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プロローグ_2 君の世界は本物か?

『カウント:ワン』


機械音声が数を読み上げるのと同時に、青年――ショートいや、ディバイン・ギアによりギア:ナイツへと姿を変えた彼の肩甲骨に存在する、銀色の円盤が高速で回転を始めた。


「GRrrrRRRRaaaa!!」


そんな彼を脅威と認めたのか、犬のようなモンスター――深界獣(アウター)は身体中の炎を滾らせ彼に掴みかかろうとする。


「はぁっ!」


しかしナイツは深界獣の腕をかがんで避けると、そのまま拳を突き出し深界獣のみぞおちを殴り飛ばす。


『カウント:ツゥ』


ナイツの背中の円盤が、一段階速度を上げる。

ナイツの拳が光り、拳の衝撃にバランスを崩した深界獣に、追撃の連打が降り注ぐ。


「Graa!」


攻撃を受けた深界獣の選択は反撃だった。

連打により炎を辺りにまき散らしながらも、大ぶりの拳をくりだす。


『カウント:スリィ』


ナイツの背部の円盤から光が噴出し、その勢いで拳を避けつつカウンターの一撃を深界獣の顔面に打ち込むと、ナイツはそのまま深界獣の後ろに回り込み、背中を蹴飛ばした。



「凄い……なんなの、アレ……」


長髪の少女が感嘆の声を漏らす。


「知らないかい?

DAMAに現れるモンスターを人知れず倒す歯車のヒーロー……ディバイン・ギア・ソルジャー。

彼がそうさ」


僕は彼女の腕に魔法をかけながら、そう説明する。


「ディバイン・ギア・ソルジャー!?本当に、実在したの!?

テレビの中だけのお話だと思ってた……」


テレビのディバイン・ギア・ソルジャーの特撮ヒーローは子供に人気で、すでに20作品以上造られている。

けれどそれはあくまで『ハーフ』フィクションだ。


「テレビのディバイン・ギア・ソルジャーとはだいぶ違うんだけどね……

傷の方はどう?まだ痛むかい?」


僕は彼女の腕から手を離す。

深界獣に握られていた部分の制服は燃え落ちており、腕はえぐられ傷口は炭化していた。

僕ができるのは痛みを和らげる程度で、傷の治癒はできない。痛々しい傷跡は残ったままだ。

バブルスフィアが解除されれば全て元通りになるのがせめてもの救いだ。


「ええ、そうね……痛みはないわ。

感覚もないし、全く動かないけど」


長髪の少女は軽く腕を動かしているが、肘から先は全く反応していないようだった。


「でも、痛いよりはマシ。

その……助けてくれてありがとう」


少女は、疲れたような笑顔を僕に向ける。


「……お礼が言えるようになったなら一先ずは安心だね。

君は怪我していないかい?」


僕は口を半開きにしたままジィっとナイツの戦いを見つめる、短髪の少女に尋ねた。


「う、うん。あたしは平気だよ。

でも、あの人は一人で平気なの?

本当にディバイン・ギア・ソルジャーだとしても、あのモンスターは普通じゃないよ?」


自分で傷に気が付いていないだけかもしれないと思ったけど、見た感じ何処も怪我をしていないようだ。

良かった。


「彼なら平気だよ。

多分、そろそろ終わる」



視線をナイツに戻すと、丁度クライマックス直前だった。


『カウント:エイト』


ナイツの背中の円盤がさらに一段階早くなり、円盤を中心にした光輪が七色に輝く。

彼の攻撃フォームの最終段階だ。

彼自身の力と速度は最高潮に達し、深界獣はすでに彼を捕らえられなくなっている。


「GrrGrrGrrrraaaaaaa!!!」


最後のあがきだろうか。深界獣は両腕に力を籠めると、白く輝く球体を作り出した。


「ちょっと待って!推定……10万度!?

どうしたの!?このグラス壊れちゃったの!?」


長髪の少女が慌ててサングラスを触り始める。

きっと、高度な遮光機能と温度測定機能を持ったサングラスなんだろう。

深界獣が高度な制御能力を持っているため熱量は拡散していないみたいだけど、直撃した場合はその限りではないだろう。

きっとナイツでも大きなダメージを負うはずだ。


もっとも、直撃すればの話だけれど。


「Gggguaaaaaa!」


深界獣が光球を放つ。その速さは目にも止まらない。しかし、ナイツの速度はその上を行く。


「はぁっ」


ナイツは光輪から噴出するエネルギーを推進力に、光球を越え遥か空へと飛んだ。


「ファイナルカウントだ」


カウント:ナイン。

ナイツが全身の力を光輪に集中し、彼の最大の技を放とうと――



「――ナイツ!後ろだ!!」



僕の声に反応し、ナイツが背面跳びを試みる。

しかし時すでに遅く、後方から飛んできた光球がナイツの背中に直撃した。


「なんで!?」


長髪の少女が驚愕の声を上げる。

思いは僕も同じだ。

光球はすぐ直前に避けたはず……


「……制御結界だよ」


短髪の少女がポツリと漏らす。


「熱量の制御を行い、周囲への影響を減らしつつ内部の熱量を高める……

応用すれば熱攻撃を逸らすこともできるんだ」

「そうか……そういうことか……」



「深界獣はもう一匹いたんだ」


光球の飛んでいった先には、所々に白い毛皮の窺える、筋骨隆々のイヌ科の深界獣が立っていた。



深界獣は『深界』からバブルスフィアを経由して世界に現れる。

その際に魔法やDAを取り込み自分の属性にする。

その時に取り込んだのが二つの属性を持つDAだったからなのか。あるいは元から二匹で行動していてDAの属性を分け合ったのか。それは解らない。



解っているのは深界獣が二匹いること。そしてナイツに二匹を同時に倒す余力が残っていないことだ。



光球がナイツに直撃した煙が晴れると、そこには装甲が赤熱、あるいは破損したナイツが浮いていた。

どうやら力の溜まった光輪が盾となり威力を弱めたようだ。

しかし力の多くを失ってしまったようで、円盤の速度は遅くなり光輪も消えてしまっている。


「まさか、深界獣が二匹同時に現れるなんて……」


僕の知る限り、こんなことは今まで一度たりともなかった。

本来深界獣が現れるのは、多くて週に一度程度なのだ。

それがここ毎日立て続けに現れている。


異常なことが怒っているのは解っていた。こうなることも、事前に予測できたはずだ。


「……僕のミスだ」


僕の役目である解析と予測を怠った。変異したバブルスフィアに残るのは深界獣と同じ属性を持った人だけ。

二人がバブルスフィアに取り残されているのなら、深界獣が二匹いると考えるべきだった。


「駄目だ……後悔するんじゃなくて、何か対策を考えないと……!」


ダメージにより多少威力が弱まったとしても、ナイツの必殺技が直撃すればどちらか片方は倒せるだろう。

でも、直後にナイツの魔力は切れて元の姿に戻ってしまう。

一体どうすれば……


僕が考えている間にも、二匹の深界獣の連携によりナイツはどんどんダメージを受けている。

ナイツは今まで複数体を同時に相手にした戦闘経験はない。

複数の光球と、それを自在に操作する結界により、彼は良いようにあしらわれてしまっていた。


「駄目だ……駄目だ……

これじゃあ……でも僕は……でも僕が……!」


対策は―ー思いついた。

でも、それを実行に移すだけの勇気が足りない。ナイツに合図を送る一歩が踏み出せない。



僕は、なんて―――



「ずいぶんと苦戦しているようだが……間に合ったなら何よりだ」



突然聞こえた声に振り向いた。


「君は――」


有り得ない。深界獣が現れ変異したバブルスフィアには、『深界』属性を持った人しか入ることができない。

そして『深界』属性を持っているのはDAMAトーキョーでは僕とショートだけのはずだ。


「誰だ?」



そこに立っていたのは、白衣と学ランを合わせたような奇妙な白い鎧を着た、右腕が異形な形をした戦士だった。

初めて見る姿だ。


だが僕は知っている。彼はまぎれもなくディバイン・ギア・ソルジャーだ。


彼は腰の辺りにあるスロットからカードを取り出すと、深界獣に向かって走り出した。




「さぁ、楽しい楽しい試験の時間の始まりだ!」





Failure x Twins - 了

ヒーローが現れて引き……前回と同じような。

第一話と三号ヒーローの登場回の複合なので気にしないでください!

それにしても新しいヒーローは誰なのか気になりますね!!気になりますよね!!!?


お読み頂きありがとうございます。


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