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第十一話_詳細_2 認識合わせと考察(ディバイン・ギア)

情報のまとめと解析回その二。

箇条書きにさっと目を通せば、スルーしても問題ありません。

・ディバイン・ギア

 ・ディバイン・ギア・ソルジャーに変身するためのDA

 ・形状は複数存在してる

・特徴

 ・全『深界』属性対応

 ・ギアと呼ばれる本体と、ガジェットと呼ばれるアイテムで構成されている

  ・ギアにガジェットを使用することで変身できる

 ・意思を持っている

 ・他のDAを取り込むことができる

・製作者は不明


ディスプレイが更新される。


「このブレスレットがギア、このカードがガジェットだな」


炬燵の上のブレスレットとカードを手に取る。


「特撮ヒーローと同じように、毎回デザインと機能が違うとか。

今回のガジェットは学生証だ」


変身に使うカードを、手を伸ばしてきた雪奈に渡す。


「マスターの学生証ですね!」

「レイアウトは本物と似てるけど、よく見ると内容が違ってたりする。

例えば、本物は二つ名が書いてない」

「ガジェット側は代わりに学校名が書いてありませんね。

裏はステータスですか」


雪奈がカードを裏返して確認する。


「力1速度1魔力1……でも、技術が8もあります!あと属性が全属性!

凄いですね!」

「さ、流石ツヴァイベスターだな!」


雪奈が無理矢理褒め、仁がそれに合わせてくれる。

いつも思うが、雪奈は何故こんなみじめで情けない俺を無理やり褒めてくれるんだ……駄目な子ほど可愛いと感じるタイプなのか?


「あとは……聖剣回路(コード)が刻まれていますね。

あまり見たことのないパターンです。

あれ?中心部だけパターンが違っています」


一通り確認し、雪奈が仁にカードを渡す。


「確かに聖剣回路は現在主流のものと違うな」

「花ちゃんもですけど、規格は統一して欲しいですよね」


雪奈が花ちゃんの両手を握りぷにぷにする。

花ちゃんはどのような原理で動いているのかわからないが、その体内に聖剣回路が刻まれていることはわかっている。

そしてその聖剣回路の原理はまるで解っていない。

詳しく調べようとすると逃げるんだよなぁ……


「そう言うな。始原回路(コード・オリジン)技能(ギフト)の自然結晶。聖剣鍛冶師たるものその美しさに打ち震えるべきだろう」


仁はカードを見つめうっとりと呟く。


「始原回路ですか?」



始原回路とは魔力性物質を媒体とし、大出力の魔力を用いた魔法を発生させた際に、魔力性物質に刻み込まれることがある聖剣回路のこと。

動作については聖剣回路と同様だが、最適化されているため魔力効率がいい。

始原回路を解析し、規格を統一したものが現在主流の聖剣回路の起源となっている。

出典: フリー百科事典『デヴィアペディア(Devia-pedia)』



アイズがディスプレイの隅に解説を出してくれる。


「ありがとうございます、アイズさん。

ノウハウの無い頃の聖剣は始原回路が刻まれていて、それを解析して汎用化することで現在の聖剣回路が確立された、ということですね?」

「少し違うな。

現在も大量の始原回路が使われている。

我が魔眼『揺らめく灯(シマンデ・リヒター)』のように天然由来の物はもちろん、解析の終わっていない技能(ギフト)は一度魔法を始原回路に書き起こしてから解析し、聖剣回路に変換するのがセオリーだ」

「なるほど……技能はそうやって解析していたんですね。勉強になりました」

「このような情報、さして価値もない我が英知の一部にすぎん」


雪奈のお礼に、仁がそっぽを向く。照れているようだ。

俺以外、ましてや女性に褒められることなんてほとんどないからなぁ……


「中央部は……これはツヴァイベスターの魔力痕だな。

おそらくカードのユーザー情報として保存しているのだろう。あるいはユーザー認証か?」


悩む仁からカードを返してもらう。


「調べたいのは山々だけど、今は時間がないから後回しだ」

「でも解析しないとディバイン・ギアの改造は出来ませんよね?」


通常、DAの機能を改良するにせよ、機能を追加するにせよ、対象の聖剣回路の仕組みについては十分理解しておかなければならない。

下手に修正すると元の機能すら満足に動かなくなるからだ。


「今回は事情が違うんだ。

特徴の3番目と4番目のおかげだね」


ディスプレイに映しだされた箇条書きの該当箇所が光る。


「『意思を持っている』『他のDAを取り込むことができる』か。

意思のあるDAは、数が少ないがないわけではないな。この花ちゃん(ブルーム)もその一種だ。

だがDAを取り込むというのはどういう原理だ?」

「ディバイン・ギアにDAと設計意図を伝えると、それを再現してくれるらしい」

「曖昧だな。らしいとはどういうことだ?」


俺は炬燵の上のディバイン・ギアを手に取る。


「こいつが教えてくれた」


ディバイン・ギアを仁に渡す。


「意思があるなら、伝える方法もある、か」


仁が目を細めディバイン・ギアを注視する。

そこにはDGSへの憧れの色は見えず、聖剣鍛冶師としての真剣な意志が伺える。


仁はそのままの表情で左手にディバイン・ギアをはめようとした。


弾かれた。


「うぉ!」


宝玉が赤く点滅する。


「怒ってるな。『貴様には我に触れる資格はない!』とかそんな感じ」


少し離れている程度だとちゃんと伝わってくる。


「くっ、我には何も感じ取れん……!

光の聖剣が闇の神の使徒と相容れぬのは宿命か……」


仁は残念そうにディバイン・ギアを雪奈に渡す。


「えい」


雪奈はディバイン・ギアを受け取ると、そのまま左腕につけた。

弾かれなかった。


「なんと!?」


仁が驚く。俺も驚く。


「あ、ダメっぽいですね」


雪奈が言うのと同時に、ディバイン・ギアは弾かれ宙を舞い、そのまま俺の手元に戻ってきた。


「えっと……『何も感じないから油断した。空虚だが圧が凄い』だそうだ」


気持ち悪そうにしているが、それは伝えない方が良いだろう。

何も感じなかったのは雪奈が『|属性欠乏《イノセント・ヌル』だからか。


「意志があるのは理解した。我が盟友なら対話できるのもな。

だがしかし、DAの取り込みについては本当に可能なのか?

それがわからなければ対応方針の検討もままならぬ」

「ある程度制限はあるみたいだが可能なことは確認している。

原理についても予想はついてる」


変身したのはまだ一度だけだが、その中で気になることがあった。


「変身時のヘルメットにD-Segの機能が搭載されていた」


今考えれば、アレがDAの取り込みだろう。


「原理としては、深界獣がしているのと同じだろうな。

取り込む対象のDAの属性と同等の深界獣の属性を活性化させて機能を再現している」


意志を伝えたり変身したりする時も、『深界』属性の該当の属性を活性化させているのだろう。

『深界』属性を全て保持しているということは、ほとんどの機能をこの一つのディバイン・ギアで再現できるということだ。

制限はあるのだろうが、とんでもないオーバーテクノロジーだろう。


「ふむ……原理については得心がいく。

だが一度実例を確認したい」

「そう言うと思って用意しておきましたっと」


俺は隠していたシロクマがデザインされたタンブラーを取り出す。


「汎用分子固定式冷凍蜜柑製造聖剣『DA冷凍みかん君-未完』です。

これを変身時に取り込んでみようかと」


冷やす対象は飲み物。DA紅茶オレやDAマグカップを使うと試験にならないので、普通のグラスのコップに普通のオレンジジュースが入っている。

話し始めてだいぶ経つので、丁度温くなっている。


「それじゃあ変身するぞ。

準備は良いか?」


「問題ありません!」「問題ない」「会議始まってからずっと録画中だね」


雪奈と仁がこちらをじっと見つめている。

おそらく二人とも録画を行っているだろう。雪奈は何時もの通りD-Segで、仁は眼帯を使用している。

彼の眼帯はD-Segではないが、この一年で俺と仁で一緒に大量の改造を行った特製品だ。

さらに最近D-Segを参考に思考制御や脳内チャットも使えるように設定した。


俺は左手にブレスレットを装着する。

もちろん二人とは違い、ブレスレットは弾かれない。


左手にDAみかん君、右手に俺の学生証を模したカードを手にする。


『リョウジ・ヒラガ』


変身の気配を感じ取ったのか、カードから音声が鳴る。

俺は続けてブレスレットの宝玉に軽く触れる。


動輪接続(サイクリング)!』


前と同じように宝玉から音声が響き、ブレスレットが変形、カードリーダーが現れる。


心炉起動(アクティベイト)!」


右手と左手をクロスするようにしてカードをカードリーダーに読み込ませる。


瞬間、俺の身体を光が包み、ブレスレットから溢れた魔力の奔流が身体を覆っていく。

鋼のブーツが、鋼のガントレットが、鋼のベルトが、俺の身体を包み込んでいく。

いわゆる変身バンクだ。


『パワーワン!スピードワン!マジックワン!アベレージ・ワン!』


ブレスレットから機械音声が流れ、同時に光が収まる。


光が収まると、前と同じ姿に変身が完了している。違いと言えば、左手の形状が変化し、大きなペンチみたいになっていることか。


「DAの取り込みを確認」

『D-Segの機能も問題なし』


D-Segで脳内チャットを流し、同時に各種基本機能が動いているか確認する。


『今度はばっちり録画しました!』

『流石だな、我が盟友よ!

本当の本当にディバイン・ギア・ソルジャーに変身するとは!

間近での変身は迫力が凄いぞ!』


返信も受け取れているな。


「ではこちらの実験開始だ」


ペンチ上の左腕でコップをつかむ。

自分の手と一体化しているからか、特に問題なく動くし、調整も容易い。


「温度を5度に固定」


左手の機能を開放し、D-Segのサーモグラフィーで温度を確認する。


「温度の低下を確認しました!」

「次はマイナス10度」


オレンジジュースの中心が凍り始める。


「実際に使うのと同じ感じで使えそうだ」


今度は温度を戻そうとしたところ、左手の宝玉が赤く光った。


『タイム:オーバー。

グッバイ』


身体が光に包まれる。どうやら変身可能時間を超えたようだ。


光が収まると、変身が解除され何時もの服装に戻る。

変形前と同じく左手にDA冷凍みかん君を持っているが、その中にはグラスが入っている。

なるほど、こういう風に再構成されるのか。


「あれ?」


唐突な脱力感に襲われ、思わず腰が抜ける。

突然の魔力圧低下による立ち眩みだ。


「危ないです!」


つい手を放してしまったDAみかん君とグラスを雪奈が掴み、倒れそうになった身体を仁が支える。


「まぁ、ツヴァイベスターの魔力ならばこの程度か」


仁が抱きかかえた俺の身体をゆっくりと寝かせる。

すかさず雪奈が枕元に移動し、膝の上に俺の頭を乗せる。

相変わらず何なんだ。


「この体たらくではほとんど戦闘は出来そうにないな。

単発高火力のDAを一度使う程度か?あるいは大容量バッテリーでも背負うか」


仁が冷めた目で俺のほっぺをツンツンと突く。


「そこはちょっと考えがある」


炬燵に置いた8枚の白紙のカード。アレを使えば恐らく魔力の補充ができるはずだ。


「質問です!

変身時にディバイン・ギアから音声が流れましたけど、ディバイン・ギアは喋れるということですよね?

なんで喋って意思を伝えないのでしょうか?」


雪奈が仁の指をペシペシと叩きながら訊ねる。


なるほど、確かにそれはそうだ。

俺も気になりディバイン・ギアに意識を向けてみるが、返事はない。


「返事がない。

つまり出来ないのではなく、『喋るのは許可されていない』と言ったところかな」


肯定を意図したわけではないだろうが、少しだけディバイン・ギアから反応が返る。


「どういう意味だ?」


仁の指がさらにスピーディーにほっぺをつつく。合わせてそれを防御する雪奈の手も加速化する。

俺のほっぺの上は仁義なき戦場へと様相を変えた。


「対話で意思を伝えるより、念話で意思を伝える方が都合がいいということだろうな。

対話の場合所有者以外にも情報が伝わる。

大方『所有者以外と意思を疎通してはならない』『必要最低限の情報しか伝えてはならない』という理由があるんだろうさ」


変身の仕方やディバイン・ギアの装備方法については曖昧だがきちんと情報を伝えてくれる。

しかし、バブルスフィアの魔力を格納したスロットの存在は必要になった際にようやく教えられ、白紙のカードについては何も教えられていない。

必要な時に必要なだけの情報しか提示しないつもりなのだろう。


「制作者も、制作方法も、制作意図も不明でしたね。

何が目的なんでしょうか?」


雪奈が手のひらで仁のつつく攻撃をガードする。流石に雪奈を攻撃するわけにもいかないのか、仁の攻撃は止んだようだ。

……そのままほっぺを撫でずにいてくれると嬉しいんだが。


「目的も名前もわからない相手が造ったDAを信頼するというのも難しい話だよなぁ。

ましてやこちらに渡す情報に制限を付けている。

とは言え信じて使わなければどうしようもない。

とりあえずは今までのDGS達のように、命を預けて戦うしかないだろう」

「そうだな。

我も興味はあるが……七不思議の深淵を覗くには準備が足りぬ。

何か突き止めても知識の番人とやらに消されるのが関の山だろう」


闇だの深淵だのを信奉する仁が、その深淵に差し迫れるチャンスだというのに、二の足を踏むとは。

あるいは、彼には七不思議の深淵とやらに心当たりがあるのかもしれない。


「番外の一つ。『知識の番人』。七不思議を全て知った者は、すべての知識を番人に奪われてしまう、か……

ディバイン・ギアの制作者が『ソレ』だったとして、一体何が目的なんだか」


深界世界はその存在にとっても邪魔だからなのか、データ取りをさせられているのか、あるいは深界世界の存在すらも自作自演か。

最終的な目的は何なのか。まさかディバイン・ギアを用いたヒーローショー(・・・・・・・)が見たいというわけではないだろう。


……おそらく今回の依頼は、七不思議の解析については無関係だろう。

むしろその逆、七不思議からの脱却(・・・・・・・・・)こそが真の目標か。



魔力が戻ってきたので上体を起こす。

俺は頬に残った熱を感じながら、依頼内容のリストに1件追加した。




Confirmation x Gear - 了

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