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118【ホワイトデーの準備】

 修学旅行も終わると、すぐさまやってくるホワイトデー。

 あれが良いか、これが良いかと頭を悩ませている。

 こう見るとバレンタインはチョコレートと定番が決まっているのはずるいのではないかとさえ思えてくる。


 なにせ交際してから一年だ。

 これほどわかりやすい節目もないだろう。

 去年は背伸びをしてしまった自覚はある、そして今年はさらにその上をいくことをしなければならないとプレッシャーで嫌な汗をかいてしまいそうだ。


 何が良いか。

 困ったことに全く持って思い浮かばない。

 こういう時はやはり先輩を頼るべきだろう。もう何回も経験しているのだ、アイデアを貰うくらい許されるはず。


 そんな事を思い立った後日の放課後。

 和雲と二人で教室に残っていた。


「日誌、まだもう少し掛かるからごめんね、待たせて」

「いや、別に俺も相談したくているわけだし。沙月も美和も二人で、どこか行っちゃったしな」

「そこはさ、あの二人ちゃんと見張っててよ。悪だくみしてて何してくるか予想付かないんだからさ」


 そこまで困った顔には見えないが、注意されてしまった。

 そもそもが。


「なんで和雲だけが、被害者だと思った」

「あ、海もだね」

「それは俺も悪だくみに加わってこいってことだな」

「裏切りは良くないと思うな」

「どっちかというと自爆に近いけどな」

「やっぱり巻き込むんじゃないか」


 やれやれと言った表情を隠そうともせずに、和雲は先を進めた。


「まぁ、二人のことは良いよ。本当に遊んでるだけかもしれないしさ、それで相談ってどうしたの? 書きながらで良ければ相談も聞くけど」


 話しながら別の内容を書くって、器用だな。

 実際、今までの会話も書きながらしていたのだから、本当に器用なことだ。


「んー、和雲はホワイトデーどういう予定?」

「あぁ、そういう事」

「そ、そういう事」


 それだけで何がどこまで分かると言うのか。

 これだけで的確なアドバイスが貰えるというのだから、やっぱりエスパーかと疑いたくなってくる。


「そうは言っても、多分、参考にならないと思うよ」

「そんなことないだろ」

「僕の家、というか部屋に招いて過ごすだけだよ」


 なんて事のない風に言う和雲。

 さすがにこの男がそれで終わりなわけはないだろうに。


「それで?」

「プレゼントをあげるだけ」

「プレゼントは?」

「好みが違うんだから、それはさすがに考えなよ。そうは言っても別にプレゼントの中身の相談したいわけじゃないでしょ」

「それはまぁ、さすがに」


 言われてみれば確かにそうだ。

 別にプレゼントの中身は別で考えなくてはならないのは変わらない。


「初めてじゃないとはいえ、僕達にとって互いの家は特別感のある場所になりうるけど、朝比奈達にとってはそうでもないでしょ」

「日常だな」

「場所としての特別感は難しいよね」


 参考にならないとはこの事かと。

 それならそれで何か考えようとは思うのだが。


「何が良いかな」

「僕もわからないけど、一つだけ言えるのはそうして悩んでくれてること自体が嬉しいんじゃないかな」

「そういうものかな」

「そういうものでしょ」


 だからと言って、今直面している悩みに答えが出ているわけではない。

 うんうんと悩んでいると。


「よし、書き終わったから提出してくるよ。ありがとう」

「お礼を言うのは俺の方だけど」

「そうでもないよ、こうして文字を書いてると案外、その時の心情が表れてしまうからね。それをこうしてなんでもない会話で、いつも通りに書けたのは助かったよ」


 文字か。

 文字にしてみるか。

 そうしてみよう。


 これなら喜んでくれるだろうか。

 閃いてしまえば、それはとても良いアイデアのように思えてきた。


「それだ。和雲、ありがとう」

「何か思いついたんならよかったよ。後学のために聞いても良い?」


 それは……。


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