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走ってた。
走ってた。
猛烈な勢いで通勤時間帯の博多の町中を走ってた。
今年の春ごろに九州に引っ越してきてから、博多には何度も行った事は有るけど……博多の中でもほとんど行った事が無い土地勘皆無の場所なんで、早めに出発したので助かったけど……でも、かなりのギリギリだ。
けど、全力で走ってないし、そんな真似なんて出来ない。
だって、変身する訳にも、「火事場の馬鹿力」を引き出す自己暗示を使う訳にも行かないから……。
ボクが変身して火事場の馬鹿力を使った時の瞬間最高速度は……時速七〇㎞かそれ以上。
コミックやラノベや特撮ドラマやヒーロー映画なら……ヒーローでもヴィランでも順位を下から数えた方がいいような速さだ。
でも……図体がデカい方のボクが時速七〇㎞で通行人にブツかったとする……いや、この前、セダンタイプの車にやった時は、車のドアがヘコみ、窓ガラスが衝撃で割れ、車そのものも、ほんの一瞬、ほんの微かだけど地面から浮き上がった。
で、それを異能力者でも何でもない普通の人間が食ったなら……?
ああ……マズい。
たまたま、急病人を見付けたせいで時間に遅れそうになってるのに、怪我人を量産したらコメディだ。それも、モンティ・パイソンより意地が悪いタイプの……。
話は先週の……あの夜の事件の翌日まで遡る。




