(8)
「ねえ……こんな事が出来る人が居るのに……あたし達程度の『魔法使い』って何の役に立つの?」
夢洲と大阪本土の間には……巨大な氷の橋がかかっていた。
そこを通って、敵も味方も、帰っている。
「言っただろ、科学技術で起きた良くない事に対処するには、科学技術の知識が有る奴が必要になる。魔法や心霊関係が原因で起きた良くない事に対処するには、やっぱり、そっち関係の知識や能力や技術を持ってる奴が必要になる。こんな真似が出来る奴は確かに実在するが……そいつらにも苦手な事は有る」
そう言ったのは、クソ女の親類だった。
「それに、力の大小と、その力が役に立つかが、そんなに関係ない事は、お前も思い知た筈だ」
師匠が、そう続ける。
「師匠……あれは……まだ……?」
「ああ、お前の中に、まだ居る。これから一生、お前は、お前の中に居る……悪とか闇とかは言えないまでも、暴力的なナニかと、それに対するブレーキの両方を制御し続けていくしか無い」
「人間なんて、そんなモンさ……多分だけどな……。裏も表もねえ奴を1人知ってるけど、ロクな奴じゃねえぞ……。そいつに比べりゃ、自分の中に居る化物を飼い馴らそうと足掻いてる奴の方が、余っ程、人間臭くて、可愛げが有る」
「誰? その裏も表もないロクデモない人って……?」
「お前が良く知ってる奴だよ」