第十一話_詳細_3 認識合わせと考察(ディバイン・ギア・ソルジャー)
情報のまとめと解析回その三。
箇条書きにさっと目を通せば、スルーしても問題ありません。
「気を取り直して続きです」
・ディバイン・ギア・ソルジャー
・ディバイン・ギアを使って変身した戦士
・ギア:アルス
・変身者は普通科一年の火野輪之介
・全ステータス6
・現在活動休止中
・ギア:ナイツ
・変身者は剣聖科一年の一文字昇人
・全ステータス9
・現在絶賛活動中
・カウント1からカウント9までギアを上げていくことで出力が上がる
・カウント9で必殺技が使える
・背中の円盤がメインのDA
・ギア:良二(仮)
・変身者は普通科一年の平賀良二
・全ステータス1
・現在議論中
・ギア:ホーク
・変身者は空閑鳳駆
・8年前のディバイン・ギア・ソルジャー
・現在戦闘能力なし
「まぁ、あまり話すこともないんだけどな。
ギア:ナイツの戦い方は今動画を見てもらった通り。
基本的に力任せみたいなので、戦闘時には俺がサポートに回ろうと思う」
ディスプレイの片隅では、俺がD-Segとドローンで撮影した戦闘風景が再生されている。
「必殺技は格好いいが、確かに動きが直線的過ぎるな。
実際のDGSには武器やギミックはないのか?」
「鳳駆さんにはいくつかの形態が合ったみたいだな」
ディスプレイにギア:ホークの写真を写す。
「これは?」
「ドラマの作成時の資料。変身はこちらでもできるから、一通りの形態を撮影してモデル作成の参考資料にしたらしい」
「なるほど、言われてみればテレビで見るものと違っているな」
ディスプレイに映るギア:ホークはベースとなるボディースーツ自体はほとんど同じだが、形態ごとに意匠と色が違っている。
だが、一番の特色は背中の翼だろう。
鷲の翼を模した物から始まり、梟、ハミングバード、ミチバシリ、果ては蜻蛉にジェット機と多彩だ。
……ミチバシリは何だろう、飛ぶことができない戦いの特別形態か何かか?
「鳳駆さんのメインの属性は『飛翔』。DGSの姿もそれに引っ張られているのかもな」
サンプルが少なすぎるので想像に過ぎないが。
「可能性はあるな。そうなるとギア:ナイツ――昇人の属性はなんだ?
属性が解ればギミックについても方向性が推測できよう」
「なるほど。
資料によると一番高い属性が『深界』、二番目が『エンジン』だな。
歯車の意匠と回転する円盤はそれがモチーフか?」
「エンジン?『トルク操作』属性とは違うんですか?」
エンジンと言えば車のエンジンが思い浮かぶ。
確かにトルク操作と同じく回転エネルギーを操作していることになるが、それはエンジンの一種に過ぎない。
「エンジンの定義は『エネルギーを力学的な運動に変える機械』だね。
だから必ずしも回転エネルギーに変える必要はないよ。
例えばピストン運動に変えてもいい」
アイズが『エンジン』属性のDAのサンプルをいくつか提示してくれる。
車用DAエンジン、DA杭打機、DAカタパルトにDAゼンマイまで、多種多様だ。
「本来はこの多種多様なエンジンに切り替えて戦うんだろうなぁ……
パワータイプとスピードタイプを切り替えたり、相手からの攻撃を吸収して回転エネルギーに変えたり」
「エンジンの力をダイレクトに相手に伝える必殺技も見どころだろうな。
そして、戦闘方法の切り替えはカードの読み込みか」
仁が俺の学生証のカードと白紙のカードを手に取る。
「ツヴァイベスターと同じなら学生証……いや、身分証で切り替えるのか。
各種身分証をスキャンすることで、その身分と関連したエンジンへと切り替わるのだろう」
仁は俺と同じく子供のころからDGSに慣れ親しんでいる。
変身パターンの推測はお手の物だ。
「とは言えこれは推測だ。まずはカードの解析から始める必要があろう。
ツヴァイベスターよ、ディバイン・ギアは何を貴様に伝えている?」
「なにも。
どうやら初めは自分たちで解決しろってことらしい」
とりあえず白いカードは魔力を通しても何も変化はなかった。
特定条件が必要らしい。
そしてそれこそがディバイン・ギア・ソルジャーとしての俺のテーマなのだろう。
「私気になっていたことがあるんですけど……」
雪奈が小さく手を上げる。
「ディバイン・ギアは数が限られていて、今回増援が必要ということで鳳駆さんが自分のディバイン・ギアを提供してくれたんですよね?
初心者のマスターより、輪之介さんに変身してもらった方がよくないですか?
一度負けているみたいですけど、今は怪我もなくサポートも行えてるんですよね?」
もっともな疑問だ。全ステータス1のギア:クソザコナメクジよりも、全ステータス6のギア:アルスが戦うべきだろう。
「理由は解らぬが、戦えぬという事だろう」
仁が推測を口にする。
「娘はまだ入学していないからわからぬだろうが、バブルスフィアに守られているとはいえ、痛みへの忌避感と戦闘の恐怖はそうそう拭えぬ。
眼前に迫る死、そして享受することとなった疑似的な死から立ち上がれるかどうかは戦士の重要な資質だ。
剣聖科ならある程度の訓練もするが、ギア:アルスは普通科なのだろう?
倒すだけの戦闘から痛みを伴う戦闘に変わった時、ギア:アルスは戦士ではいられなかったということだ」
仁が遠くを見る。
仁も普通科だが、ダンジョンに挑むこともあり痛みも危険なことも体験している。
初めて死亡酔いを体験した時の彼は――だいぶ闇に染まっていたな。
「結構センシティブな問題だからな。
DAMAではその辺りは相談でもされない限り見ないふりするのがマナーになってる。
将来を有望視されていた天才聖剣剣聖が一度の戦闘で折れて、それでも周りから期待され続けてそれに耐えきれず――とか、色々あったんだよ。
どれだけ傷ついても、それでも戦うことを選ぶ剣聖科の人たちは尊敬する」
後々DAMAに通うようになって知ることだろうが、あらかじめ捕捉しておく。
「そういえば剣聖生徒会の人たちにも聞きました。
戦闘や死亡酔いに耐えられるかどうかは個人の資質に関係すると」
そうかそうか、ちゃんと女子会で情報は集めてたんだな。
「ところでマスターの死亡酔いなんですけど」
「おいおい、相談されない限り見ないふりするのがマナーだと言ったばかりだぜ」
この間の対正技さん開発は外部からつつかれるとちょっとマズいので、雪奈の言葉を遮っておく。
雪奈がもの言いたげな目で見てくる。
何かを察したのか、仁も三白眼で見てくる。
「……いいですけど、辛かったら何でもいいので話してくださいね。
倒れたら膝も貸しますので」
雪奈がコタツから足を出すと、ポンポンと膝を叩いた。
「そうだな。我が盟友の悩みとあらば、我も耳と膝を貸し付けるのはやぶさかではない。
見事この膝で寝かしつけてくれよう」
雪奈はともかく、仁の膝は嫌だなぁ……
「それが嫌なら精々どんな時でも生き足掻くことだ、盟友よ」
揶揄うような仁の笑みに、ため息を一つつく。
どうやら俺は良い友人と助手を持ったらしい。
同時に一つ懸念点がある。
果たして輪之介と昇人は、そのような知人を持てているのだろうか。
彼らの青春は輝いているのか?
Confirmation x DGS - 了
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