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21【高校生のクリスマス前】

 二学期の期末試験が終わり、学生の本分に一区切りした頃。

 今度は青春に華を添えようと、周りが活気づいていた。


 成績の張り出しを確認しながら、知り合いもついでに確認をする。


 沙月は相変わらず、一桁台をキープ。

 和雲も一桁台か、二人とも相変わらず凄いな。


 学業の成績だけが全てでは無いとわかってはいる。

 それでも一つの物差しとして機能してしまい決して無視する事が出来ないのが辛い所だ。


 クライミングとの両立を目指している以上は、そこそこをキープしなければならない。


 今回もそこそこの成績を納める事ができ、ほっと一息。


 すると、どこからか沙月について話している声が聞こえてきた。

 

「あのミスコンの琴葉(ことは)さん、成績も良くて可愛いし完璧だよな」

「またあの奥ゆかしさがまたたまらない」


「そうそう、しかもお昼は弁当持ってきてるらしくて自分で作ってるらしいぞ」

「まじかよ、一口分けてくれないかな」


「どういう人が付き合えるんだろうな。これまで全部玉砕してるんだろ」

「付き合えたら、朝とか起こしに来てくれないかな」


「朝からは、なぁ……。小柄ながらにあれは」

「いやいや、非常に良いと思うぞ」


 だんだんと下世話な話が聞こえてきて、顔をしかめてしまう。


 いくら本人がいないとはいえ、決して言っても良いとはとても思えなかった。

 

 近しい友人が、そんなコソコソと話しの対象にされる。

 そのことにむしゃくしゃしていると美和から携帯にメッセージが入っていた。

 

『二十五日、沙月ちゃんをデートに誘う事。

 これは絶対だからね!』


 やけに干渉しようとしてくるな。

 それにわざわざメッセージというのも珍しい。


 まぁ、メッセージなのはさっきみたいな話題に出されるように、他の人の目がある所で名前を言うわけにもいかないからって所だろうけども。


 さて、どうするかな。

 何かを企んでいる気はするけど、どうせ碌でもない事だろうし。

 美和の言われるがままにというのもな


 携帯をもてあそびながら、時間は過ぎていった。


 今日も今日とて、沙月との夕飯が終わった時。

 前に約束した通り、勉強を頑張ったお祝いにケーキを買ってきていた。

 

 ケーキを出したら、喜んでくれるだろうか。

 あの柔らかい笑顔をまた見せてくれるだろうか。

 と思い浮かべていたら、顔に出てしまったようだ。


 目の前の彼女に(いぶか)し気に聞かれてしまう。


「どうしたんですか? 何か嬉しい事でもあったんですか」

「いや、なんでもない」


 答えとは裏腹にケーキを取りに行く。

 驚かせてみようと思い、見えない位置にしまっておいたのだ。


「これ一緒に食べようと思って」

「わぁ、美味しそうですね! 何か良い事でも?」


 目をキラキラとさせ、喜んでいるようでこちらも嬉しくなってしまう。


「期末テスト頑張ったお祝い」

「それでお祝いしてたら、毎回頑張んないとですね」


 にこにこと笑い、笑顔を向けてくれる。


 確かに奥ゆかしい所もあるけど。

 やっぱこうして笑ってくれてる方が良いよな。


「どっちが良い?」


 うーん、と二つのケーキを見比べ、視線を左右に動かしている。


 視線が止まったかと思うと「あの……」と小さく呟くように聞いてきた。


「また半分ずつにしても、良いですか」


 彼女に上目遣いをしながら言われて抗える人はいるのだろうか。

 少なくとも自分はできそうにない。


 昼間の会話から聞こえるように、可愛い事は間違いない。


 微かな恥じらいと期待に満ちた目でじっとこっちを見られては否応なく意識させられる。


 胸が高鳴って仕方ない。


「……いいよ」


 一言、返事をするのにも意識を割かれ、うまく言えただろうかと心配になってしまう。


 ケーキをシェアするなんて、この前もやった事。

 なのに、やけに緊張する。


 緊張がバレないか心配になりながらもケーキを半分ずつに切り分けた。


「ありがとうございますっ」


 そう柔らかく朗らかに笑顔を向けられれば買って来たかいがあったというものだ。

 

「「いただきます」」と声を同じくしてしまった。


 笑い合い、時折相手を見ては目が合ってしまい、また笑い合ってしまう。


 そんな事を数度繰り返しただろうか。

 食べ終えると意外とすんなりと言葉が出てきた。


「沙月は、クリスマスの予定は?」

「特に予定はないですよ」


「その……、良かったらクリスマスにどこか出かけたり……しませんか……」


 言いだしはまだ良かった。

 けれどもいざクリスマスにと言葉を続けるごとに恥ずかしさがこみあげてきた。


 しかもどこか出かけるとは。


 どこともなく誘っている事に自問した。

 結局は美和に言われた通り。


 なんの捻りも無く率直な物言いに、自身に対して恥ずかしくなってしまう。

 もし美和が近くにいたら、盛大な溜息をつかれていただろう。


「どこかってどこですか」とクスクス笑いながら返される。


 そう聞かれるよな。

 と心の中で同意しつつ。


「ごめん、急にどこかって言われても困るよな」


 慌てて今のを無かった事にしようとしたら。


「でしたら、お買い物に付き合って下さい」


 そういう沙月は、にっこりと微笑んでいてドキッとしてしまう。

 

「おう、喜んで」


 結局、沙月に助けられてしまった。


 それでもクリスマスを一緒に居れる事に喜びを感じ、照れ隠しに言葉少なに返事をすれば沙月が嬉しそうにし、誘ってよかったと思えた。


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