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68【それぞれのいま】

 夏休みも終わりかけの、暑さもピークを迎える頃。

 今日は珍しく海と和雲の三人で家に居た。

 海が三人で集まりたいと言ったから。


「それで海は、どうしたの。集まりたいって言ってたけどさっきから喋らないし」


 和雲がそう言って海を(うなが)した。

 そう言ってしまうのも仕方ない、さっきから話しているのは自分と和雲だけ。集まったは良いものの海は喋っていなかった。


「……そのー」


 その?


「彩晴先輩と! 付き合う事になりましたああぁぁ……ぁ……」


 そう言って喜んだのも束の間、振り上げた両手を徐々に降ろしていった。


 そのまま喜んで居て良いと思うんだが。


 和雲を見ると同じ気持ちなのか、よく解らないといった表情をしている。


「何はともあれ、おめでとう」

「うん、良かったじゃないか。おめでとう」

「うんー、ありが、とぅ……」


 ますます落ちるテンションに意味が解らない。


「それでなんでそこまでテンション下げてるんだ」

「……実は付き合えたは良いものの意識しすぎて上手く喋れないしさー、何したら良いのか解らなくなっちゃって」


 なるほど。


「二人はどうやって過ごしてるんだよー。特に優陽」

「なんで俺なんだよ」

「だっていつも一緒にいるだろー。一緒に居る時どうしてるんだよ!」


 そう言われてもなぁ。


「どうしてると聞かれても、特別何かをしてない。って答えになるけど」

「それでも何かはしてるだろー」


「家に居る時は、食事して勉強したり本読んだりテレビ見たりゲームしたり。

 常に二人で同じ事してるわけじゃないし、喋り続けてるわけでもないな。

 ジム行ってても、食事前にジム行ってるのが加わるくらいだし」

「参考にならねー、和雲は!」


「僕達も特に何もしてないけど」

「熟年すぎかよー」


 まだ一年も経ってないぞ。

 あれ、まだ一年経ってなかったのか。

 

 自分自身で思った事に驚いてしまった。


「俺達はその前に一緒に居る時間が長かったからかもな」

「つまり、常に逢引きしていたと」

「言い方……」


 そうは言うものの否定しきれないと思ってしまった。

 隠れてこそこそしてたつもりはないが、周りから一切知るすべが無い状況を差して言われれば、強く反論は出来なかった。 


「海達だって、プールの時から二人で出かけたりはしたんだろ」

「したけどさー、なんか思ってたのと違う!」

「普段通りの海で良いと思うんだけど、そこまで海が空回ってると篠原先輩も気にしてそうだね」


 海も解ってはいるのだろう、だからこうして相談に来ているんだろうし。

 それに篠原先輩もこのままというのが本意ではないのだろう。

 それが証拠に今は沙月の家に三人集まってるらしい。


「取り合えず、自然と話が出来そうな所に一緒に行ってみるとかか?」

「受験生相手に誘うのもどうかなーって思うんだけど」

「聞くだけ聞いてみれば?」

「うざがられないかなー」


 すると和雲が何か得心したように言った。


「海はまず口に出して言葉にしようか」


 海は首を傾げているが、自分もそれには同意だった。


「今思ってる事を言わないでいるから、何も喋れなくなっていつもの調子になれてないんじゃないかな」

「だって余計な事言って嫌われたくないしさー」

「それも含めて言うんだよ」


 和雲の言葉に海はまだ納得がいかないのか首を縦に振らない。

 自分も経験がある事だけに背中を押してやる。


「今の受験生だから誘うのもって下りもそうだな。

 行くか行かないかは、あくまでも篠原先輩が判断する事だし、息抜きしたい事もあるかもしれない。まずは聞いてみればいいんじゃないか」


「そうだね、僕達も最初から今のようになれたわけじゃないんだから。

 話さなくても分かってもらえるとは今でも思ってないよ」

「俺もそうだな。

 話さないで失敗した事もあるし」

「それで失敗したら嫌になられないかなー」


 いつもの調子が出てないから、やけにネガティブだな。


「言われたことだし、実感してるけど。


 付き合うってのは、一緒に居ても良い理由になるんだから、告白を受け入れてくれたって事は少なくとも一緒に居ても良いって思ってくれてるんだろ。

 今までの海を受け入れてくれていたんだから、大丈夫だろ」


「そうかなー。でもこのまま喋れないのは嫌だしなー」

「玉砕覚悟でいってみろよ」

「もう玉砕してないから!そこ終わってるから!!」

「そうそうその意気だよ」


 そう言われた海は、どこか不思議なやる気に満ち溢れていた。

 海のこのまっすぐさは間違いなく美点なのだから、きちんと篠原先輩の方を向いていきさえすれば、大丈夫だろう。


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