(6)
あ……ヤバい……。
失敗しちゃったみたいだ。
あたしの中に居た「戦いの女神」は、あたしの攻撃で、あっさりと体の半分以上が吹き飛んだ。
でも……あたしの体にも……とんでもない痛みが……。そして……体の感覚が無くなっていく……。
「言った筈だ……私はお前だと。お前は私を殺せるが、同時に、お前が私を殺せば……お前も……」
クソ……あいつの言う通りだ。あたしの体も、どんどん、消えて……。
「違うッ‼ お前がやった事こそが『正解』だッ‼」
「今、お前は『心の目』の方に頼り過ぎてる。ちゃんと本物の目で自分や周囲を見て見ろ」
え……どう云う……こ……。
「あ……あれ?」
生きてる……あたし……生きてる……。
怪我1つ無い。
「な……なに……何が起きたの?」
優那ちゃんも戸惑っている……。
あたしは……その優那ちゃんに近付く。
「だ……誰……? あなた……一体、誰? さっきまでの、あいつじゃない……」
「阿呆ッ‼ 心の目に頼るんじゃねえッ‼ ちゃんと本物の目で、そいつを見ろッ‼」
強化装甲服の魔法使いが、優那ちゃんに、そう叫ぶ。
「な……なんか、こう云う場合の定番とは逆のセリフの気がするんだが……」
護国軍鬼が、額の辺りに指を当て、顔を少し下げて……戸惑ったような口調で、そうコメント。
「現実とフィクションは話が逆だ。私達は……『視えてる』状態こそ当り前だ。だから、無意識の内に肉眼より霊視に頼ってしまう。『心の目に頼るな。肉眼でちゃんとモノを見ろ』そう常に自分に言い聞かせ続けてる位の方が、結果的にバランスが取れた状態になる」
そう答えたのは師匠だった。
「『視え』ない私には……理解し難い話だな……」
「わ……わかんないよ……どうすれば……」
「先は長いかも知れないから……のんびり行こう」
あたしは、そう言って、優那ちゃんを抱き締めた。
そして、優那ちゃんの体から放出される邪気を吸収し……。
「えっ?」
「えっ?」
けど……師匠に言われた通り、優那ちゃんに「気」を返した時、その「気」は……。
浄化されたものだった。
「お前達、密教系の術者は、誰かの『気』の性質や、どんな術が得意で、どんな術が苦手かなんかを……仏とかの名前で言い表すんだったよな?」
護国軍鬼が師匠に、そう訊いた。
「ああ……」
「じゃあ、こいつの……」
その時……。
爆音。
轟音。
しかも……このビルごとが傾いてるらしく……。
「お……おい、お前ら、下で何をやった?」
「やったのは、主に『大阪』のマヌケどもだ。あの、たった1人だけ成功した特攻のせいだ」
「はあ?」
「この島は、元々、ゴミの埋立地だ。地下のあっちこっちにメタン溜りが有る。その1つに……火が……待て……」
「どうし……ん?」
「あ……あの……他のビルなんかが、どんどん、高くなってるように……」
「え……えっと……多分だが……そんな事は無い。逆だ」
「おい、お前の名推理が正しかった場合、そいつは『良いお報せ』と『悪いお報せ』の、どっちだ?」
「最悪のお報せだ」
「はぁ?」
「状況は大体推測出来た。ただ、一番肝心の……それが私達にとって良いか悪いかの判断が付かない」
「だから、何がどうなってる?」
「だから、最初から、お前は、それを訊くべきだった。『良いお報せ』か『悪いお報せ』か、とかじゃなくてな」
「わかった、わかった。何が起きてるか、お前の名推理を簡潔に説明してくれ」
「このビルごと沈んでる」
「地盤沈下か? でも、爆発の影響で、んな事が起きてるなら……えっと……下の方は、もっとエラい事になってる筈じゃ……」
「違う……居るだろ……そんな真似が出来る奴らが……」
「あ……」
「しかも……2人も居る……一番少ない見積りでもな」




