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第二十八話 自称右腕は初めての女子会を満喫する

「雪奈ちゃんは何のケーキが好きかしら?」

「やっぱりオレは生クリームは苦手だな。

 ん、このレモンケーキはめちゃうめぇ!」

「もう!ちゃんと食べ終わってから次のお皿を取ってきなさいな!」

「平気よね……ちゃんと人が食べて平気なものよね……」


 私――狐崎雪奈は何故か剣聖生徒会の皆さんと、真忠さんに囲まれていた。


「えっと……チーズを使ったケーキが好きです」

「チーズね。それじゃあ私が選んであげるわね」

「会長!オレにも柑橘系取ってきてくれない?」

「会長を使い走らせるんじゃありません!もう、私が取ってきてあげるから、ちゃんと綺麗に食べるんですのよ?」

「全品確認良し。このお店は平気なようね……」


 どうしてこんなことになったかというと簡単だ。

 善は急げと月曜日に真忠さんと一緒にDFDのスキャンをすることになったのでついて行ったけど、その時に剣聖生徒会の人たちに出会ったのだ。


「そういえば雪奈はDAMAのオープンキャンパスや説明会に出たことはなかったんだよな」

「そうなの?それじゃあこれから私たちスイーツパーティーに行くんだけど、そこでお話ししない?」

「それはいい!女子会という奴だな!いろいろ気になることを聞いてくるといい」


 という流れで、あれやこれやという間に参加が決定してい待ったのだ。

 ただ、私は良二さんと麗火さんが目配せしたのに気が付いていた。

 たぶん、再来月から通う学校に馴染ませたいという配慮だと思う。

 授業の様子は良二さんから毎日聞いてるし、学校にも何度か足を運んでいるから、すでに慣れてて特に気になることはないんだけど、気遣いは嬉しい。


「はい、ティラミスとレアチーズケーキ。

 後これは私のお薦めのベイクドプリン。ここのは絶品なのよ」


 私の前に麗火さんがお皿を置く。

 上に乗せられているのはカットされた一口サイズのケーキたち。それと小さな容器に入った、香ばしいプリン。

 私が今いるのはチェーン店の「スイーツパーティー」。スイーツをメインにした、食べ放題のお店だ。

 クラスの女子がたまに話題にしているのを聞いて、来てみたかったお店だ。


「ありがとうございます」


 ティラミスを食べてみる。

 うん、お酒の香りとココアパウダーがちょうどいい。


 さて、良二さんは麗火さんが良い人だと何度か教えてくれたけど、私はまだ麗火さんに気を許していないし好意も持っていない。

 それでも、刺々しく接するのは、この場を用意してくれた良二さんに悪いと思う。

 何か、当たり障りのないことでも聞いておいた方が良いのかな。

 えっと……


「皆さんは、よくこういうお店に来るんですか?」


 私の質問に、麗火さんが少しだけ嬉しそうな表情をする。


「剣聖生徒会が新しくなってからは、毎週来てるわね。

 カロリーは魔力として消費できるから、結構来ている人も多いわ」

「私は初めてですね。いつも正技さんと一緒に行動しているからでしょう。

 ……よく思い出すと、クラスの女子たちと一緒にどこかに遊びに行ったこともほとんどありませんね」


 真忠さんがズーンとした雰囲気で目を伏せる。


「今日は折角の女子会ですから、一緒に楽しみましょう!

 ほら、このケーキ美味しいわ」


 麗火さんが慌てて、ケーキをお皿ごと真忠さんに差し出す。

 真忠さんはフォークを使いケーキを口に運ぶと、ぱぁぁっと表情を和らげた。


「何時も和菓子ばかりだから、久しぶりのケーキは一際美味しいですね」

「抹茶や小豆の和風ケーキもあるから楽しんでいってね。

 やっぱり、真忠さんは和風の方が好きなのかしら?」

「家が和食ばかりだったもので……会長は和装ですけれど、和食に偏っているわけではないのですよね?」

「そうね。洋食の方が多いかしら。

 私の格好は、耐熱特化の制服を選んだ結果ね」

「そういえば、今日は前の時とは違う浴衣ですね。制服は何着くらい用意しておくものなんですか?」


 確か前回会った時はオレンジ色だったが、今日は花柄になっている。


「そうね……一般的には予備も含めて2,3着かしら。

 剣聖科は戦闘、鍛冶科は製造で汚れるけど、防汚対策しているから、油汚れも血も洗濯機で洗えば落ちるわ。

 流石にほつれたり破れたり焦げたりすると修理が必要だけれど。

 それと、私の浴衣は特別製で、魔力の流し方によって柄が変わるのよ。

 ほら」


 麗火さんが着物の裾を持って浴衣を見せてくる。

 浴衣は花柄が瞬く間に赤色に変わり、続けて蜻蛉柄、チェック模様、七色へと変わる。


「マジか……生徒会長の浴衣ってそんなんだったの!?

 というか、いつから浴衣だったっけ?就任した時には生徒会の制服着てたよな」


 私よりも、生徒会の短髪の人が驚く。


「あなた、気が付いてなかったの?」


 生徒会の金のロングヘアの人が半眼で睨み付ける。


「いやいや気が付いてたぜ。えっと……先週からだろ?」

「二週間前!」

「そうだっけ?一週間くらい誤差だろ」


 先ほどから、この二人はずっと二人で言い合っているような。

 親友とか悪友とかなのかな?

 私にはいないから羨ましい。


「私も予備の制服買っておいた方が良いですか?

 白い学ランは学内では見かけないので目立ちますし、どうせなら違う制服を……」

「そうね……雪奈ちゃんは一般科だから機能は特に気にしなくていいし、選ぶならデザイン優先かしら。

 どれがいいかな」


 雪奈さんが中空を操作すると、制服のカタログが現れた。

 良二さんの話だと眼鏡(D-Seg)に不慣れということだったが、随分と慣れたらしい。


「雪奈ちゃんは黒のストレートロングの髪だし、オーソドックスに和服?

 でもゴシックロリータも可愛いかも……」


 麗火さんがカタログを選択すると、制服がアップで表示される。


「コレとか似合いそう」

「そうですか?」


 麗火さんが選んだ制服は、生地が分厚くしっかりとした、軍服のようなワンピースだ。所々にフリルが散りばめられていて、硬い雰囲気を可愛らしさが中和している。

 素敵だけれど、私はヒラヒラした服を着たことがないので、私に似合うかはよくわからない。


『合成するよ』


 悩んでいると突然アイズさんの声が聞こえ、制服が私の姿に切り替わった。


「え!?何?私何の操作した??」


 アイズさんがカタログ操作を乗っ取ったとは気づかず、麗火さんが慌てる。


「あら、可愛いですわね。こっちのピンク方を着せてみましょう」

「いや、せっかくだしこのタキシード着せてみようぜ」

「着物。着物は帯、袴、柄、様々な種類がありますから、組み合わせを楽しむのに最適です」


 麗火さん以外は目を輝かせてカタログを操作し始めた。


「ちょ、ちょっと!止めてください!」


 慌てる私と麗火さんを尻目に、唐突に私のファッションショーが始まってしまった……





 First Time Tea Party - 了


お読み頂きありがとうございます。


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