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第十話 リアル・ヒローショー

「始めよう。

 勝利へのカウントナインだ」



 深界獣を蹴飛ばした戦士は、地面に着地すると深界獣を指さしそう言った。




「!!?!#?!?#!?”!?”?!#??$?”$?$&Y?EG!#!?!!?!!!!」



 …………ふぅ、落ち着いた。

 生のディバイン・ギア・ソルジャーとキメゼリフっぽい台詞を聞いてちょっとテンションが上がってしまった。

 だが俺はクールガイ、平賀良二。例え憧れの存在が目の前で戦っていても、平常心を忘れない。



 ギア:ナイツは歯車を身に纏った戦士だ。

 全身を銀色のスーツが覆い、各装甲には歯車の意匠が見える。なるほど、初代ギア:ソルジャーの姿を現代風にリファインしているのか。

 その中で初代になかった特徴が二つ。一つは左腕に搭載されたカードリーダー。これは俺の左腕についているものと同一だろう。

 そしてもう一つの特徴は左の肩甲骨当たりに存在する円盤。

 円盤は高速で回転し、銀色の粒子を辺りに振りまいている。

 恐らくはこれがギア:ナイツの主要武装だろう。


『カウント:シックス』


 機械音が響き円盤の回転速度が上昇、円盤の周りに光輪が生まれる。

 それと同時にギア:ナイツの速度が上昇する。

 ギア:ナイツは深界獣が射出した七つの刀剣をすべて掻い潜り深界獣に接近、そのまま顔面を殴り飛ばした。


 身体能力の向上……文字通りギアを上げた(・・・・・・)ということか。


「はぁ!」


 ギア:ナイツはその勢いのまま、拳と蹴りを立て続けに深界獣に見舞う。

 深界獣は後方に大きく跳んで体勢を立て直す。


『カウント:セブン』


 円盤の回転速度がさらに上昇、光輪も一回り大きくなる。

 どうやらカウントはカウントダウンではなくカウントアップ形式らしい。

 カウントが途中からだったのは、ここにたどり着くまでに加速のために5カウント使ったからか。


 ギア:ナイツは距離を離した深界獣に突撃する。

 円盤と光輪から銀色の光が放出され、それまでとはけた違いの速度で接敵する。


「QuuuuAAAAaaa!!」


 深界獣が大きく泣き声を上げると、前面に7枚の障壁が生まれた。


「へぁ!!」


 ギア:ナイツは突撃する勢いを拳に込め、障壁を殴りつける。


「なに!?」


 拳の勢いは凄かった。しかし、障壁を4枚までしか割ることができず、5枚目に弾き飛ばされてしまう。



 どうしたギア:ナイツ!お前の力はそんなものではないはずだ!


 とりあえず無言で応援する。



「それなら!」


 ギア:ナイツは後ろに大きく跳ぶと、身体を屈めた。そして取るポーズはクラウチングスタート。

 まさか、さらなる速度で突き破るというのか。


『カウント:エイト』


 光輪が虹色に輝く。

 そして、ギア:ナイツは音すらも置き去りにする速さで姿を消した。

 直後に深界獣が吹き飛ぶ。

 さらに追加され10枚となった障壁全てをぶち破り、ギア:ナイツの体当たりが深界獣に届いたのだ。


「いまだ!」


 ギア:ナイツが空高く飛翔する。


「ファイナルカウントだ」


 ギア:ナイツが左腕のスロットにカードを読み込ませると、光輪が太陽のごとく輝き始める。


『カウント:ナイン』


 円盤から噴出した光が、彼の速度を一瞬で最大まで到達させる。

 深界獣はとっさに無数の刀剣を放つが、光に全て弾かれギア:ナイツに届くことはない。


 残光が虹色の錐となり、その先端が深界獣を捕らえ、貫いた。



『カウント:エンド。

 グッバイ』



 ギア:ナイツが地面を滑るように着地し、その後ろでは貫かれた深界獣が大爆発を起こした。




 ガラスの割れるような音が響き、バブルスフィアが元に戻る。

 空は依然曇っているが、少しだけ太陽が覗いており、薄暗かった世界は消え去った。


 ギア:ナイツも変身が解かれ、元の姿――一文字昇人(イチモンジショウト)へと戻る。


 遠くからエンジン音が聞こえる。

 そちらを見ると、一人の少年がこちらに向かってバイクを走らせていた。

 恐らく彼が昇人の相棒、火野輪之介(ヒノリンノスケ)だろう。


 二人は倒れている女生徒の容態を確認すると、近くの木の麓に寝かせ、そのまま去っていった。

 それなりに傷があろうと、バブルスフィアが戻った今ならもう問題は発生しない。

 恐らく後で風紀騎士団が回収し、バブルスフィアに不都合があったと説明するのだろう。


 とりあえずは一件落着だ。



 俺はD-Segに届いた雪奈と麗火さんのメッセージを確認しながら先ほどの戦闘を思い出す。


 やはり生の戦闘は凄かった。

 テレビで見るのとは迫力が全然違う。

 音も光も全身で感じる衝撃も最高だった。

 早く帰って動画で見直したい。



 だが一つ、どうしても気になることがあった。


 間違いない。これが俺に依頼が来た本当の理由だ。

 俺はわずかな晴れ間を見上げため息をつく。


 先ほどの戦闘、あれは――



「…………流石に力任せ過ぎるだろう」





 Power x Speed - 了

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