら……栄養失調状態らしい若い男の人は……歩きながら、ゆっくりと倒れ……。

 ボクは……男の人を支え、大声で叫んだ。

「駅員さん、来て下さい。急病人です」

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