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プロローグ_3 君に助力は必要か?

「さぁ、楽しい楽しい試験の時間の始まりだ!」




新しく現れた見知らぬディバイン・ギア・ソルジャーは、腰の辺りにあるスロットからカードを取り出すと、深界獣(アウター)に向かって走り出した。

走る速度はナイツより遅く、うなじの辺りから伸びる、短く白いマフラーが棚引いている。


「試験その一だ」


見知らぬDGSディバイン・ギア・ソルジャーは左手に持ったカードを、異形な形をした右腕の、親指の付け根辺りにかざした。


『ストレート・フラッシュ』


機械音声が響く。

そして、それと同時にマフラーが伸び、色が青白く変わる。


「はぁっ」


DGSの走る速度がナイツと同等になり、あっという間にその背中が遠ざかる。

DGSは加速した勢いで、ナイツの頭上へと跳躍した。


「はっ!」


DGSの掛け声に合わせ、マフラーが鋭い直刀へと形状を変え、そのままナイツへと掴みかかろうとした赤い深界獣へと斬りかかった。


「Grrrraaaa!」


突然の乱入に反応できず、赤い深界獣は右腕を切断される。


「試験その二だ」


『アブソリュート・ディバイダー』


DGSの声に反応するように機械音声が響き、DGSの右腕が変形を始める。

腕の甲を始点として肘に埋め込まれた刃が180度回転、さらに前方へとスライド、刃から半透明の刀のような刃が形成される。


さらにマフラーが大きく光り、粒子となって後方に放出される。

DGSはその勢いを利用し前方に加速、刀で白い深界獣を袈裟切りにした。


「uuurrruuuuu!?」


刃が当たる寸前で後方に逃げたのか、攻撃は確かなダメージを与えつつも、致命傷には及ばないようだった。


そして刃を振り切ると半透明の刀は砕け、右腕は再度変形を開始し、元の形に戻った。



「助かった」


背中を預けるように、ナイツが新しく来たDGSの後ろに回り声をかける。


必殺技(フィニッシュ)は何回使える?」


DGSが確認する。


「……一度だ」

「了解。それじゃあ最後の試験を兼ねて、必殺技の露払いをしようか」


DGSは再度腰のスロットからカードを取り出すと、右親指の付け根にかざす。


『コールド:プリズン』


DGSのマフラーが伸び、灰色に染まる。


「これでどうだ」


マフラーが大きく広がり、掌のような形になる。

そしてそのまま高速で伸ばすと、攻撃を受け動きの悪くなった白い深界獣を握りこんだ。


「UrrRRRuuu!?」


白い深界獣は戸惑い身体を動かすが、全く振りほどけないようだ。


DGSは掴んだ深界獣ごとマフラーを振り回すと、赤い深界獣に叩きつけた。


「GGGGrrrrggggaaaaa!」


しかし赤い深界獣はとっさに光球を放つと、白い深界獣を弾き飛ばした。

制御結界による光球操作の応用だろう。


「Gra!Gra!Graaaaaa!!」


赤い深界獣は一際大きい雄たけびを上げると、今までの物よりも大きな光球を作り出した。


「残念だが、ソレなら問題ない」


『フローズン:プリズナー』


DGSの右腕が再度展開する。

各関節が大きくスライドし、右腕が一回り大きくなる。


「Graaaaaa!!」


DGSに向けて、赤い深界獣が光球を放つ。


「はぁ!」


DGSは展開した右腕を大きく振りかぶると、光球に叩きこんだ。

推定50万度を超える光球は、しかし一瞬で砕かれ消え去った。


「そんな!あれだけの温度を一瞬でかき消せる冷気なんてありえない!」


僕の隣で、二人の少女が驚きの声を上げる。

そしてその驚きは深界獣も同じだったのだろう、深界獣は一瞬完全に動きを止めてしまった。


「時間まで止まっていろ」


DGSのマフラーが伸び、今度は二匹の深界獣を同時に握りこんでしまった。


「Grr…rr」


深界獣の声が次第に小さくなり、体の表面を霜が覆っていく。


「ファイナルカウントの時間だぜ」


DGSが左手を上にかざす。

釣られるようにそちらを見ると、光臨を背負ったナイツが全ての力を脚部と背部に集め終わったところだった。


『カウント:ナイン』


ナイツが左腕のスロットにカードをスライドさせると、背部の円盤から光の奔流が噴出する。


「はあぁぁぁぁっ!」


光を推進力に、ナイツの身体が光の矢となり一塊になった深界獣の身体を貫いた。


『カウント:エンド。

グッバイ』


ナイツが地面を滑るように着地し、その後ろでは貫かれた深界獣が大爆発を起こした。




「誰だ?」


ナイツを覆う装甲が光の粒子となり消え、そこには無傷のショートが立っている。


「俺か……そうだな」


DGSのマフラーが灰色から白に戻り、その長さも一気に短くなる。


「…………俺はディバイン・ギア・ソルジャー:アイズ。

ギア:アイズとでも呼んでくれ」


短くなったマフラーが完全に消え去ると、彼の装甲も一緒に消え去る。

同時に薄く濁ったバブルスフィアが解除され、彼の姿が陽光に照らされる。



「そしてその正体はDAMAトーキョー普通科一年。

イノベーション・ギルドの『彼方の始点ホライゾンクリエーター』平賀良二」



白衣に白い学ラン、そして黒髪で黒い瞳の彼は、僕とショートを見るとニヤリと笑った。



「DAMAトーキョー剣聖科一年、『ギア:ナイツ』一文字昇人(イチモンジショウト)

DAMAトーキョー普通科一年、『ギア:アルス』火野輪之介(ヒノリンノスケ)



今日はお前たちに、補習と追試の日程を伝えに来た」




世界は脆く、突然泡のように弾けてしまうことがある。

日常も同じだ。突然穴が開き同じ日々は訪れなくなる。

彼のこの言葉は戦いに染まった僕たちの日常を変えることになる。

運命を変え、自分を変える二週間が始まる。




3rd x Iceage - 了


お読み頂きありがとうございます。


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